出発
今日から第二章に入りました。
「中継地点としてどこに行くんでしたっけ?」
「コレット村です。」
「馬車も出てないし田舎ですね。」
「エルフの国は人里離れた場所にありますから・・・」
俺と霊体美少女のアリス、エルフの姫様のソフィアさんは虹の国に向かってデコボコ道を歩いていた。空は夕暮れに染まっている。
「変装はしてなくていいんですか?」
「はい。そもそも顔まで覆うのは窮屈で嫌いですから。」
「魔道具は??」
「あれは魔力の消耗が激しいんです。ツバサ様以外誰もいませんし。」
ふむ。なかなか信頼されているようだ。
こんなに綺麗なのに人に見せられないというのも皮肉なもんだ。
≪ツバサ、この女ガン見し過ぎ。≫
≪そ、そうでもないさ・・・≫
ジトー
≪ふん。≫
「どうしたんですか??」
「あ、い、いやなんでもないです。」
慌てて適当な話に切り替える。
「そ、それにしても鬱陶しいですね。」
「はい。近くにスライムの棲家でもあるのかもしれません。」
先ほどからやたらと出てくる。
もちろん弱いので出てきた瞬間カードにしているわけだが亜空間接続ばかりだ。
なぜこんないいスキルを最弱のモンスターが持っているのか疑問でしかない。
そんなことを考えていると姫様と目が合った。
ソフィアさんにはすでにある程度見られているので、特段隠すこともしていない。
その後も順調に進み日が暮れたところで今日の移動は終了した。
うっそうと木々が生い茂る森の中に腰を下ろす。思えば初めて目が覚めた時もこんな森の中だった。少し前の事なのに懐かしく感じる。
≪そういえばあの時アリスが鼻の穴に指を突っ込んできたんだったなwww≫
≪・・・私女の子だからそんなことしない。≫
≪うそつけっ!≫
≪ほんとだもん!≫
≪なにを~~~~これでもくらいやがれ!≫
≪ふん。≫
≪あ、おい空に逃げるのは卑怯だぞ!≫
「ツバサ様何をなさっているんですか??」
「え・・いや・・・ははは。」
≪ふふふ。≫
アリスが勝ち誇った顔で笑っている。
ぐむむむ。
まあいい。あとで仕返ししてやる。笑
適当に木の枝を拾いファイアーボールで火をつける。煙がモクモクと上がる。
「火魔法も使えるのですか!?」
「そうですね。一応使えますよ。」
「ツバサ様は多彩なんですね。」
「いえいえ、・・・そんなことよりお腹空いたんでご飯にしましょうか?」
「はい。」
姫様が取り出したのは冒険者にお馴染みの保存食だった。バノンさん達に食べさせてもらったあのカチカチのお肉だ。お世辞にも美味しいとは言えない。
「姫様。」
「何でしょうか?」
「その保存食も良いんですが、今日はこれを食べましょう!」
マスターカードからオークのドロップ品であるお肉を取り出した。姫様には俺の体から出てきたようにしか見えないだろう。
「え!?」
「何ですかそれは!?そんな魔法見たことがありません。」
「まあまあ、細かいことはいいじゃないですか。」
取り出したお肉をたき火で炙る。するとあたりには香ばしいニオイが充満し肉汁がポタポタと滴り落ちる。
その時、姫様のお腹がグゥ~と大きな音をたてた。
「え?」
「ち、違うんです///」
よっぽど恥ずかしかったのだろう。白い素肌が真っ赤になっている。耳まで赤い。
ふふふふ。かわいい。いじめたくなる可愛さだ。
「何ですか?今変な音が聞こえましたね。」
「ご、ごめんなさい///」
「カエルでもひしゃげたのかと思いました。」
「そ、そんな・・・男性にお腹の音を聞かれてしまうなんて。」
モジモジしている。
「冗談ですよ。いいじゃないですかそのぐらい。俺しか聞いてないんですし。」
「うう・・・もうお嫁にいけません。」
イヤイヤイヤ、お姫様かよ。笑
「いいからお肉食べましょ。」
「・・・はい。」
適当に切り分け食べさせる。するとみるみるうちに笑顔になっていった。
「・・・お、美味しいです。」
「まだまだいっぱいあるんで遠慮せずに言ってくださいね。」
「はい。」
≪ツバサ!≫
≪ん?≫
≪食べたい。≫
≪ん?≫
≪食べたい。≫
≪これのことか?≫
わざとアリスに見せつけるように食べる。
≪チュバサ≫
≪4回まわってお手してワンって言ったらいいぞ。≫
うむ。この少女にプライドというものは無いのだろう。ためらう素振りをみせることもなく速攻でやり始めた。仕方がないので1ブロック入れてやる。
美少女の餌付け完了だ。
うむうむ。この気分・・・何かに目覚めてしまいそうだ。
いかんいかん。まだ16歳?なんだ。
それから俺も姫様もお腹がいっぱいになるまでたらふく堪能した。
炎がユラユラ幻想的に揺らめいている・・・
しばらくボーっと見ていると少し眠くなってきた・・・・
「じゃあ・・このあとどうしましょうか??」
クンクン。
自分のニオイを確認してみる。体中にお肉の焼いたニオイがついている。
クンクン。
ふむふむ。お肉のニオイもするが、どこか汗の混じった甘いフェロモンのニオイがする。
「な、何するんですか!?」
「え?焼肉のニオイが姫様についてしまっていたら申し訳ないなと思いまして。」
「だ、男性にニオイを嗅がれてしまうなんて・・・・うう。」
「ウォーターボールで水洗いしようと思うんですが姫様も洗いますか?」
「・・・じゃあお願いします。」
お互い服を着たまま水を頭から浴びる。汗でベトベトニなった体が綺麗になっていく。ベチョベチョになってしまったが火魔法があるので問題ない。
その後は姫様と地面に寝転がって夜空を見上げていた。
「お月様がとても綺麗ですね。」
「そうですね。」
「・・あのツバサ様は・・・ホルダーなのですか?」
ストレートに聞かれてしまうと何と言っていいのか判断に迷う。少なくともこの姫様は俺に対して、自分がエルフであるという秘密を打ち明けてくれている。それに悪意のある人間には見えない。
「まあ、そんなところです。」
「やはりそうだったんですね。」
「2人だけの秘密にしてください。」
「はい、もちろんです。ツバサ様には感謝していますから裏切るような真似はしません。」
「そろそろ今日はもう寝ましょうか。」
「はい。」
そうして目をつぶり寝ようとしたが、思いの外、姫様の寝相が悪かった。手足がペチペチ俺の体に当たる。まさかこんな欠点があるとは。
当たらないように少し距離を開けても、しばらくすると俺の横に転がってくる。無意識のうちに安全な場所を求めているのだろうか?
仕方がないので、スキル:粘糸を使って姫様をグルグル巻きにした。これで大人しくなるだろう。
翌朝姫様の悲鳴で目が覚めた。
「な、何ですかこれは?」
眠いのでシカトだ。
「・・・・。」
「ツバサ様!起きてください。ヒップスパイダーに襲われました。」
「・・・ああ、大丈夫です。それ俺がやったので。」
「え?どうしてモンスターの技が使えるのですか?・・いやなぜこんなことを・・・」
モゾモゾ。
「ツバサ様、そのたんこぶと青あざどうされたんですか??」
「ああ、これはたいそう凶暴なメスザルに襲われましてね。」
「まあ、それは大変でしたね。大丈夫ですか?」
「ええ、一応大丈夫です。」
「まさかそのメスザルから私を守るためにグルグル巻きにしてくださったのですか?//」
・・・アホだな。かわいい顔してアホだな。
「まあ、守るためにグルグル巻きにしました。」
嘘は言っていない。俺自身を守るためだ。
「あ、ありがとうございます///」
ふむ。勝手にお礼を言って照れてやがる。
「そのメスザルの名前なんですが知りたいですか?」
「名前まで分かるんですか?」
「はい、たしかソフィアという名前でしてね。」
「・・・!?」
「何度も殴られ蹴られました。」
「私と同じ名前ですね。」
「はい。」
「・・・。」
寝転がったまま目が合う。
「・・・ご、ごめんなさい。」
それからしばらくしてから起きた。やはり粘糸は内側からの衝撃には強いようだ。モソモソしているが破れそうにない。
仕方ないので解除してやった。
もうすぐコレット村に着くだろうか?
ブックマークしてくださった方ありがとうございます!モチベーションを保つのは難しいんですが力になってます。
次回は5日に更新します!よろしくお願いします!




