ヒップスパイダー
初めて1ヶ月ですが昨日10000PVを達成しました。ありがとうございます!
どうしたらいいのだろうか?今ある情報を総合的に考えるとクレアさんが怪しい。盗賊の仲間とは考えにくいから、売り払った犯人と考えるのが妥当か?
・・・いや、まだ決めつけるのは時期尚早か。
とりあえずバニラちゃんとロビンを救わなければならない。
盗賊の目撃証言があったエリアを聞きだし急いで街を飛び出した。こうなったらなりふり構っていられない。全力で街道を走りながらカードからスライムのロマン、ゴブリンのグリンを呼び出す。
≪緊急事態だ!ウサギの獣人のバニラちゃんとロビンが盗賊に捕まっている可能性が高い。悪いが全員散らばって捜索する。何かあったらすぐにテレパシーで知らせてくれ。≫
≪了解っす!≫
≪僕も・・分かったです・・≫
≪私が見つけるわ!≫
気配探知と夜目を駆使して捜索する。
ハア、ハア・・・どこだ、どこにいるんだ?早く見つけなければ。
すると視界の隅に松明を持った動く人影を見つけた。5人ぐらいいるようだ。盗賊か!?
細心の注意を払いながら全力で近づく。対人戦闘の経験が無いので、手加減していたらやられてしまう可能性もある。
「誰だ!?」
思ったよりも早く気付かれてしまった。まだ若い男の声だ。返事をするべきかどうか判断に迷う。どうせ存在がバレているなら奇襲にもならないか。
「そちらこそ誰だ?」
「私たちはトリンドル王国の兵士だ。行方不明になった双子を捜索している。」
・・・信用してもいいのだろうか?
「俺は冒険者のツバサだ。同じく行方不明になった双子を捜索している。」
「そうか、ならばお互いに3,2,1で武器を地面に置くというのでどうだ?」
「分かった、それでいい。」
「3」
「2」
緊張が高まる。盗賊が兵士に成りすまし捜索隊を排除しようとしている可能性もある。
「1」
目線をしっかりと合わせたままゆっくりと武器を地面に置く。瞬きすら出来ぬ緊張感が漂う。
「0」
・・・・・何も起こらない。もちろん油断したところを攻撃される可能性もあるが、ひとまず本物と思ってもいいようだ。
俺達はお互いに近づき顔を確認する。相手方も安堵している表情だ。全部で5人。男が3人、女が2人の若い兵士達だ。
「かなりのスピードでこちらに近づいてくるから盗賊かと思ったよ。」
「ふふ、それはこちらのセリフだよ。しかもそっちは5人もいるじゃないか。だから油断したらやられると思ったんだ。」
「はは、まぁお互い様だな。俺はクロース・オーガストだ。一応貴族だが今はただの一兵士だから気を遣わないでくれ。それでこちらの男2人は小さなころから俺の護衛として、友として一緒にいてくれるアンソニーとアルだ。」
「私はメイよ。こっちにいるのがターナ。」
「そうか、俺は先ほども言ったが冒険者のツバサだ。ランクはEだ。」
「Eランク?本当にEランクなのかい?先ほどの気迫は新人が出せるものではなかったように感じたが。」
「必死だったんだよ笑。そんなところで嘘はつかないさ。」
「それもそうか。」
「ところでこの辺に盗賊か双子の痕跡はあったかい?」
「いや、今のところまだ何も分かっていない。」
「そうか、俺もまだ何も分かっていないから立ち話もこのぐらいにして捜索を続けないとな。」
「そうだな、俺達も絶対見つけ出してあげたいと思ってる。ツバサも気を付けてな。」
「ありがとう、そちらも気を付けて。じゃあ行くよ。」
クロース・オーガストか。貴族なのにチキン公爵のように威張っていなくて好感が持てる。この国はやはり先進的なようだ。それに同世代ということもあって、もう少し関わりを持つ機会があれば友達になれそうだ。
それから30分ほど森をさまよった。まだ手がかりは得られない。焦りばかりが増す。すると今まで出会ったことのない大きなクモ型モンスターに遭遇した。
ここだけの話俺は虫が大嫌いだ。視界に入るだけで寒気がする。生理的にムリだ。
日本にいるレベルのクモでも無理なのに、目の前のコイツは体高が俺の腰まである。しかも足がワサワサしている。
絶句し固まってしまった。頭では動かなければいけないと分かっているが体が動かない。無理に動こうとすると腰がぬけてしまう。
クモはチャンスと思ったのかケツ?らしき部分から糸を飛ばしてきた。あまりの気持ち悪さに俺はそこで意識を失った。
♢
プラーン、プラーン
・・・・・うっ・・痛って~
頭がクラクラする。
・・・ここはどこだ?なぜユラユラしているんだ?
ゆっくりと目を開ける。すると白い糸でグルグル巻きにされ、逆さにぶら下げられていた。しかも相当高い木の上だ。
だんだんと思い出してきた。あのクモに敗北したことを。
俺を捕えているこの糸もアイツのケツから出されたものだと思うと体中がかゆくなる。差し詰め今の俺はアイツの食糧ということか。
しかしモンスターに敗北して生きていただけでも儲けもんだろう。もしアイツのお腹が減っていたらその場で食われて死んでいてもおかしくなかった。あのクモが戻ってくる前に脱出しなければいけない。
それから糸を引きちぎろうと頑張ってみた。しかし、ちぎれないどころか動こうと思っても全く動けない。カードを出そうにも上手く魔力を込めることが出来ない。
どうしたらいいんだ?バニラちゃん達は無事発見されたのだろうか?
どれだけの時間ぶら下がっているのか分からないがこの体勢は頭に血が上る。
ロマン達に助けを求めるか?いやいやクモの気持ち悪さに気絶して敗北したなんて言ったら幻滅されてしまう。
それからしばらく力の限りもがいた。
・・・やばい、とてつもなくやばい。なんだかトイレに行きたくなってきた。もしこのまま逆さ状態で漏らしたら大惨事だ。
うっうっ何たる仕打ちだろうか。
もう楽になろう、俺は頑張ったんだと自分に言い聞かせていると、なにやら違和感を感じた。
ん?
ふと木の下を見ると黒ずくめの人物が立っている。
こっちを見上げているぞ・・・黒ずくめってどこかで聞いたような・・・もしかして連れ去りの犯人か?いや犯人かは分からないんだったか。
するとその人物は軽やかに木を登ってきた。とてつもなくしなやかな動きだ。助けてくれるならこの際誰でもいい。
「すいません、助けてもらってもいいですか?」
「・・・・。」
反応が無い。黒い布で顔を覆っているので表情を窺い知ることも出来ない。唯一目だけ出しているがそれだけでは何も分からない。
・・・不気味なんですけど。殺されてしまうのだろうか?
「あなた誰ですか?というか犯人ですか??」
「・・・・。」
黒ずくめの人物は、無言のまま手に魔力を込め始めた。
「あ、あ、待って。俺を殺したら世界中の女の子が泣いてしまいます。」
手が近づいてくる。
「あ、待って今のウソ。ウソだから。あ、あああ~~~~~あ?」
黒ずくめの手が糸に触れた。するとその部分が溶け出しみるみるうちに体に自由が戻ってきた。外側からの魔力に極端に弱いらしい。
・・・助けてくれたのか・・・
「ありがとうございます。おかげで命拾いしました。これから兄貴と呼ばせてください!」
「・・・・。」
喋れない人なんだろうか?まあ世の中にはいろんな人が居るからあえてツッコむところでもないだろう。
最後は自力で脱出すると、黒ずくめの兄貴の後に付いて高い木から地面に降りた。
ホっとしたのも束の間、ガサガサと何かが近づいてきた。クモだ。食料が脱走したのを嗅ぎつけてきたのか。まったく厄介な奴だ。
だが今度は簡単にやられるわけにはいかない。俺を食料にしようとしたことを後悔させてやる。
無詠唱でウォーターボールを発動させる。
手の平から通常の2倍くらいの大きさの水の球が飛び出していく。当然のように直撃しビチョビチョになってひっくり返った。それがなんともまあ俺にとっては気持ち悪い光景なんだが・・・どんなもんだ。
「え?」
それを見ていた黒ずくめの兄貴から声が発せられた。男性では出せないような高い声だ。
「え?」
今度はその声を聴いて俺から驚きの声が出る。今の声女性か!?
黒ずくめの兄貴を凝視してみる。てっきり男性だとばかり思っていたが、、、、そういえばなんだか華奢な気がする。う~む、これは本当に女性かもしれない。
すると居心地が悪くなったのか、逃げるようにどこかに消えてしまった。一体何者だったのだろうか?
黒ずくめの女性?がいなくなったので、クモに向き直る。
倒してしまった方が良いのか、それとも・・・スキルを得た方が良いのか。正直虫がカードになっているのもイヤなんだが・・・・
仕方あるまい。カード化しよう。
昨日ブックマークしてくださった方ありがとうございます!嬉しいです。
ちなみに作者も虫が苦手です。好きな方ごめんなさい。




