婚約内定??
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大きな扉を開くと視線が一気にツバサに向けられた。見たことが無い人も何人かいる。
どうやら立食形式のちょっとしたパーティーのようだ。長いテーブルに盛り付けられた料理が所狭しと並べられている。
入り口付近でメイドから飲み物を渡される。
おそらく俺と王女様が最後だったのだろう。扉が閉まるのを確認してから、国王様がステージ上に立ち挨拶を始めた。
「オホン、えーみなのもの、本日はよく集まってくれた。たった今、今日の主役が入場した。見事に事件を解決に導いた冒険者の黒木翼君じゃ。みなのもの拍手で出迎えるのだ。」
その瞬間一斉に拍手をされた。横では王女様も笑顔で手を小さく叩いている。
みんなグルだったのか。
「うむ!彼の話を聞きたい人はあとで個人的に聞くと良いぞ。それではこのぐらいにしておこうか。みなお腹も減っているだろう?今日はうちの料理人が腕によりをかけて作ってくれた。思う存分食事を楽しんでくれ!それでは乾杯!」
「乾杯!!」
「有名人にはなりたくないんですがね・・・・」
「ごめんなさい、お父様はああいう人なの。」
「まあ今日ぐらいいいか。それにしても美味しそうですね。」
「うふふ。なんでも食べてくださいね。」
「あれはなんですか?あの丸い団子みたいな揚げ物は?」
「ああ、あれはブヨンの身を練りこんだ揚げものです。ブヨンは練れば練るほど弾力がまして美味しいんですよ。」
「それじゃあ1ついただきます!」
モグモグ。
何だこの食感は!?プリップリだ。
「感動しました。」
「ふふふ。」
≪ツバサ、ツバサ。ん、ん。≫
≪分かってるよ。あげるからちょっと待ってて。≫
卑しい貧乏人に見えないように注意しながら、さりげなくアリスのカードに入れていく。
≪ありがと//≫
しばらく食事を楽しんでいると国王様が俺に向かって歩いてきた。
「ツバサ君、気に入ってくれたかね?」
「はい。とても気に入りました。」
「それならもらってくれるかね?」
「え?くれるんですか??ぜひお願いします。」
「おお、そうかそうか。ではリリィと婚約内定だな。」
「まあ///」
ブホッ!
口に含んでいたものを全て吹き出してしまった。
「な、何をおっしゃって・・・・」
「何ってリリィのことを気に入ってくれたんだろ?」
王の口元がニヤっと歪む。
「い、いや今のは料理に対しての・・・」
その瞬間、国王の顔が柔和な表情から悪魔のようにおぞましいものへと変わる。目からビームでも出そうだ。・・・嵌められた。
「・・何か言ったかね?」
「い、いえ、リリィさんは素敵です。ただ私は世界中を旅しなくてはなりません。」
「うむ。それは分かっておる。リリィも理解しておる。今すぐどうこうという話ではない。とりあえず今は婚約内定ということにして、旅が終わったら正式に結婚ということにすればよい。一応王族なのでな。婚約していると公言しないとどこぞの貴族がうるさくてな。心配しなくても現時点では君の名前は伏せておくから安心しろ。」
「しかし・・・」
「ああ、それとギルドの№1受付嬢と宿屋の娘もツバサ君が帰還したら結婚して良いぞ。彼女たちもそのつもりだろう。」
「え?」
ダメだ。頭がクラクラする。話についていけない。桜井さん・・・
「ふふふ。ツバサ様が寝ている間にガールズトークに花が咲いてしまいまして。そうだわ。お母様と妹を紹介いたしますわ。」
そう言って王女様が連れてきたのは、30代前半ぐらいの綺麗な女の人と、7歳ぐらいの美少女だった。
王妃様と第二王女様ということか・・・
「初めましてツバサさん。私はリリィの母のローズと申します。この子は妹のシルクです。」
「・・はい。初めまして。私は冒険者をしております黒木翼と申します。よろしくお願いいたします。」
「リリィちゃん、この方がこないだ話してくれた人ね。」
「はい、お母様。」
「うふふふ、いいじゃない。素敵な方だわ。リリィちゃんがいなかったら私がお願いしたいところだわ。」
「お母様、お顔が冗談になっていないですよ。」
「あら、そうかしら?ふふふ。」
・・・・。国王様の前でそれはまずいんじゃないかと思ったが・・・・笑っている。
「ああ、そうだ未来の息子よ、今夜はお城の大浴場に入っていかないか?そのまま客室に泊まってくれればいいしな。」
・・・息子・・・結婚することになっている・・・
「・・・それは・・ぜひお願いします。」
「よしよし、それではまた後でな。」
「はい。」
それからクロースと話したり、よく分からない人と談笑しながらご馳走を食べた。もちろんアリスにも食べさせてやった。婚約の話を聞いていたのか、いなかったのかよく分からないが食べるのに夢中なようだ。
そうこうしているとバニラちゃんが話しかけてきた。
「ツバサお兄ちゃん、私たち今日お城に泊まることになったんだ。それにお風呂も入っていいって。」
「ああ、俺も国王様に言われたよ。」
「クレアお姉ちゃんも今日はお城に泊まるみたいだよ。」
「そっか。」
「あ、クレアお姉ちゃん!こっちこっち。」
「バニラちゃん!ツバサ君も!」
「体調はいかがですか?」
「おかげさまでどんどん良くなってるわ。ツバサ君のおかげね。」
「いえ、それなら良かったです。」
「クレアお姉ちゃんも大浴場に一緒に入る?」
「私は・・そうね、まだ体調が万全ではないから部屋のお風呂で済ましてしまうわ。」
「そっか。」
・・・おそらく本当の理由は体にある傷跡だろう。何とかしてあげたいがそんな術など持っていない。
ふむ。
それからまた時間が経ちお開きの時間となった。
相変わらずアリスはカードの中で食べ続けている。卑しい奴だ。まあ、それならそれでいいが。
部屋に戻り一服する。 一人の時間だ。ベットに寝ころびながら考え事に耽る。自分でも信じられないようなことばかり起こる。王女様も本気なのだろうか?
悪い気はしないが理解が追いつかない。
ふう~。桜井さんは今頃どうしているだろうか?
コンコン。
「はい?」
メイドさんが入ってきた。
「お風呂の準備が出来ました。」
「ああ、ありがとうございます。」
うむ。考えるのはいったん止めだ。
連れられてやってきたのはトリンドル王国自慢のお風呂らしい。脱衣所で服を脱ぎドアを開ける。
床は大理石だ。それに広い。お風呂の広さではない。
ドラゴンのような石像の口からお湯がとめどなく流れる。
うむ。なんだこれは。
「ツバサ!」
「クロース!」
「お?カッコいい刺青してるんだな。」
「いや、これは生まれつきあるアザなんだよ。」
「そうなのか。不思議だな。」
「男にそんなジロジロ見られても嬉しくないんだが、、、」
「おう、悪い悪い。どっかで見たことあるような気がしてな。気のせいかな?まあいい、風呂に入るか。」
「ああ、こんなでかいお風呂は初体験だ。」
「ははは、俺だって無いよ。うちのお風呂はここの4分の1ぐらいしかないからな。」
「・・・貴族様かよ。それでも普通の人の家より広いじゃねーか。」
「それもそうだな。ただこの国は貴族だからと言ってボケッとしているわけにはいかないからな。これでも必死なんだぞ俺は。」
「そうか、良い国じゃないか。誰にでもチャンスがあって、自分の実力によって評価してもらえるんだから。」
「そうかもしれないな。まあ俺も努力するさ。そんなことより王女様の件は大丈夫なのか?」
「・・・いや、いまいちどうしたらいいのか分からない。俺のいた世界ではまだ結婚を決めるような年齢じゃないし、それに一夫多妻制も抵抗がある。」
「そうなのか、この世界では幼少期に親が決めてしまうなんてことよくあるぞ。特に貴族はな。俺にも昔から許嫁がいるし。」
「そうなのか!?どんな感じなんだ?」
「どうって・・・仲良くしているぞ。時には流れに身を任せるのも良いもんだぞ。」
「・・・そうなのか。」
「まあなるようになるさ!気分転換でもするか?」
「ん?なんだ?泳ぐのか?」
「おいおいおいツバサ君、君はそれでも健全な男の子なのかい?あそこの壁の向こうがどうなっているか気になるだろう?」
・・・どこの世界でも考えることは変わらないらしい。
「おお、クロース君!君はろくでもない奴だな。だが心の友だ。」
「さすがツバサだぜ。」
俺達は意気投合し、手を取り合った。ガッシリと握手をする。
目指すは難攻不落の大きな岩の壁だ。そびえ立っている。
しかし天井付近だけ仕切りが無くなっているのでチャンスは大いにある。
「ツバサ!あそこまで上るぞ。何があっても最後まで諦めるな。」
「ああ、もちろんだよ。」
「まずは、相手の気配を感じるんだ。」
そう言ってクロースは耳を壁にあてた。女風呂から何やら声が聞こえてくるようだ。俺もワクワクしながら耳を壁につける。
「・す・・・そう・・だ・・」
「人がいるのは間違いないようだが、何を言っているのかまったく分からないな。ツバサ、次のステップだ。まず俺が上るからよく見ておけ!」
「おお、ここは見張っておくから安心してアタックしろ!」
昨日ブックマークしてくださった方ありがとうございます。いつもお礼を言っていますが毎回本気です。
いつの間にかもうすぐ50話ですが、最近書く時間を確保できなくてストックがやばいです。
なんとかせねば・・・




