ホルダー
「・・・・」
誰も話さなくなってしまった。第一王女のリリィは頬を赤くさせニマニマしているが他の者は口をパクパクさせている。
「君はホルダーだというのか。」
「ホルダー?」
「オリジナルスキル持ちの事をホルダーと言うんだよ。その類まれなる力から神の生まれ変わりと呼ばれることもある。人間の歴史上だと数えるぐらいしか確認されていない。国王の私でも人間のホルダーに会うのは初めてだ。」
たしかこの世界で初めてお世話になった冒険者のバノンさんもそんなようなことを言っていた。人間以外だと珍しくないのだろうか?
≪ツバサしゅごい///≫
「俺の話を信じていただけるのでしょうか?」
「ふむ。私はこれでも一応国王なのでな。いろいろな人物と会ってきた。中には私をあざむこうとする者、利用しようとする者、蹴落とそうとする者など嫌と言うほど見てきた。だからこそ君が嘘を吐いているかいないかは、何となく分かるんだよ。君は吐いていない。」
人生経験がなせる業か。修羅場をくぐってきたからこそ逆に柔和な顔が出来るのだろう。
「ツバサ君は一体どのような力を持っているんだい?」
「それは・・・」
「・・・。」
「ふふ、まあよい。そんなことよりこの国に留まるつもりはないのかね?」
「はい。とても気に入っていますが世界中を旅しようと思っています。元の世界に帰る方法を見つけなければなりませんから。」
「そうか。私の側近にでもなってもらいたかったところだが・・・・仕方あるまい。みなの者ツバサ君の事は口外禁止だ。いいな?」
「はっ」
「うむ。ある程度情報の共有も出来たことだし会議はひとまずここまでとする。もしまた新たな情報が手に入ったら今後の対応も含めて協議することとしよう。解散!」
緊張していたが何とか終わった。
ベットでゴロゴロしたいがクレアさんの容体が心配だ。早く行かなくては。
≪ツバサしゅごい///≫
≪はいはい。それよりお見舞いに行くぞ。≫
しかし席を立とうとするとクロース・オーガストが話しかけてきた。
「改めてお礼を言わせてもらうよ。君のおかげで助かった。ありがとう。」
「いや、いいさそんなこと。人を助けるのは当たり前だろ?」
「はは、さすがだな。」
「そんなことないさ。」
「それにしてもまさか君がホルダーだったとはな。通りで強いわけだ。今度剣の稽古でも一緒にやらないか?」
「そうだな。面白そうだ。」
「約束だぞ。また今度落ち着いたら家に招待するよ。」
「ああ。待ってるよ。」
「ふふ。」
「ん?」
「どうやらあそこの姫様がツバサとお話ししたいみたいだぞ。」
「え?」
クロースに言われた方を見てみると白いユリがモジモジしていた。
「あの、ツバサ様。よろしかったら今晩一緒にディナーを食べませんか?」
「え?王女様とディナー・・・?」
「はい///」
「いや、しかし・・・クレアさんの容体が心配ですし誘拐されたバニラちゃんとロビンも心配だしな・・・・。」
「・・・そうですか・・・」
うむ。しょんぼりしてしまった。
「それなら心配あるまい。ギルドの受付嬢ははこの城で治療されているし、双子も家族ともどもこの城に招待すればよいではないか。」
「お父様///」
「え?」
「それともこんなにかわいい私の娘のお誘いを君は断るのかね?私だったら心が痛んでそんなことは出来ないがね。」
なんだこの国王。キャラ変わってねーか?ただの権力を持った親バカじゃないか。
「・・・そういうことでしたらご一緒させていただければと思います。」
「うむ。よろしい。」
俺の返事を聞いて国王は満足げな表情だ。
「そうと決まれば、オーガスト家お主たちも参加するよな?」
「はっ」
「今夜はちょっとしたパーティーにしよう。」
「あの、オレそれまでクレアさんの様子を見ておきたいんですがよろしいでしょうか?」
「ああ、もちろんだ。とりあえず客室を一部屋用意しよう。体を休めたいときはそこを使うといい。リリィ、案内して差し上げなさい。」
「はい、お父様。」
・・・親子の連係プレイがすごい。
連れられてやってきたのは、これまた高級な造りの部屋だった。キングサイズのベットも小さく見えるぐらい広い。壁には国王の肖像画が飾られている。
「ここを自由に使ってくださって大丈夫です。あそこのベルを鳴らすとメイドがいつでも駆けつけてまいりますのでなにかありましたら鳴らしてください。」
「ありがとうございます。」
「それではさっそくクレアさんのところに行きますか?」
「そうですね。どこにいるのでしょうか?」
「私が案内しますわ。ついてきてください。」
「はい。お願いします。」
「あの・・・ツバサ様、今日のディナー迷惑じゃなかったでしょうか?ごめんなさい。お父様は私のことになると周りが見えなくなってしまいますの・・・。」
首を45°傾け、不安げな表情で聞いてくる。本当に白いユリのようだ。上品でどこかに奥ゆかしさも感じられる。けしからん可愛さだ。
「迷惑なんてとんでもないです。むしろ光栄ですよ。ただ、あまりそういったものに慣れておりませんので緊張してしまいます。」
「そう言っていただけて嬉しいです。出来る限り私がサポートいたしますわ。」
王女様にサポートされても違う意味で緊張するんだが・・・
「ああ、もう着きましたわ。あの部屋です。」
コンコン。
「リリィです。ツバサ様をお連れしました。入っても大丈夫ですか?」
「王女様!はい。どうぞお入りください。」
部屋に入るとベットにクレアさんが寝かされていた。まだ意識は回復していないようだ。両隣に女性の治癒士が立っている。
「冒険者のツバサと申します。クレアさんの容体はいかがでしょうか?」
「現状出来る限りのことはいたしております。しかしいつ目覚めるかは私どもでも分かりません。何か喋りかけてあげてください。反応があるかもしれません。私どもは外に出ておりますので、何かありましたらお呼びください。」
「はい、ありがとうございます。」
ただ眠っているだけのように見えるが、、、
「クレアさん!ツバサです。クレアさんは無事助かりましたよ!だから安心して戻ってきてください。この国の王女様もクレアさんの事心配してますよ。」
彼女の横に腰かけそっと手を握った。なんと細い腕だろうか。俺が本気で握ったら折れてしまいそうだ。
この華奢な体で今まで1人で頑張ってきたのか。体にある傷跡のせいで男性と付き合うこともなく・・・・
あの秘密の部屋にある日記を読まなければ本当の彼女を知る事は無かった。
だが彼女からしたら見られたくない物だっただろう。目を覚ましたら謝っておかなくてはならない。
「反応がありませんね。」
「はい・・・そうだ、音楽を聴かせてみましょう。」
盗賊のアジトで手に入れたオルゴールを体から取り出した。目の前に王女様がいるが、俺がオリジナルスキル持ちだと知っているので今更隠す必要もない。
「そのような魔法を使えるなんて・・・・」
「王女様、口が開いてますよ?」
驚く王女様を尻目にオルゴールのぜんまいを回した。
すると綺麗な音色を奏で始めた。もちろんこちらの世界の曲は知らないが名曲?なのだろう。
知らんけど。
「ん?どうかされましたか?王女様?」
オルゴールの音色を聞いた瞬間、王女様の顔がより驚きの表情に変わった。目は見開かれ眉は吊り上っている。
「ツバサ様!なぜのそのオルゴールを?」
「これは盗賊のアジトで回収したんですよ。なかなか高そうな装飾が施されていたので高く売れるのではないかと思いまして。」
「それは・・・もともと私が持っていたものです。5歳の誕生日に母から頂いたものなのですが数か月前に前に盗まれてしまったのです。」
「え!?このオルゴールが?」
「はい。」
「そういうことでしたらもちろん王女様にお返ししますよ。」
「ありがとうございます。・・・・」
モジモジ。
「ん?どうかされましたか?」
「・・・・あのもしかして・・他にも何かピンク色の物を見つけたりしましたか?」
「ピンク色・・・・ああ、残念ながらピンク色と言えば手錠ぐらいしかありませんでしたよ。」
「・・・・。」
「・・・・え?ピンク色の手錠ってまさか王女様の・・・・??」
昨日ブックマークしてくださった方ありがとうございます!日々感謝です。
ホルダーとか響きカッコいいですよね。笑
藤井聡太君ってもう7段だったんですね。早くてついていけません。




