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尾行

 コレット村は混乱に陥っている。真夜中だが山の頂上から真っ黒な煙がモクモクしている。


「祟り!?」


「そうじゃ・・・」



「あ、ツバサ様!どうしましょう?空が雲と煙に覆われていては虹の国へ行くことはできません。」



 女将の目がギョロっと動きソフィアさんを捉える。


 !?


「お主まさかその耳エルフ族か!?」

「え・・えっと・・・」

「・・・ああ、まあ今はそんなことはどうでもいい。とりあえずこの村から離れることじゃ。」


 その時お爺さんが近づいてきた。質素な身なりだがどこか威厳がある。


「旅人か?」

「俺達は通りすがりです。」

「そうか、タイミングが悪い時に来たな。すぐに去るが良い。下手したらマグマが押し寄せてくるかもしれん。」

「マグマ!?」

「そうだ。」

「だったらみんなで逃げないと!」

「ダメだ。儂ら村人にはやらねばならないことがある。」

 

 タタタタタタタ!


 勢いよく村人が走ってくる。


「村長!」

「分かっておる。すぐに全員集めろ。」

「はい!」


 100人程だろうか。みな下を向いている。その表情は一様に硬い。


「皆のもの、緊急事態だ。お供え物となる人物を選ばなくてはならない。だれか立候補するものはいるか?」

「・・・・」

 

 どういうことだ?お供え物??


「誰もいないなら掟によって決められた順番によりポメラに決まるぞ。」


 村長の言葉によって1人の若い女性が泣き崩れる。他の村人はみんな何も言わず(うつむ)いている。



「ちょっと待ってください!お供え物とはどういう意味ですか!?」


 俺が発言したことにより視線が注がれる。


「部外者は口を出さないでくれ。」

「まさか、その女性を生贄にするわけじゃないですよね!?」

「・・・・。」

「そうなんですか!?この村の掟など知らないですけどそんなのおかしい。」

「・・・・。」


「仕方がないのだ。この村に生まれた以上この村の掟に従って生きるしかない。」

「しかし・・・」


 ドオオオォォォン!


 その時山の頂上からオレンジ色のマグマが溢れ出した。村とは別の方向だがゆっくりと確実に流れている。村人たちに動揺が走る。


「お主は黙っておれ。ポメラにはいかせん。私が行く。どうせこの先短い老いぼれじゃ。」

 ギョロ目の女将が言う。


「し、しかしお主では山を登れないのではないか?」

(あなど)るでないぞ。まだまだその辺の小娘には負けんわい。」

「・・・良かろう。ではお供え物はアベベに決まりだ。すぐに出発するぞ。護衛としてケルト、アート、ボージンを連れて行く。」


 村長を先頭に、女将を囲い込むように歩き始めた。あれでは護衛というより見張りだろう。


「ソフィアさん、俺・・・エルフの国まで早く行かないといけないのは分かってますが、あのまま放っておくことは出来ません。」

「ええ、もちろんです。」

「・・いいんですか?」

「私だって放っておくことなんて出来ません。どのみちこの天候ではエルフの国まで行くことは出来ませんし。」


 俺達は見つめ合って頷いた。



 他の者たちは一斉に避難を開始している。


 村長たちは5人で山登りを始めた。俺達はバレないように一定の距離を保ちながら後をつけた。


 何があるのか分からないのでハイパースライムのロマン、ハイパーゴブリンのグリン、ハイオークのムサシをカードから出す。


 なぜかムサシのカードからは豚君も出てきた。


 ・・・乗っている。ムサシが馬のように豚君に乗っている。ブタonブタ。すっごくかっこ悪い。


「ええぇ!?ツバサ様これは一体どういうことですか??」

「ああ、俺の仲間ですから気にしないでください。」

「ええ?・・・ツバサ様はただ者ではないと思っておりましたが本当に不思議な方ですね。」

「口外はしないでくださいね。それより早く行きましょうか。」


 この際ソフィアさんに出し惜しみしている場合でもない。


 村長たちは夜中だというのにズンズン進んでいく。地元民だから通りなれた道なのだろう。


「そういえばソフィアさんは暗くても見えるんですか?」

「はい。エルフの目は他の種族よりも優れていると言われていますから暗いぐらいは問題ありません。それよりも逆になぜツバサ様は普通に見えているんですか?」

「ああ、夜目のスキルをもっていますから。」

「・・・そうですか。」


 あまり納得していないようだ。なにかおかしいことを言っただろうか。


「あの、一体いくつのスキルをお持ちなんですか?」


 ああ、そういうことか。人間にしてはいろいろ持ち過ぎなのか・・・


「ま、まあいいじゃないですか。そんなこと。」

「そう・・ですね。」




≪ツバサ!何か近づいてくる。しかも10匹はいる。村長達とかち合うわ。≫

≪了解!みんな戦闘体勢だ。≫



「ソフィアさん!村長達がモンスターと戦闘になりそうです」

「え?」

「一応護衛もいることだし大丈夫だとは思うけど何かあったら助けに入ります。」

「はい。」


 尾行がバレないように陰からそっと行く末を見守る。


 どうやらオオカミ型のモンスターの群れのようだ。俺達ならすぐ倒せそうだが少々手こずっている。


 とその時、豚君がムサシを乗せたままオオカミ?達に向かって暴走し始めた。


 ブヒブヒ、フゴフゴ言いながら走っている。ムサシは慌てて止めようとしているが言うことを聞いていない。


 ・・・やれやれ。


≪と、殿、申し訳ございませぬ。≫

≪ちょうどいい。ムサシ、戦ってきていいぞ。≫

≪はっ≫


 動けるオオカミは残り5匹ほどだ。ムサシに気付き1匹が飛びかかった。しかしムサシは慌てることなく騎豚したまま斧を振り回す。


 直撃したオオカミはキャイーンと鳴いてドロップ品に変わる。その様子を見て残りの4匹の注意が謎の豚に向いた。


 流石に4匹相手では分が悪いかと思われたが、体格で勝る豚君がものすごい勢いで蹴散らしていく。そしてムサシがとどめを刺す。


 なかなかいいコンビネーションだ。


 あっという間に片づけてしまった。村長達は突然の事に驚き戸惑っている。


≪ムサシ!よくやった。戻ってきていいぞ。≫

≪はっありがたき幸せ。≫


 ふむふむ。本当に武将みたいな奴だ。


 戻ってきた豚君はドヤ顔をしてきた。完全に俺の事を舐めている。


 そして姫様の前まで行き、後ろ足で立ったかと思うと抱き着いた。前足で器用にホールドしている。鼻息が荒い。


「おい、コラ何してんだ!」

「ブ?」


 不思議そうな顔を俺に向けたあと、ブヒヒと笑い腰を振り始めた。


「・・・・。」


 まさかの行動に開いた口が塞がらない。もちろん姫様に実害は出ていないが・・・じゃれているだけなのだろうか??


≪ムサシ?豚君は姫様を襲っているってことでいいんだよな?≫

≪・・・はい。ブタの世界では強いものが全てを手に入れますから・・・先ほどの戦闘で強さを証明したと思っているのかもしれません。≫


「あ、ちょっと、、、、豚さん止めてください//」


 ソフィアさんから助けを求める視線が投げかけられる。


 ふむ。豚に襲われるエルフのお姫様。


 なかなかお目にかかれるシチュエーションでは無いが・・・胃の辺りがムカムカする。


 どうやら立場が分かっていないようだ。こういうなめた奴には教育の必要がある。


 

 俺は体からクレアさんのパンツを取り出した。そして見せつけるようにヒラヒラさせた。


 すると豚君は一瞬でそれが何か分かったようだ。鼻をヒクヒクさせながらブヒブヒ鳴きはじめた。。


「はっはっは。どうだ羨ましいだろ?」


≪殿、くださいと申しております。≫

 ムサシが通訳をする。


「絶対ダメだ!だが俺に忠誠を誓うなら、働き次第で一嗅ぎさせてやってもいいぞ。」


 ブヒブヒ。

≪殿に忠誠を誓うと申しております。≫


「おお、そうか、そうか、今の言葉忘れるなよ。じゃあとりあえずソフィアさんを放せ。」


「ブ!」


「それからカードに戻れ!」


「ブ!」


 ふう~これで一件落着。


「ソフィアさんうちの豚がすいません。大丈夫でしたか?」

「は、はい///」

「しかし一目で発情させてしまうなんて恐るべき美貌ですね。」

「い、いえそんな・・・・え!?・・・ツ、ツバサ様!そ、それは女性用の下着ではないですか?///」


 ・・・あ


「い、いやこれはたまたま拾ったんですよ。」

「も、もしかしてそういうのがお好きなんですか?///」


 顔を真っ赤にさせながら聞いてきた。


 その瞬間俺以外のみんなが一斉に頷いた。


「お、おいお前ら裏切ったな!!」

「・・・・///」


 まったくなんて奴らだ。こんな方法で姫様とロマン達が意思疎通できたとは盲点だ。


「そ、それよりも村長達の跡を追うぞ!」


ブックマークしてくださった方ありがとうございます!モチベーションになります!


ドラマ3年A組終わってしまいましたね。


次回は14日に更新します。割とサクサク進むかなと思っておりますが・・

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