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新たなる力

「「開いたぞ~!」」


 ガラの悪い男たちが一斉に声を上げた。彼らと俺を隔てるものは、世界樹の木を囲うように円状に広がる白い水しかない。出発の時は黒い水だったことを考えると、国を救えたことが目に見えて分かる。


 せっかくソフィアさんたちの苦労が報われ国の危機を乗り切ったというのに・・・・水際に陣取る男どもを見ると本当に胸糞が悪くなる。彼らの横には最低でも一匹ずつ若い奴隷エルフが控えているのだ。一人ではない、一匹なのだ。首には犬のように首輪と鎖が繋がれ、ボロボロの服を着させられている。なかには四つん這いにされ椅子代わりにされている子もいる。


 冒険者崩れか・・・盗賊どもか・・・どちらにせよ見ているだけで胃がムカムカする。


「何だアイツは?姫じゃなくて男だぞ?しかも人間のくせに水の上を歩いてやがる。」


 おそらくアイツらのうち何人かはこの水の中に沈んでしまったのだろう。心の汚い男たちには到底出来ぬ芸当に驚きの声が上がる。もちろん俺はそんな声を無視してツカツカ歩く。


 男の数はザッと見積もって100名ぐらいだろうか。エルフの数は最低でも100、奴隷が2人いる奴も考えれば120人はいるかもしれない。


 ムカつく奴らなので魔法で消し飛ばしてやりたいが、派手にいくと横にいるエルフまで巻き込んでしまう。しかもあからさまに戦闘態勢を取れば人質の奴隷エルフが殺されてしまう可能性もある。できればグリン達を出さずにケリをつけたい。つまり全てをカードにするしかない。


 この集団のリーダーはどいつだ。


 ・・・あいつだろうか。いやこちらに陣取っている奴か・・・


「ん?」


 なんだ?意識して見ると・・・文字が浮かび上がってくる・・・突然の事に驚きながらも、目をゴシゴシしてからもう一度目を凝らす。


オストラ:人間:レベル35


体力  91

魔力  110

攻撃力 95

防御力 103

素早さ 62


スキル:エクスプロージョン、ファイアーボール、



 見える!見えるぞ!!カードにしなければ分からなかった情報が手に取るように分かる。なぜこんなことになったんだ?考えられるとすれば・・・2つめのアザか。核石を修復中に俺の中に入ってきたアレ。

 胸が(うず)く。間違いない、エルフの紋様が光っている。これは・・・鑑定眼というやつか。


≪ソフィアさん、どうやら鑑定眼が使えるようになったようです。≫

≪・・え?・・・それは・・・その力はエルフの英雄と言われた父だけが使えたスキルです・・・≫


 ソフィアさんの父?たしかずっと前に亡くなったと。もしかして、魂はあそこでずっと眠っていたということか?


≪よく分からないですけど・・・たぶん核石を修復中に俺の中に入ってきたと思います。≫

≪そんなことが・・・≫

≪もしかすると・・あれがソフィアさんのお父さんだとするならば・・・だからソフィアさんには石化の影響が出なかったんじゃないですか?ずっと守られていたんですよ!≫

≪え・・・・≫


「おい、そこのお前!何者だ!?」


 ダメだ、ゆっくり話している余裕はない。アイツらがいつ俺の事を敵と認識してもおかしくない。


≪ソフィアさんまた後で。≫



「ああ、悪い悪い。少し聞きたいんだが・・・あんたの名前はオストラで合ってるか?」

「!?・・・なぜそれを?」

「いや・・・合ってるならそれでいい。」


 真ん中後方に陣取っているアイツはなかなかやばいステータスをしてやがる。早めに決着をつけなければ。



「出てこい。」

 10枚のカードを出現させる。ここまではいつもと同じだ。しかし今日の俺はいつもの俺ではない。なぜかは分からないが、カードの新しい使い方が直感的に分かるのだ。


「いけ!」

 10メートル間隔に着弾するように一斉に飛ばす。まるで手裏剣のように風を切り裂き一直線に飛んでいく。だが対象に直接当てるわけでは無い。わざと足元に照準を定めた。男どもはとっさのことにただ茫然としているだけだ。


 トスっトスっトス・・・・・



「ん?なんだこれ?」


 アホ(づら)で摘まみ上げようとしている奴もいる。マヌケめ!


「範囲捕獲!」

 その瞬間、カードを中心に半径5メートル四方にいたエルフたちがひび割れ一瞬で収納されていく。1枚につき最低でも10人。タイムラグはほとんどない。100人以上のエルフが光を発しながら吸い込まれていく様子は、ある意味幻想的な光景でもあった。


「なんだ!なにしやがった?」


 混乱する男たちにいちいち丁寧に説明なんてしてやるわけがない。アイツらからしたら消えたようにしか見えないだろう。それまでエルフ達が立っていた場所には、締め付ける対象を失った首輪と鎖がガチャリと落ちる。椅子にしていた奴は盛大に後ろにすっころんでやがる。ざまああ!



「ハハハハハ、奴隷がいなくなっちゃったな。」


 さて、捕獲したエルフ達のケアは姫様であるソフィアさんに頼むとして、俺は目の前の男どもの処理に集中しましょうかね。これでとりあえずは人質を取られることは無くなったわけで、思う存分魔法をぶっ放せる。



「敵だ!ぶっ潰せ!」

「「うおおおおおぉぉぉぉぉ!」」


 ようやく間抜けな男どもが攻撃を開始してきた。そもそもエルフという甘い蜜を吸いに来た、寄せ集めのろくでなし共なのだろう。人数はいても軍隊のように戦略的に戦うことが出来ないとみた。


 今更もう遅い。浮かせたカード5枚から灼熱を放つ。地を這うように赤黒いマグマのような炎が男どもを襲う。もちろん遠慮はしない。こいつらには、俺達が強化合成するための養分になってもらうつもりだが、死んでしまってもかまわない。なぜならここまで人権や尊厳を踏みにじり好き勝手やってきたような奴ら相手なのだ、誰にも文句は言わせない。


「あっちいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃああああああああ!」

「助けてくれ~~~」


「助けない。」


 頭の中にファンファーレが鳴り響く。いいぞ、いいぞ!そろそろ頃合いか?



「範囲捕獲!」


『人間を捕獲しますか?』『人間を捕獲しますか?』『人間を捕獲しますか?』『人間を捕獲しますか』・・・・・・・


 これで一段と、眠れる花のメンバーは強くなる。最強の冒険者になるという俺の夢も近づいたというものだ。


 先程鑑定眼で見たオストラと何人かは取り逃がしたが、体が万全ではないので多少は仕方あるまい。


 街中も気になるが・・・まずは城に行くか。


ブックマークありがとうございます!パソコンの調子が悪くて少し焦りましたがなんとか間に合いました。

今日から令和ですね(^^)

よろしかったらもう一作も更新したので読んでみてください。画面下の作者マイページか、画面上の小説情報から飛んでいけますので(@^^@)

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