魔石を食った豚
「そろそろ水浴びでもしますか?」
お腹が膨れたところでソフィアさんに話しかける。
「ブっ」
豚君が猛烈に首を縦に動かす。
「お前に聞いてねーよ!」
「ふふふ。楽しいですね。」
「いや・・・」
「水浴びお願いします!」
「ブブ。」
体から木の樽を取り出す。お城でワインを入れていた樽だ。ウォーターボールで水をいっぱいに入れてから、小さな火の玉を放り込む。
手を入れて温度を確認してみるがまだぬるい。水からお湯に変化するまで何度か繰り返す。湯気がモクモク出てきたところで完成だ。
「よし!」
「ツバサ様すごいです。」
「いえいえ。豚君は今度こそカードに入れるのでゆっくり入ってください。見張りは俺がやりますから。」
「ブゥ~~~」
するとその瞬間、豚君が泣きはじめた。鳴いているのではない、泣いているのだ。先程までハートだった目から大粒の涙が流れる。よほどソフィアさんの入浴が見たかったのだろう。ブタのくせに変態野郎だ。これではまるで俺が悪いみたいではないか。
「ツバサ様かわいそうなので出してあげましょう!」
「ダメだ。」
「ブウ~」
・・・
「分かったよ。そのかわり今回だけだからな。絶対変なことするんじゃないぞ。」
「ブヒ」
満面の笑みで鼻を鳴らす。まったくなぜ俺がこんな気持ちにならなければいけないのだ。姫様も姫様だ。豚ならば気にする必要が無いとでも思っているのだろうか?どんな種族でもオスなんて頭の中は一緒なのに。
しぶしぶ体からソフィアさんの着替えを出す。もちろんパンチーの入った小さな袋も渡す。
「あ、ありがとうございます///」
「いいか豚君!絶対に後ろを振り向いたらダメだぞ。これはもちろんソフィアさんにリラックスしてもらうために言っているわけだがそれだけではない、お前のためでもあるんだ。おそらく振り向いたら豚君の心臓が爆発してしまうだろ?」
「ブ」
「よし!豚君は向こうの方を警戒しててくれ。俺はこっちだ。」
うむ。ずっと鼻をヒクヒクさせてやがる。こいつの驚異的な嗅覚なら手に取るように分かるのかもしれない。時折顔がニヘニヘしてやがる。
パサ、、、、パサ、、、
・・・・
チャポン
何やら音が聞こえてくる。うむ。なぜ俺の視界は180度しかないのだ。
「ツバサ様。」
「ん・・はい?」
「とても気持ちがいいです。」
「そ、そうですか。ゆっくり入ってください。」
そう言いながら豚君の方をチラッと確認する。
「ん??おい!なに食べているんだ?」
夢中でボリボリと何か食べている。急いで駆け寄ってみると豚君の呼吸が荒い。目はグルグルと回り足元がおぼつかないようだ。
「毒か!?」
≪ツバサ見て!≫
「何だこれは!」
石のかけらのような物だ。おい・・・これってまさか
「魔石か!?」
「ツバサ様どうしたのですか!?」
後ろの方から姫様の声が聞こえてきた。決して後ろは振り返らない。
「どうやら豚君が何かの魔石を食べてしまったようです!目の焦点が合っていない!」
「まあどうしましょう!すぐに吐き出させてください!」
口の中に手を突っ込むが何も掴めない。ネチャネチャしていて気持ち悪いが。もう飲み込んでしまったのか何も掴むことが出来ない。しかも意識が混濁しているのだろう、俺の手をモグモグしはじめた。
「アイダダダダ!何ご主人様の手食ってんだよ!」
慌てて手を引っこ抜くとその瞬間、豚君が泡を吹き始めた。いかんいかん、これは本当にいかんやつだ。だが俺には医療の知識が全く無い。どうしたらいいんだ??
アリスもオロオロするばかりだ。
「ツバサ様!」
濡れたままの肌に服を無造作に羽織ったソフィアさんが駆けつけてきた。
「ヒールを試してみます!」
そう言って姫様が回復を試みる。だが病気やケガではないのでこのままではマズイ。どちらかというと状態異常回復が必要か?いやそれでも効果があるのかよく分からない。
「今すぐ専門の治療師に見せなければ危ないかもしれません!通常魔石のような高密度のエネルギーを摂取すると体が耐え切れなくなって命を落としてしまいます!」
「なに!?」
・・・。
「しかし・・・今戻れば今度はエルフの国が手遅れになってしまうかもしれない。」
国中に穴が開いているのだ。1年後まで大丈夫かもしれないが、明日も大丈夫だという保証なんてどこにもない。
「確かに虹の国には一刻の猶予も無いですが・・・私は豚さんを見捨てることは出来ません!」
なんという強い姫様だろうか。あれだけ自国に思い入れがあっても、この場で豚君一匹の命を優先させる判断をするとは・・・
「・・・ソフィアさん。分かりました。一旦戻りましょう。」
しかしその時だった。ぐったりしている豚君が激しく頭を横に振った。痙攣かと思ったがどうやら違うようだ。
「ブオオオオ~」
その形相は何かを訴えているようだった。しんどそうだが目には光がともっている。
「・・・お前まさか」
「ブウ。」
豚のくせにものすごくイケメンにみえる。
「よし分かった!ソフィアさん、とりあえず俺のカードの中で休ませます!」
そっと豚君を捕獲する。
「ツバサ様いいんですか?」
「ああ、ソフィアさんに迷惑をかけたくないんだろう。」
「ですが・・・」
「男のプライドですよ。」
「・・・はい。」
それからしばらくはムサシと一緒にカードに籠り看病をした。決して良い状況ではないがなんとかなっているみたいだ。苦しそうに呼吸していたがそのうちスヤスヤと眠りについた。それを確認してから俺は世界樹の木へと戻る。
汗が滴り落ち、疲れがドッと押し寄せた。
♢
「とりあえず落ち着いたので俺はお風呂に入りますね。」
「はい。」
少しぬるくなってしまったお湯にファイアーボールを入れて温め直す。樽の傍にはソフィアさんが脱いだ服が置いてある。
豚君の一件があって忘れているのだろう。
「ソフィアさん!ここに置いてある服俺の中にしまっておきますね。」
そう言ってたたんである服を持ち上げた時だった。服の間からハラリと何かが落ちた。
「あ。」
「あ!ツバサ様!」
・・・。
「な、何も見てませんから大丈夫です!」
「え、ええ///」
イチゴ柄だった。ソフィアさんは耳まで真っ赤になっている。ここは何かフォローをしなければ。
「だ、大丈夫ですよ!水着と変わりありませんし。イチゴってかわいいじゃないですか。」
「う・・・///」
・・・ミスった。フォローするつもりが逆に羞恥心を刺激してしまった。
「と、とりあえず俺はお風呂に入りますから!」
うむ。あのパンチーを豚君の前に持っていけば全快しそうだが流石にそんなことは出来ない。人間としてマズイ。まあとりあえず早く攻略して治療をしてやらないといけない。
ふう~どうなることかと思ったが・・・
温かいお湯が1日の疲れを癒す。それにしてもいいお湯だ。
♢
翌朝?目覚めると体の疲れは取れていた。相変わらず豚君は眠ったままだが、今日からは上の階層に進む。
「ソフィアさん、お願いします!」
「はい!私の手を握っていてください。」
「:@▽◆^。け>」
気のせいか世界樹の木に入った時に聞いた言葉よりも理解できた気がする。またエルフの古語というやつか。
姫様の言葉が響き渡ると同時に、目の前の木がウネウネと動き出した。そして俺とソフィアさんの体に太い幹がグルグルと巻き付き完全に飲み込まれた。
「え?!ちょ、ちょやばくないですかこれ!?」
「大丈夫です。たぶん。ジッとしててください。」
そうは言ってもこの状況で冷静になるのは難しい。葉っぱのおかげで、体の自由だけでなく視界も悪いのだ。離れ離れにならないように必死で手を握っていると体が引っ張られるように宙に浮いた。
「うおおおお!」
・・・・
「おおぉぉぉ・・・・お・・・お?」
気が付くと何事も無かったかのように地面に立っていた。先程までいた場所より空気が少しだけ重くなったような気がするが景色は変わりがない。
「どうやら無事第2階層に着けたようです。」
肩を上下させながら姫様がホッとしたように言う。俺としては事前にもう少し説明して欲しかったのだが・・・まあ、いいか。
≪ツバサ敵!≫
「おお、敵だ!」
「なんだアイツは!?」
「あれは・・・マンドレイクです!鳴き声に気を付けてください!」
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こないだもチラッと言いましたが、そのうち新しい小説も書いてみようと思います。まだ少し先だと思いますが、その時はアナウンスするのでよろしかったら一緒に読んでみてください。今度はストレスフリーで読めるような分かりやすいチート話を目指してみようかなと今のところ思ってます。
次回は7日に更新します!よろしくお願いします!




