王女様
「え?」
「ふふ。私リリィです。覚えておられませんか?」
翼が顔を上げると白いユリのように綺麗な女性が微笑んでいた。
「・・・え?なぜここに??」
バニラちゃんとキャロット専門店に行った時に手がぶつかった女性だ。
「はっはっは。リリィは私の娘だよ。」
「国王様の娘・・・・ということは王女様!?」
「はい。驚かしてしまってすみませんでした。私の本名はリリィ・フォードです。この国の第一王女です。」
アワアワ。
開いた口が塞がらない。なぜ第一王女様があのようなところに1人で・・・
「ツバサ様に買っていただいたキーホルダーとてもかわいいです///」
「それはヨカッタデス。」
・・・王女様ならキーホルダーどころか店ごと買えるじゃねーか。
「私の娘はお忍びで街に繰り出すのが好きでな。まあもちろん近くに護衛はいるんだが。」
「そうでゴザイマシタカ。」
「そう固くならんでもよい。リリィから君の話を聞いてな。どのような人物か気になっておったのだが、ちょうど城に来たというのでな。関係者を集めて事件の話をするところだったので君にも参加してもらおうと思ってな。」
むむむ。なんだか大ごとになっていく気がする。
その時、王の間の扉が開き男が2人入ってきた。
1人は貴族で兵士でもあるクロース・オーガストだ。盗賊の洞窟で俺が助けだした人物だ。
そしてもう1人は中年の男性だ。黒く日焼けし凛々しさが感じられる。身につけている鎧も国の紋章が刻まれ、一目で歴戦の猛者であることが窺える。間違いなくこちらの世界に来てから1番の実力者だろう。もしかしたらギルド長なら張り合えるかもしれないが、、、
「陛下、アルフォンス・オーガスト並びにクロース・オーガストただ今参りました。」
「よい、面を上げよ。」
「はっ」
「これであとは冒険者ギルドのジゼルだけですな。」
国王の横に立っていた年配の男性が口を開いた。おそらく国の重鎮だろう。
「先に会議室に行こうか。そのうちジゼルも来るだろう。」
「はっ!」
よく分からないまま細長い円卓が置かれた部屋に連れて行かれた。天井には豪華なシャンデリアが飾られている。
「大丈夫ですかツバサ様?」
「え?ええ。ええ。もう何が何だか・・・」
「そういう時は深呼吸ですよ。」
「はい。」
彼女の甘い吐息が顔にかかる。何も役立つアドバイスではないがかわいいので採用!
パコーン!
「イテっ」
≪おい、アリスいきなり何するんだよ!≫
≪なんとなく出番だと思った。≫
≪・・・・。≫
鋭い奴だ。
「どうされたんですか?」
「いや・・・急にたんこぶができまして・・・」
「まあ、どこですか?私が癒して差し上げます。」
「いやいや、そしたらもう一個増えそうなので・・・」
「?」
「オホン。イチャつくのはあとにしなさい。」
・・・国王様・・あとならいいのですか??
「す、すいませんそんなつもりは・・・」
「よいよい。それでは急遽、冒険者のツバサ君も参加することになったので軽く自己紹介でもしておこうか。まず私はこの国の91代目国王トム・フォードだ。そして横にいるのが宰相のマケイン。その横がトリンドル王国騎士団副団長のアルフォンス・オーガスト、その息子のクロース・オーガストだ。リリィとギルド長のジゼルについての紹介はいらないだろうからこのぐらいか。」
うむ。場違いすぎてよく分からない。よそでやって欲しい。
早く返りたい。
そんなことを考えているとゴリゴリの大男が入ってきた。ギルド長のジゼルだ。
「失礼いたします!遅れてしまい申し訳ありません。急遽新たな犯人が見つかったということで、対応にあたっておりました。」
相変わらずいかついが、国王の前だといささか威厳さが無くなってしまうようだ。
「よいよい。分かっておる。これで役者はそろったな。ジゼルもそこに座ってくれ。」
「はっ」
ギルド長と視線が合う。俺を発見して少し驚いたようだ。
「さて、今回の宿屋の双子誘拐事件だが、コケッコー国のチキン公爵が関わっていたことが判明しているので、事実関係をハッキリさせなければならない。そこで今まで分かっていることをまとめると、チキン公爵が盗賊の犯行を装い誘拐。双子を手に入れた後、証拠隠滅と罪をなすりつけるために盗賊どもを討伐しようとした。しかし、そこにいるツバサ君に敗れ現在にいたる。なお盗賊の協力者であり街中で誘拐を実行したのが先ほど捕まった冒険者のケベックだな?コヤツは同時に受付嬢のクレアという女性を誘拐しておった。」
「なぜチキン公爵は双子の誘拐などしたのでしょうか?」
「それはだな・・・まだ尋問の最中なので不確定の情報だが・・・虹の国の姫様に関係があるのではと指摘されておる。」
「エルフの国の姫様ですと??その話は本当だったのですか?」
「そうだ。知ってのとおり絶世の美女である姫は結婚適齢期になり世界各国より求婚の申し出があるそうだ。その中の1人がチキン公爵なわけだが。噂によると姫は何かを集めているらしい。その何かがあの双子にあったのかもしれん。」
「なるほど。チキン公爵ならどんな手を使ってでも姫と結婚しようとするでしょうな。」
「はた迷惑な奴らじゃ。」
「陛下、新たな情報があるのですがよろしいでしょうか?」
「なんだジゼル?」
「ケベックにはもう1人共犯がおりました。それはギルドの№2受付嬢のリザでございます。」
「え?リザさんが??」
思わず声が出てしまった。そんな馬鹿な・・・ちょっと前まで何食わぬ顔で働いていたじゃないか・・・
「そうだ。ケベックが捕まりクレアの潔白が伝わると自分から白状した。どうやら№1のクレアが邪魔で仕方なかったらしい。コルバー商会を語りクレアを呼び出したのもリザだ。」
「そんな・・・」
「彼女の話によると、ケベックはクレアに対して異常なほど執着していたらしい。そして今回の話を持ちかけられたと。」
「なるほど、つまり両者の利害が一致し監禁にいたったというわけか。本当に無事で良かった。改めてツバサ君にはお礼を言わなければな。」
「お礼という意味なら私たち親子も君にお礼が言いたい。息子のクロースを助けてくれてどうもありがとう。」
「いえ・・・全部ただの偶然ですので・・・」
「まあ、ツバサ様はとても謙虚なのですね。」
「いや・・・」
「しかし君は一体何者なんだね?これでも私の息子は若手の中では腕が立つ方だ。見たところ息子とそんなに年齢も変わらないようだがクロースが手も足も出なかった盗賊のお頭を倒してしまったらしいね。それにケベックも倒している。今回の事件は君がほとんど解決したようなものだ。ジゼル?彼は冒険者ギルドの秘密兵器なのか?」
「いや、正直俺も驚いているところだ。。こないだ冒険者になったばかりの新人とは思えない。」
「こないだだと?」
「ああ、つい先日Fランク冒険者として登録したばかりだ。」
「なに!?」
「まあ、さすがツバサ様///」
やばい、話の方向が俺に向いてきてしまった。
「ふむ。ツバサ君。どうなんだね?リリィの話によると心の優しい青年のようだが?それにその外見、まるで絵本の中から現れたかのような顔立ち。娘の婿として迎えられるかどうか親として~~~ゴニョゴニョ。」
最後の方は何言ってるか分からなかったが・・・・・・どうしよう。王様相手に嘘を吐くわけにもいかない
≪アリス先生?どうしたらいいかな?≫
≪ここにいる人たちはツバサの事を利用しようとしたりしないんじゃない?それに今のツバサなら勝つことは出来なくても逃げることなら出来るんじゃない?≫
≪う~ん、逃げるのも無理かな。副団長のアルフォンスさん相手じゃスピードでも負けるよ絶対。≫
≪そうかな。≫
≪うん。でも俺の事を利用しなさそうという意味では賛成かな。≫
「分かりました。しかし全てはここだけの話に留めてもらえると約束してもらえますか?そして私の身の安全は保障してもらいたいです。」
「つまり、それぐらいの内容の話だと?」
「そうかもしれません。」
「いいだろう。他の者もいいな?」
「はっもちろんでございます。」
「ありがとうございます。」
ふう~。
「・・・俺はこの世界の人間ではありません。いつの間にか異世界より転移してきました。」
「!?」
「そしてオリジナルスキルを持っています。冒険者になったのは、もちろんお金を稼ぐためですが、世界中を旅して元の世界に帰る方法を見つけるためでもあります。」
「なんと!?異世界人だと!?そしてオリジナルスキルだと!?」
「まあ、ツバサ様は本当に絵本の世界からやって来たのですね///」
「そんな話聞いたことが無いが・・・まさか・・・」
昨日ブックマークしてくださった方ありがとうございます!嬉しかったです!!
第一章も少し終わりが見えてきました。小説のタイトルにハーレムって入れた方が良いか悩みますね。というか入れたいんですけど万が一書籍化したら恥ずかしいので保留です。笑
・・・しないから大丈夫とか言わないでください・・・・分かってますから・・・




