コレット村
≪ところでロマン!進化して覚えた分解はどんなかんじなんだ??≫
≪亜空間接続で飲み込んだ物が分解できるようになったっす!≫
≪おお!≫
≪・・・≫
≪・・・ん?分解できるとどうなるんだ・・・??≫
≪・・・分からないっす。≫
≪そ、そうか。石を分解したら砂にでもなるのか?いやマグマが冷え固まった物とか生物の遺骸とかにでもなるのか・・・≫
≪・・・謎っす。≫
≪・・・うむ。元気出せ。≫
≪おいっす。≫
・・・よく分からない。
「姫様そろそろ行きましょうか?」
「はい。」
朝食を適当に食べ再び歩き出した。山の高度もだんだんと高くなってきた。酸素も薄い。
足元も悪くゴツゴツした岩山が体力を奪う。
するとその時、上から岩のような物体が転がってきた。
「何だあれは!?」
何もしなければ直撃してしまう。
「あぶない!」
「え?」
とっさに姫様の腕を掴みたぐり寄せる。
「あ///」
岩?は横をすり抜け転がっていく。
「ふぅ、危なかったですね。」
「え、えぇ///そ、その、ありがとうございます。」
しかし、安心したのも束の間。なぜか転がり落ちていった岩が切り替えし今度は猛スピードで上に上がってきた。
「ただの岩じゃないのか!?」
「あれは!ローリングロック!?」
「モンスターか!」
とりえず魔力を込めカードを飛ばした。直前まで迫っていたが焦る事は無い。これで終わりだ。
そう思っていたのだが、なんと激しく回転しているロック野郎にカードが弾かれてしまった。
マズイ!
姫様の脇腹を抱え電光石火を発動する。触れるか触れないか間一髪で避け切った。まさかの事に動揺が隠せない。カードが効かないとは・・・
「大丈夫ですか?」
心なしか姫様の頬が赤い。
「はい、少しめまいがするだけです///」
なぜこのタイミングでめまいが?高山病なのか?
まあいい。それより今はどうやって倒すかだ。
ファイアーボールを放ってみたがこれまた弾かれてしまう。
ちょうどいい機会なので盗賊共から奪った新魔法を試すことにした。
プリズンウォーター!
その瞬間ツバサの手の平からキューブ状の水の塊が飛んでいく。正直スピードは遅い。しかし相手は一直線に向かってくるだけで避ける素振りも見せない。
先程と同じように弾けるとでも思っているのかもしれない。
直撃した瞬間ロック野郎がズズズズズっと水に覆われる。あれだけ威勢よく転げ回っていたのにしだいに勢いを失い停止した。
この程度の相手なら閉じ込めておけるようだ。まさに水の牢屋だ。
ふむ。口ほどにもないな。
ローリングロック:ランクD:レベル21
体力 32
魔力 25
攻撃力 32
防御力 38
素早さ 30
スキル:ローリング
うむ。スキルはローリングか。誰にしようか。
≪ロマン!昨日のスライム共と一緒にロック野郎を合成しとくよ!≫
≪やったっす!!≫
ハイパースライム:ロマン:ランクC:レベル20
体力 45→64
魔力 44→66
攻撃力 48→68
防御力 41→55
素早さ 49→70
スキル:亜空間接続レベル3、硬化、穴掘り、分解、ローリング
常時発動スキル:毒耐性、麻痺耐性、眠気耐性
よしよし。亜空間接続もレベルが上がったしこのぐらいでいいだろう。
一段落ついたところで周りを見回す。
うん?姫様がまだフラフラしている。
「姫様大丈夫ですか?自身のヒールで治らないんですか?」
「残念ながらヒールは傷やケガを治すものなので今の私には効果はありません。」
状態異常か・・・
「・・・なるほど、それならその辺で休憩しましょう!」
「いえ・・・大丈夫です。」
そう言うと姫様は深呼吸をして息を整えた。
「すいません。もう大丈夫です。行きましょうか。」
「姫様が良いなら良いですが・・・」
「あの!姫様ではなくソフィアとお呼びください。」
「え?・・・・はい、分かりましたけど・・・」
急にどうしたんだろうか?
アリスの機嫌も悪くなっているが・・・
その後は小休止を挟みながら1日中歩いた。
姫様はよく分からないがなぜか楽しそうだ。
それに比べ俺はヘトヘトになってしまった。なんとかモチベーションを高めるためにソフィアさんに前を歩いてもらう。
そして気持ちが切れそうになる度に目の前のけしからん足を眺める。
足首がキュッとしていて膝が真っ直ぐでふくらはぎが・・・・ぐむむむ。
けしからん。本当にけしからん脚をした女子だ。
だがこれで俺のエネルギーは充電される。生命の神秘だ。うむ。
「もうすぐコレット村に着くはずです。」
「え?そ、そうですか。早く休みたいですね。」
「コレット村は火山にありますから温泉が有名なんです。」
「おおめっちゃいいですね!」
温泉温泉温泉。
それからしばらくすると建物が見えてきた。姫様は黒ずくめの恰好に戻っている。
王都とは比べるまでもなく質素な造りの家々が並んでいる。昔の日本にでも来たみたいだ。
鼻の奥に硫黄のニオイを感じながら木でできたボロボロのアーチをくぐり村の中に入る。もちろん門番などいない。
ポツポツといる村人たちから視線を浴びる。しかし話しかけてくる者はいない。若干の居心地の悪さを感じながら村の様子を窺う。
村の規模からいって100人にも満たないだろう。見慣れない顔がいるとすぐにバレてしまう。
適当に近くに居た青年に話しかけてみる。
「あのこの村に宿屋はありますでしょうか?」
「ああ、宿屋ならあそこだべ。」
そう言いながら青年は1つの建物を指差した。周りの建物より少しだけ大きい。
礼を言ってそこへ向かう。
ドアを開けると70歳ぐらいの腰の曲がったお婆さんが出迎えてくれた。深い皺とギョロギョロした目が印象的だ。
「いらっしゃい~」
「すいません。今日一晩泊まりたいんですがおいくらですか?」
「一泊大銀貨1枚だよ。」
「え?」
バニラちゃんの宿屋は一泊中銀貨5枚だった。それと比べると2倍の料金だ。
「え~と高くないですか?」
「うちは個室風呂が付いているからね。しかも魔石じゃなくて天然温泉のお湯を引いてるんだよ。この村に宿屋はうちだけさ。どうするかはあんたたち次第だよ。」
「・・・分かりました。じゃあ2部屋お願いします。」
そう言うとお婆さんの目がギョロっと動いた。黒ずくめのソフィアさんを凝視している。そして僅かに口元がニヤッとする。
「はいはい。1部屋で大銀貨1枚になります。」
「いや、2部屋で。」
「はいはい1部屋ですね。大銀貨1枚です。」
なんだこのお婆さん。大丈夫なのか??
「もしも~し・・・聞こえてますか??」
「はい、聞こえてますよ。」
「よく冒険者とか泊まりに来るんですか?」
「たま~に泊まりに来ますよ。」
「何年宿屋やってるんですか?」
「そうですね~。かれこれ50年ほどかね~。」
「そうですか、じゃあ2部屋お願いします。」
「はいはい、1部屋で大銀貨1枚です。」
「・・・。」
な・ぜ・だ?部屋の話になると耳が遠くなる。
「もういいです。じゃあ1部屋でお願いします。」
「はい、まいどあり~」
なぜかお婆さんの口元がニヤニヤして黒い歯が見えている。
まあいい。
「ソフィアさん?すいません。1部屋になっちゃいました。」
「え?えぇ、そ、その、私は大丈夫です///」
「とりあえず部屋に行きましょうか。」
「はい。」
階段を上り案内された部屋へ行くと、まるで畳のような部屋だった。
思いがけず懐かしい気持ちになる。
「こんなお部屋初めてです。ベットは無いんでしょうか?」
「たぶん布団を床にひいて寝るんだと思います。」
「そうなのですね。カルチャーショックです。」
「お?」
奥の引き戸を開けてみる。すると岩でできた小さな露天風呂が現れた。
「おお!見てください!お風呂ですよ!!」
「うふふ。楽しみですね。」
苦労して来たかいがあったというものだ。だが動き回って腹もすいた。
先にどちらにしようか??
「ソフィアさん?お腹空いてますか?」
「はい。」
「よし!じゃあお風呂の前にご飯にしましょうか。」
「はい!」
よしよし。お楽しみは後だ。
お食事処は木と布で仕切られ、他の客と顔を合わせなくてもいい造りになっていた。
川魚の塩焼きといろいろな具材が詰まったお鍋料理だ。なかなかクオリティが高く味も美味しい。
姫様の黒い布はどうやら口元だけは取り外せるらしく、美味しそうに頬張っていた。
しばらく食事を楽しみ満足して部屋に戻ると、畳に白い布団が敷いてあった。しかも俺の布団とソフィアさんの布団が密着している。
そんなこと誰も頼んでいないのにだ・・・
絶対にあのお婆さんの仕業だろう。今頃ニヤニヤしているに違いない。普通なら嬉しいのだが・・・
「まあ///」
「ソフィアさんは寝相が悪いので少し放しましょう。」
「え?」
そう言って二人の布団を放そうとしたのだが、出来なかった。なぜか縫ってある。片方を動かすともう片方ももれなく付いてくる。
「・・・。なんだこれは!?」
「ツバサ様はそんなに私の隣で寝るのはイヤですか?」
姫様が少し悲しげな表情で尋ねてきた。うむ。かわいい・・・がしかし寝ると凶暴なメスザルになると分かっているのだから隣では寝たくない。
「え?い、いや、いやとかそういう問題ではなく・・・お姫様ですから・・・」
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少しまとめるのに苦労しました。
次回は8日に更新します!




