表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートカードで異世界最強 ~成り上がりほのぼの冒険物語~  作者: ちゅん
第一章 始まりの国篇
50/74

お婆さん

本文下に更新についてのお知らせがあります。よろしくお願いします。

 眠ろうとしたがなかなか寝付けない。どうしても目が冴えてしまう。


「ツバサ様眠れないんですか?」


「王女様、、、起きてたんですか?」


「ええ、なんだか眠るのがもったいなくて。どうせ眠れないのならそこのテラスで少しお話しませんか?」


「はい。」


 テラスからは街が一望できた。綺麗に区画されメインストリートから正門まで丸見えだ。目の前のこの可憐な少女は、この綺麗な景色をいつもどんな気持ちで見ているのだろうか?


 涼しい風がツバサの火照った体から熱を奪う。


「ツバサ様、私こんな時間に男性の方と2人でいるのは初めてです。なんだか悪いことをしているみたいですね。」


「ははは、実際こんな場面を誰かに見られてしまったら問題になりますよね?」


「そうかもしれません。笑」


「ああ、そうでした。まだ手錠とかお返ししてませんでしたね。」


「え、えぇ///」


「王女様はなかなかマニアックな趣味をしているんですね。」


「ち、違います。誤解です。」


 ジトー


「ふ~ん。そうですか。とりあえずお返しするので王女様の部屋にでも行きますか?」


 そう言ってピンクの手錠を王女様に見せた。しかしその時、動揺した王女様の足がもつれて転びそうになってしまった。慌てて手を伸ばし王女様を抱きかかえた。


 ガチャリ。


 ふぅ~なんとか間に合った。


「危なかったですね。笑」

「・・・・。」

「え?」

「ツバサ様!手錠が・・・」

「ああ、すいません。今とりますよ。」


 ガチャガチャガチャ


「・・・・」


「あのこれってどうやったら外れるんですか?」


「盗賊のアジトに鍵は無かったんですか?」


「少なくとも俺は持っていませんが・・・」


「まあ、どうしましょう、この手錠はただの手錠ではないんです。」


「え、どんな手錠なんですか?」


「真実の手錠といって、恋人同士が愛を確かめるために使う魔道具なんです。もし24時間以内に外せないと、手が切り落とされてしまいます。」


「嘘だろ!?」


 異世界はハード過ぎるよ!どんな趣味してるんだよ!


 慌ててカードを取り出し、手錠だけを収納しようと試みた。しかし上手くいかない。


 ・・・王女様をカードにするわけにはいかない・・・それに配下にしたところで手錠もついてくる可能性がある。


「そんな!鍵以外に何か外す方法は?」


「恋人同士がお互いの手首につけた状態で真実の愛を確かめればいいと聞いたことがあります。」


「それならもう片方貸してくれ。」


「ダメです。婚約内定もお父様が強引に決めたことです。ツバサ様に迷惑をかけるわけにはいきません。」


「いいから。」


 ガチャ。


「まあ、何てことを///」


「これでどうせればいいんだ・・・」


「具体的なことは私も分かりません。」


「と、とりあえす、手を握ってみましょうか。」


「はい///・・・ですが・・・その前に私の部屋に移動しませんか?城の者やバニラちゃん達にも見られるわけにはいきません。」


「そ、そうですね。」


 手錠がガチャガチャならないように慎重に部屋を出る。2人はグッスリ眠っているようなので、ひとまず大丈夫だろう。バニラちゃんの手がしきりに動いているがどうせ夢の中でニンジンを探しているのだろう。


 恐る恐る廊下に出る。


 もし手錠で王女様とつながっているところを見られたら問答無用で打ち首だろうか?それとも国王様なら話を聞いてくれるだろうか?


「・・・王女様の部屋に行ってから俺の手錠をした方が良かったですね。」

「・・・はい・・・でも嬉しかったです。」

「そ、それなら良かったですけど・・・部屋まで案内してください。」

「はい///」


 小走りで進む。緊張感が尋常ではない。



「ん?」


 人の足音が聞こえる。


「見回りの兵士です。」


 コツコツコツ。


「やばい、やばい。そこ!」


 脇に飾ってあった鎧の後ろに隠れる。明かりを持った兵士が目の前を通り過ぎていく。


 ふう~


「ツバサ様、私もう心臓が止まりそうです。」

「俺もです。」


 コツコツコツ。


「またか!?」

「急ぎましょう!」


「あそこです。」

「はい!」


 慌てて部屋に駆け込む。


「私もうダメです。」


 王女様がヘナヘナと床に座り込む。一心同体の俺もつられて座り込む。心臓が落ち着くのを待ってから話しかける。


「早いとこ手錠を外しましょうか?」

「・・・はい。」

「じゃあ、し、失礼します。」


 そっと彼女の手を握ってみる。細い指だ。改まって握るとさすがに照れがある。


「何も起こりませんね。」


「つなぎ方がダメなのかな??」


 恋人つなぎをしてみる。指と指の間に他人の指が入り込む。普段触られない箇所なので少し変な気分になる。


「どうやら手を握るだけではダメなようですね。」


 う~む。


「じゃあ、ハ、ハグしてもいいですか?」

「えぇ//」

「失礼します。」


 ギュ


 真正面から抱き合う形になった。王女様の手がゆっくりと俺の背中に回される。


 全身でその弾力を感じる。


「こ、こうでよろしいですか?」

「たぶん、そうだと思います。」


 しばらくすると甘いニオイが強くなってきた。首筋からフェロモンでも発せられているのか。けしからん。こんな時に発情しおってけしからん。



「て、手錠はなにか変化ありましたでしょうか?」

「・・・無いですね。」

「・・・。」


 まずいぞ。ハグをしてもダメだとなると残るはキスしかない。しかし王女様相手に軽々しくそんなことできるハズがない。


「どうしましょうか・・・」



「・・・私はツバサ様のことを好いております。」


「え?・・・えーと俺は・・・」


「ふふふ、いいんですよ。父が勝手に決めてしまってご迷惑だったでしょう?」


「いや、迷惑とかでは無いですが・・・正直戸惑っております。」


「はい、私もツバサ様の優しさに付け込んでしまいました。・・・朝になったら私から父に婚約内定を撤回してもらうようにお話してみます。」


「・・・待ってください。確かに戸惑ってはいますが・・・君が他の男に取られるのは許せない。」


「///」


「今俺が言えるのはこれで精一杯です。それでもあなたは俺が戻ってくるのを待っていてくれますか?」


「もちろんです。他に何人女性がいても構いません。バニラちゃんやクレアさんとずっとお待ちしております。」


「・・・分かりました。俺は冒険者として最強になって戻ってきます。それまで待っていてください。」


「はい。」


 その時だった。2人の手首から手錠がボトっと落ちた。手首がスースーする。


「あ、手錠が外れました。」


「私はもう少しあのままでも良かったですけど・・・」


「何言ってるんですか王女様。下手したら手首なくなっていたんですよ?」


 すると王女様が抱きついてきた。


「・・・もう少しこのままでいたいのです///」


 ・・・うむ。かわいすぐる。かわいすぎるじゃなくてその最上級。かわいすぐる。



 しばらくハグをして過ごした。




「・・リリィ?」

「はい?///」

「そろそろ寝ようか?」

「・・・はい。」


 残念そうな表情を浮かべる王女様がかわいすぐる。


「それとも今度は首輪でもしてみますか?笑」

「い、いえ・・・私にそんな趣味はありません。戻りましょう。」

「はははは。」


 それから2人が眠る客室まで戻り眠りについた。


 朝目覚めるとバニラちゃんが俺の左手の指をガジガジしていた。どうせニンジンと間違えているのだろう。


 クレアさんとリリィもまだ眠っている。


 昨日の夜中の事を思い出すと少し恥ずかしい。


 しばらく二度寝の余韻に浸っているとメイドさんが朝食を運んできてくれた。仲良くみんなで朝ご飯を食べる。心なしか王女様は顔が赤い。




 その後、俺は冒険者ギルドに行くために1人城を出ることにした。クレアさんは治療の続きを受け、バニラちゃん達は事件のことで話を聞かれるようだ。


 城のエントランスから立派な階段を下り、庭を抜ける。なんだか無駄に時間がかかるので、家は小さくていいような気がする。


≪アリス?≫


≪うん?≫


≪とりあえず、怠けているわけにもいかないしギルドに行こう!≫


≪うん。≫


 貴族エリアを抜け庶民エリアにやってきた。そのため人通りも多くなる。相変わらずいろいろな人が行き交っている。


「うん?」


 ふと行き交う人々の中に老婆がいるのに気が付いた。その顔には深い皺が刻まれている。腰は大きく折れ曲がり、全体的にみすぼらしい。


 なにやら通行人に話しかけているが、誰からも相手にされていない。挙句の果てに、小突かれて転倒してしまった。お婆さん相手にそこまでしなくてもいいだろうに。


 急いでお婆さんに駆け寄って手を差し伸べた。


「アイタタタ、おお、坊やありがとうね。」


「いえ。どうかされたんですか?」


「いやね、コレット村まで行きたいんじゃが護衛を雇うお金も無くてね。田舎だから馬車も出ていないんじゃ。中銀貨5枚じゃあ誰も引き受けてくれなくてのう。」


「そうでしたか。」


「お主良かったら引き受けてくれないかの?」


「う~ん、ちなみにその村までどのぐらいかかるんでしょうか?」


「5日ほどじゃ。」


 中銀貨5枚で5日か。正直割に合わない。だが盗賊のアジトである程度回収したためお金には困っていない。


 俺が受けなければおそらくこのお婆さんがその村まで行くのは不可能だろう。




 引き受けてみようか。これは人助けでもあるし社会勉強だ。


「分かりました。俺でよければ引き受けますよ。」


「本当か!?本当にこの条件でやってくれるのか?」


「ええ、たまには人助けも良いかと思いまして。」


「ありがたや~ありがたや~お主は思った通り心の綺麗なお人じゃな。」


「え?・・・そんなことないですよ。」


「ふっふっふ、それなら詳しい話をせにゃならんから私が泊まっている部屋まで一緒に来てくれるかいの?」


「はい。行きましょう。」


 そうして思いがけずお婆さんについていくことになった。


本日も読んでいただいてありがとうございます!


今日で50話になりましたがここでお知らせがあります。次回の更新は24日(日曜日)にさせていただきます。今日までハイペースで毎日更新していたのですが、書く時間を確保し長く続けるために、これからは3日に1回ぐらいのペースで更新しようかと思っています。毎日読んでくださっていた方申し訳ありません。

よろしくお願いします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ