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チートカードで異世界最強 ~成り上がりほのぼの冒険物語~  作者: ちゅん
第一章 始まりの国篇
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尻尾

 苦戦しながらクロースが上っていく。


「くそ、水蒸気で岩がヌメヌメしていて登りにくい。難易度Aクラスだ。」

「そろそろ俺も登り始めるぞ。」


 思ったよりも難しい。しかも命綱もつけていない。一番上から落ちたら危険だ。


 指の握力がどんどん失われていく。


 だが諦めるわけにはいかない。ここで諦めたら男ではない。


 腕と指がプルプル痙攣し始めた。あと少し。あと少しだ。


 クロースは顔が真っ赤になりこめかみに血管が浮き出ている。


 2人とも死にそうな思いをしてようやくてっぺんに手がかかった。目を合わせ大きくうなずく。


「せ~の!」 


 鼻の穴を大きく膨らませ期待を胸に覗き込む。



 いた!誰かいるぞ!


 しかし曇っていて良く見えない。目を凝らし身を乗り出す。






 ・・・・・






 ・・・・90歳ぐらいのお婆ちゃんと目が合った。


 






 ・・・・。





「キャー!いや~ん、ちょっと男子何見てるのよ!恥ずかしいっ。」


 ・・・10代の乙女のように喋べっている。本当に恥ずかしいなら少しでも隠す素振りを見せろよ・・・。なんでずっと仁王立ちしてるんだよ。




 クロースは無言だ。そしてゆっくりと下まで降りた。



「あ、あれだな、今回は何も見えなかったな。」

「そ、そうだな。声が聞こえたんだけどな。誰もいなかったな。」


 ・・・うむ。記憶から抹消しよう。


 無駄な努力をしてしまった。得たものは何もない。



 仕切り直して湯船につかっていると国王様が入ってきた。


「国王様!」


「どうだい?いいお湯だろ?」


「はい、それはもう大満足です。」


「娘の話だが強引に進めてしまって悪かったね。」


「い、いえ・・・」


 強引だという自覚はあるらしい・・・


「こないだ君はキャロット専門店でリリィと会っただろ?帰ってきた娘は目をキラキラさせながらツバサ君の事を話してくれてね。今までは異性になどまったく興味を示さなかったんだが嬉しそうに話すんだ。」


「そ、そうだったんですか。」


「もし、ツバサ君が現れなければ、遠くない未来にリリィは好きでも無いどこかの王子か貴族と結婚させられていただろう。いくらこの国が開かれた国だとはいえ王女が自由に恋愛などなかなかできるものではないからな。」


「ですが・・・私のような新人冒険者が相手でもよろしいんでしょうか?」


「うむ。しかし君はホルダーだ。結婚相手として申し分ない。むしろこちらから頭を下げたいぐらいだ。それにリリィはその事実を知らずに君に恋をした。親としてこれほど嬉しい事は無い。」


「しかし俺がホルダーであることは秘密にしていただけるんですよね?」


「ああ、世間に対してはリリィが婚約内定したことだけ伝える。相手については言及しない。そして正式に結婚する時に君の事を発表したい。だから君にはもしホルダーと発表しても問題ないぐらい冒険者として最強になってもらいたい。」


「・・・そうですね。もとより強くなろうと思っています。」




「あと1つ・・・私は旅を終えたら元の世界に帰ってしまうかもしれませんよ?」


「もし君が帰る方法を見つけてその時になって異世界に帰る選択をしても誰も咎めやしないよ。」


「そうですか・・・」


「どうしても君が結婚したくないというなら、そう言ってくれて構わんよ。その場合私のかわいいリリィの心に傷ができて毎晩泣くだけだろう。そして好きでもないどこかのオヤジと夫婦生活を送るだけだからな。」


 国王が大げさに悲しむ顔をする。


「国王様・・・」


「国王様じゃない。父上と呼びなさい。我が息子よ。」


 ダメだこりゃ。ただの親バカだ。


 熱いお湯を頭からかぶり目をつぶる。もちろん悪い話ではないがピンとこない。




 それからしばらくして自分の客室へ戻った。ベットに寝転がってゴロゴロする。


 昼寝をしたこともありまったく眠くならない。




 コンコン!

「はい。」


 ガチャ!


「バニラちゃん!」

「あの、今日も一緒に寝てもいい・・?」

「ああ、いいよ。」

「えへへへへ///」


 ウサミミがピンピンになる。


 ジャンプして布団にモゾモゾと潜り込んだ後、頭だけヒョコっとだす。小動物みたいで可愛い。心の傷の方が心配だったがあまり変わりがないようだ。


 しばらく談笑しているとまたしてもドアがノックされた。


「あのクレアです。」


「どうぞ入ってください。」


 ガチャ。


「なんだか1人で部屋にいると心細くて・・・あら」


「えへへへへ」


「バニラちゃんがすでにいたのね。」

「クレアお姉ちゃんもこっちこっち。」

「えぇ。」


 クレアさんが布団に潜り込む。


 すると3度目のノック音が聞こえてきた。

 

 コンコンコン!


 誰だろうか?


「リリィです。」

「あ、はいどうぞ。」

「あのそういえばまだアレを返してもらっていなかったので・・・え?みなさんいらしてたんですか?」


「ああ、えーと2人ともいまいま来たところですよ。」


「王女様こっちですよ。」

「はい、ありがとうバニラちゃん。」


 結局3人ともベットに潜り込んでしまった。俺は何となくベットの脇の椅子に腰かけた。さてどうしたものか?女性が3人もいると男の俺が入り込む余地など見つけられなくなる。


≪なにこれ?≫


 タイミングの悪いことにアリスまでカードから出てきた。口の周りにご飯がいっぱい付いている。上品な顔が台無しだ。


≪アリス・・俺もよく分からない。なぜか集まってしまったんだ。≫


 状況を理解するやアリスが(わめ)き出してしまった。もちろんその声は俺にしか聞こえていない。


 いや逆に俺にしか聞こえないことが問題だ。理解者が誰もいない。頭がクラクラする。


≪アリス、落ち着いて。俺はどこにもいかないよ。≫


≪ほんと?≫


≪ああ、何人俺を慕ってくれる女の子が増えても俺が初めてこの世界で出会ったのはアリスだよ。それからずっと一緒にいてくれて感謝してる。これからどんな状況になっても一緒だよ。≫


≪うん。じゃあご飯食べてくる。≫

≪・・・おお。≫


 なぜまた飯なんだ・・・



 3人は俺の話で盛り上がっている。


「もうそろそろ寝ようか。王女様は立場とかいろいろあると思うんですが、ここで寝ても大丈夫なのですか?」


「ええ、2人がここで寝るのに私だけ自室なんて耐えられませんわ。だからここで寝ます。」


「そ、そうですか。分かりました。えーと、じゃあ俺は椅子で寝ようかな・・・」


「ツバサ君は真ん中で寝てね。」

「うん。ツバサお兄ちゃんは真ん中じゃなきゃダメ。」

「誰と誰が隣で寝ましょうか?1人余ってしまいますわね。」


「そうね。こういうのはどうかしら。私と王女様が左右で、バニラちゃんはまだ小さいからツバサ君と私の隙間に入ってくれればいいわ。」


「え?大丈夫なのそれ?俺身動き取れなくない?・・・じゃなくて俺は椅子で・・・」

「ツバサ君は早く寝転がってね。」


 どうやら拒否権は無いみたいだ。言われた通り横になる。すると右側に王女様、左側に№1受付嬢のクレアさんが横になり密着してきた。女性特有の甘いニオイが両隣から発せられている。鼻孔から入り俺の脳みそをかき混ぜていく。


 そしてウサギの獣人のバニラちゃんが隙間に入る。


 これはマズイ。美少女3人の鼻息が聞こえる。体温も感じる。本当にけしからん。


 ふと左手の指先に何か柔らかいものが触れる。フワフワしている。なんだろうか。肌触りがとても良い。


 グッと掴んでみた。


「あぅ///」

 バニラちゃんから変な声が出た。


「え?」


「ツバサお兄ちゃん。それ私の尻尾だよ。///」


「そうなのか。肌触りが気持ち良いな!」




「まあ//」


「ツバサ君、もしかしてウサギの獣人にとって尻尾がどういうものか分かってないんじゃない?」


「え?尻尾は尻尾じゃないんですか?」


「ふふふ。違うのよ。尻尾はとても大切な場所でめったに他人に触らせるものじゃないの。それこそパートナーぐらいよ。」


「え?ご、ごめん。知らなかったんだ。今度から気をつけるよ。」


「ツバサお兄ちゃんだったらいつでも触っていいよ。」


「はは・・ははは。」


 そうして日付が変わる頃にはみんな寝始めた。


昨日評価してくださった方ありがとうございます!とても嬉しいです。


なかなかダイエットができません。お菓子を食べてしまいます。炭酸も飲んでしまいます。なぜ痩せないんでしょうか?

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