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男壊滅

すいません。少し長くなった上にいつもより更新時間が遅れました。

「ツバサ様、こちらです。」

「はい。」


 そうしてケツをフリフリして歩くソフィアさんについて王の間へ通されることとなった。トリンドル王国でも王様に謁見したが慣れるものでは無い。頭がクラクラする。


 レッドカーペットならぬ虹色カーペットの両脇には鎧を着たエルフが列をなして控えている。そしてその先には、羽の生えた女性が立っている。どこからともなく光が降り注ぎ、まるで天女のようだ。



「お母様。ただ今戻りました。」

「ソフィアよく戻ってきてくれました。危ない目には合いませんでしたか?」

「はい。姿を隠していましたので。それにこちらにいるツバサ様が守ってくださったので問題ありませんでした。」


 女王様の視線が俺に向く。綺麗な翡翠色の目が俺の事を値踏みしている。20歳と言われてもまったく分からない顔からは感情を読み取ることが出来ない。それどころか寄せつけんばかりの冷たさを感じる。


「冒険者をしております。黒木翼と申します。」

「私は虹の国を治めております。レイチェル・スカーレットと申します。娘がお世話になったそうでお礼を申し上げます。」

「いえ、自分は何もしておりませんので。」

「ご謙遜を・・・・」


「ソフィア?この方が協力してくださるのですか?」


「はい。彼はホルダーでありトリンドル王国王女様との婚約も内定している人物です。」

「!?」


 コレット村で事前に打ち明け、すり合わせた内容をソフィアさんがカミングアウトした。女王様の能面のような顔が驚きに変わる。整列していた騎士団たちからも驚きの声が発せられ、場がざわめいた。不思議なことになぜかモジモジしている奴もいる。



 しばらくして無表情へと戻った女王様が声を張り上げた。

「ツバサ様、エルフの国の王としてあなたにお願いがあります。どうか私たちを助けていただけないでしょうか?」


 そう言ってレイチェルさんが深々と頭を下げた。


「えっと、頭を上げてください。話がよく分からないんですが・・・ソフィアさんにお願いされた時からそのつもりです。ま、まあ俺の力なんて微力なので期待に答えられるか分かりませんが、、、」


「・・・・。」

 快諾したのに急に女王様が黙り込んでしまった。


「どうかしたんですか?」


「いえ、報酬を要求されないのですか?」


「ああ、そんなのどうでもいいですよ。今はお金に困っていませんし。()いて言うなら美味しいご飯でも食べたいですね。」



 ザワザワ


 今日一番のざわめきが起こった。しばらく収まりそうも無い。状況がよく分からないがどういうことだろうか?気のせいかもしれないがクネクネ、モジモジしている奴が増えた気がする。

 


「ツバサ様?」

「はい。」

「詳しい話をするので少し場所を移しましょうか。ソフィア、ツバサ様を私の部屋までご案内してください。」


 未だにざわめいている王の間を一足先に後にし、女王様のプライベートルームへとやってきた。今部屋にいるのは俺と霊体美少女のアリス、姫様のソフィアさんだけだ。


 しばらく雲の椅子に座って待っていると、女王のレイチェルさんが、先ほどはいなかった2人を引き連れて現れた。その顔は能面のままだ。


 しかしドアが閉まった瞬間、生気が戻ったように柔らかな表情へ変貌した。まるで服を脱ぎ捨てるように無表情のお面を捨てたのかもしれない。


「え?」

「ふう~みんなの前だと疲れちゃうのよね。これ重くて肩が凝るし。」

 そう言ってなんと背中に生えていた羽を引きちぎった。いや、取り外した。


「ええ!!本物じゃなかったの??」


 ・・・開いた口が塞がらない。アワアワアワ。 


「ああ、これただのアクセサリーですから。」


 驚く俺に笑いながら答える。


「じゃあ、あの神々しい光は??」


「ふふふふ、あれは演出!魔道具を使ってるの。」


 そんなバカな・・・着ぐるみの中身を見てしまった気分だ。


「もうママ、ツバサ様がいるんだからあんまり変なところ見せないでよ?」

「分かってるわよ。」


 ・・・なんだか急激に親近感が湧いてきたが・・・プライベートだとこんな感じなのか。


「こちらにいるのは私の側用人のエイミーとエマです。珍しいことに双子なんです。」

 女王様の言葉に反応するように美女2人が前に出る。顔がそっくりだ。


「私がエイミーだ。」

 向かって左の人物が言った。ビキニのような形のアーマーに、袖を通さず長いコートを肩にかけている。谷間はもちろん、おへそ、太ももが丸見えだ。何より8つに割れた腹筋がそそる。


「私の体が気になるならもっと至近距離で見ていいぞ。」

「え?」


 そう言って俺の頭を掴むと力ずくで自分の腹筋にグリグリこすりつけはじめた。一定間隔で俺の頭のてっぺんとエイミーさんの下乳がぶつかる。


 グリグリグリポヨン///


 グリグリグリポヨン///


「止めてください、お姉さま。はしたないです。下品です。」

 そう言ったのは向かって右に立っていた人物だ。


「んあ?エマ、お前はもう少し頭を柔らかくした方がいいんじゃないか?」


 グリグリグリポヨン///


「うるさいです。下品がうつります。」


 エマさんは寒くも無いのにモコモコの服を何枚も重ねている。顔と指先以外の肌は一切見えない。まるでパンダのようだ。



 ようやく解放された俺はエマさんに向き直り握手を求めた。しかし、嫌な顔をされた後、まるで汚いものを触るように人差し指を摘ままれただけだった。それもほんの0,5秒で離された。


「レイチェル様、手が汚れてしまいました。」


 おおおおおおぅぅぅ!汚物を見るようなその目!それはそれでアリ!!



「・・・あなたたち2人はもう少し常識を身につけなさい。失礼しましたツバサさん・・・」

「いえ。全然大丈夫です。」


「あなたは不思議な少年ですね。」

「え・・いや・・・」

「先ほど王の間でなぜみなが驚いたのか分かりますか?」

「いえ、、、」

「他国の人間は普通見返りに若い女性エルフを要求してきます。最近はソフィアが成長したこともあり必ずといっていいほどソフィアが指名されます。」

「・・・なるほど。」




 ・・・




 「もう一度聞きますが褒美は若いエルフにしますか?そしたらあなたがお爺さんになっても若いままのエルフをイヤというほど犯すことが出来ますよ。それにもし飽きたら、売り飛ばしてしてお金にすればあなたはもちろん孫の孫まで安泰です。」



 ・・・社会の闇に触れたような気がして俺の中に黒い感情が芽生えた。実際に奴隷になったエルフの事を考えると胸が締め付けられる。



「今の俺にはまだ力がありません。しかしだからといってあまりふざけたことを言わないでください。そんな質問をされること自体が許せない。エルフは、ソフィアさんは物じゃない!」


 感情が高ぶってつい大きな声を出してしまった。


 女王様が側近の2人と顔を見合している。まずい・・・一国の王に向かって怒鳴りつけるなんて前代未聞だろう。冷や汗が止まらない。


 すると露出狂のエイミーさんが近づいてきた。

「言葉だけじゃないか試してみよう。その椅子から動くなよ。」


 ドスン。


 あろうことか俺の上に座ってきた。しかも対面だ。目の前にツヤツヤした唇があるので、顔全体にエイミーさんの息が吹きかかる。それだけではない、下を向くと谷間が最高のロケーションで見える。 


「え?ちょ何してるん・・・・」


 俺の言葉はエイミーさんの左手で遮られた。そしてしなやかな右手が俺の体をまさぐる。


「うおっオイ!」 


 なぜか体が動かない。国のお偉いさんの前でなんてことを・・・いやそれよりもソフィアさんの前で他のエルフとこんな・・・



 すると予想に反して、怒った顔のソフィアさんがエイミーさんを突き飛ばした。


 ドン。


「やめてください!!ツバサ様にそんなことしないでください!」

 金切り声で叫んだ。目は吊り上り顔から湯気でも出そうだ。


 転げ落ちたエイミーさんはムスっとしていたが女王様に向き直りケロっとした。

「どうやら言葉だけの男ではないようです。私に対してなんの反応もしておりませんでした。まあもしかしたらただの機能不全の可能性もありますが。」


 ブフォッ!


「え?機能不全???」

 この言葉に姫様が反応してしまった。


「どうかされたのですかソフィア様?」


「実は入国する際にツバサ様は、私のせいで股間を強打されてしまいました。服の上からヒールをかけましたが・・・・もしかしたら機能不全に・・・・今度はちゃんと触診してからしなければ・・・」


 ザワザワ。


 ・・・そろいも揃ってなんなんだよコイツら!


「いやいやいや俺は機能不全ではない!!ソフィアさんならちゃんと機能する!!」


「・・・」


「・・・」


「え?・・・・って何言わしてくれとんじゃ!!」


「ツバサ様///」


 やばいやばいやばい。モコモコパンダのエマさんが最低とか(つぶや)いているよ。オワタ。俺の人生オワタ。


 あああああああああああああ!!!





 しかし予想外の反応が返ってきた。

「試すようなことをして申し訳ありません。どうやらソフィアの見る目は間違っていないようですね。」


「ツバサ!お前はなんていい奴だ!」

「最低ですが汚物から細菌に昇格です。」


 女王様に続きエイミーさんとエマさんからも褒められた。いったいどこに褒めるポイントがあったのか俺にはさっぱりワカラナイ。


 もう勝手にして。





「それじゃあ気を取り直して、本題を話しましょうか。」

「・・・はい。」

「簡単に言うとね、今虹の国は危機的状況なの。滅んでしまってもおかしくないわ。ここに来る途中に大きな木を見たかしら?」

「はい。」

「あれはね世界樹の木と言って我々エルフのシンボルなの。ただのシンボルじゃないわ。この国のあらゆるもの、地面もだし、今使ってるこの椅子も。我々は代々守り人として守る代わりにその巨大なエネルギーを利用させてもらっていたの。」


「・・・なるほど、不思議な木ですね。」


「ええ。でもその世界樹の木に異変が起きてしまったの。木の中はモンスターが巣食うようになってしまい国の至る所で綻びが出始めたわ。」


 それを聞いて城に来る途中で目にしたものが思い浮かんだ。


「もしかして・・・地面に穴が開いていたのは・・・」


「ええ。このままでは穴が大きくなり国そのものが無くなるでしょう。ですのでツバサ様には世界樹の木の中に入って調査していただきたいのです。」


「しかし、なぜ俺が?この国にも先ほど見た近衛兵がいるのではないですか?」


「我々も何度も調査をしようと兵士を派遣したのですが入れないのです。」


「どういうことですか?」


「我々エルフは体内に魔力を貯蔵する器官を持っているの、でもそのせいで世界樹の木に入ると、そのエネルギーに耐え切れなくなってしまい石化してしまうんです。もちろん今まではそんなことは無かったのよ。」


「魔石みたいなものですか??」


「厳密に言うと違うけど、大まかなイメージはそんなところです。」


「なるほど・・・石化してしまった方たちは死んでしまったということですか??」


「それは・・・前例がないのでよく分かりません。ですが回復を信じて広間に寝かしてあります。ついてきてください。」


「はい。」


 広いスペースに灰色の物体が所狭しと並べられている。数百人?いやもっとだろうか?一体一体に毛布が掛けられている。


 その様を見る女王様とソフィアさんの表情は暗い。


「特に男性エルフに石化の影響が顕著です。世界樹の木の外でも石化し出したのです。今ではもう国内にほとんど健全な男子は残っておりません。ちょうどソフィアに求婚してきた者たちから世界各国の特効薬となりそうなものを集めたのですがどうにもなりませんでした。」


 ・・・チキン公爵がその1人というわけか。


「この地を捨てて移住することも考えましたが、我々エルフが地上で安息の日々を送るのは難しいのです。」


 なるほど。


「この国が抱えている事情は分かりました。改めて微力ながら協力させてもらいます!」

「ありがとうございます。今日と明日はしっかりと休んでください。ソフィアの隣の部屋に案内させます。」

「はい!」


 その後ゲストルームへと案内された。


 しかし部屋に入ろうとしたところで女王様に耳打ちされた。

「ツバサさん。あなたの噂はもう城を中心に国中に広まっています。特に今は男エルフがほぼ壊滅しているので、女性たちも欲求不満になっています。心の綺麗な男性は狙われるかもしれませんから気を付けてください。」


「え?えええぇぇ!」


ブックマークありがとうございます!モチベーションになりました!!


次回は26日に更新します!

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