秘密の儀式
ドアを開けると、細長い特徴的な耳をした人影がものすごい跳躍力でダイブしてきた。さすがウサギさんだ。
「えへへへへ、ツバサお兄ちゃんおかえりなさい///」
「うん、ただいま。」
俺の帰りを待っていてくれたのか。自然と顔がニヤけてしまう。なんてかわいい妹ができたのだろう。
お兄ちゃん嬉しい///
うふふ。
こんなふうに出迎えてくれるなんて日本で飼っていたアホ犬以来だ。おっと失礼。バニラちゃんとアホ犬を一緒にしてはいけないな。
頭を撫でてやると目を細めて気持ちよさそうにする。手を止めると、もっとしろというように上目使いで頭を出してくる。
けしからん、実にけしからん。天然でこの仕草をするなんて。だが癒される、実に癒される。存在そのものがマイナスイオンだ。
しばらく頭を撫でてやっていると、俺の耳元でコソコソ話し始めた。
「ねえねえ、今日の朝言ったこと覚えてる?」
「もちろんだよ!今日も一緒に寝るって話でしょ?」
「うん!」
ガタン!
「コラ!!なに気安くバニラ姉に触ってんだ!離れろケダモノ!!」
「おっと、弟君ごめんよ。」
「今日も泊まるのか、いいか?昨日も言ったけどちょっと色男だからってバニラ姉をたぶらかすんじゃないピョン!」
その言葉を聞いてバニラちゃんが頬をプクっとさせた。
「もう!ロビン邪魔しないで!!」
「え?」
「アッチいってて!」
「そん・・な、俺はただ・・・」
相変わらず弟君は空回りしている。
「ツバサお兄ちゃんロビンのことなんて気にしないでね。」
「いいのか?」
「うん。」
「そっか、ならそうさせてもらうけど、バニラちゃんはかわいいから弟君の気持ちも分かるよ。」
「え?かわいい??」
「そうだよ。妹が出来たみたいですごくかわいい。」
「もぉ~えへへへへへ。」
バニラちゃんとだったらこの甘いやり取りを永遠に続けられそうだ。
しかし霊体美少女のアリスさんが睨みをきかせ始めてしまった。
かなり年下であるということと昨日ひどい目にあったということで、バニラちゃんが俺にベタベタするのを黙認していたみたいだが、そろそろ我慢できなくなってきたのだろう。
アリスが暴れ出しても面倒なのでとりあえず部屋に行くことにした。昨日と同じ部屋なので使い勝手などはもう分かっている。
ベットに寝ころびながら今日の出来事を振り返る。今日はゴブリンの棲家を壊滅させたし、こちらの世界の服も買いそろえることが出来た。上出来の1日だった。
カードも厚みが感じられるほどの枚数になっている。
先に俺自身の強化でもしておこうか。
まず、今日の経験から暗闇でも普通に見ることが出来る夜目と気配探知、気配遮断は習得しておかなければならない。
水魔法も生活に使えるので、俺が先に覚えるのが良いだろう。
あとはやはりカッコいいからボスゴブリンが持っていた刀術を習得しよう。
まあ俺についてはこんなところか。
アリスには夜目を追加して気配探知を強化だな。霊体の彼女は覚えられないスキルの方が多いので、ゆっくり成長してもらえれば良い。攻撃を受ける心配も無いし慌てる必要はない。
ハイゴブリンのグリンは、緑が好きみたいなので風魔法を習得してもらうとして、問題はハイスライムのロマンだ。とりあえずステータスを底上げしようと思う。
≪おほん、え~みなさま足元の悪い中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。これより我々秘密結社の集会を開催いたします。はい拍手!≫
≪・・・・≫
≪はい拍手!≫
パチパチ。
≪うむうむ。よろしい。≫
≪ツバサまた・・≫
≪そこ!私語は厳禁!≫
オホン!
≪それではまずこの秘密結社のマスターである私、黒木翼の強化からさせてもらいます。≫
人間:黒木翼:冒険者:レベル10
体力 48→72
魔力 132→164
攻撃力 38→69
防御力 33→62
素早さ 41→65
オリジナルスキル:カードマジック
スキル:剣術レベル1、刀術レベル1、気配探知レベル1、気配遮断レベル1、夜目
ファイアーボール、ウォーターボール
≪続いて謎の霊体美少女アリス!一体いつからその姿になってしまったのか?それは誰にも分かりません。しかしその雪のように透き通った肌にスっとした鼻筋、見る物を吸い込む瞳、まさに完璧な美少女!≫
≪もうツバサったら///≫
≪だがその中身はまるでお子ちゃま。加入したばかりのロマン殺人未遂事件とグリン精神破壊事件を引き起こした張本人。≫
≪ふん。≫
合成!
≪あ、あ、待って。すごい、、、体が、、、アツい。≫
≪待ちません。ステータスはほぼ全て???なので割愛します。現在、気配探知レベル2と夜目のスキルのみ表示されております。≫
ふむふむ。
合成を終えたアリスは、フワフワしてボーっとしている。
≪ツバサしゅごい///≫
≪もっとして///≫
≪また今度な。≫
≪うん。≫
≪え~続きましてスライムのロマンです。生まれながらの弟分気質。ただのスライムだったのに今ではここまで強くなりました。彼の夢はゴットスライムになることだそうです。もしかしたら伸びしろ№1≫
≪おいっす!≫
スーパースライム:ランクD:レベル1
体力 15→23
魔力 14→22
攻撃力 17→25
防御力 15→21
素早さ 22→30
スキル 亜空間接続レベル2、硬化、毒耐性、麻痺耐性、眠気耐性
≪マスター!オレっち強くなったっす。≫
≪おお、夢に一歩近づいたな。≫
≪はいっす!≫
うむ。
≪最後になりました。ゴブリンのグリンです。オドオド、キョロキョロしておりますがそれもご愛嬌。彼は見た目で損をすることもありますが、普段から人一倍体臭には気を使って生活しています。森の中では暇さえあれば常に葉っぱを体にこすりつける用心さ。ステータスはこちら!≫
≪ボク・・ファッションリーダー・・になる。≫
スーパーゴブリン:ランクD:レベル1
体力 18→25
魔力 16→24
攻撃力 20→28
防御力 17→23
素早さ 15→20
スキル 剣術レベル1、棒術レベル1、風魔法レベル1、夜目、毒耐性、麻痺耐性、眠気耐性
≪以上で我々秘密結社の集会を終了します。では解散!≫
うむうむ。
ノリで強化していたが、スライムのロマンとゴブリンのグリンはそれぞれ進化して、スーパースライムとスーパーゴブリンになったみたいだ。
両方とも体が一回り大きくなり精悍な顔つきになった。
それにロマンは、カードで習得していない硬化というスキルを覚えている。進化による副産物か。
2人とも今回の強化で、そこら辺の新人兵士と同じくらいかちょっと強いぐらいになっただろう。
俺にいたっては、ステータスの数値だけ考えれば中堅一歩手前といったところか。実践ではこれにカードが加わるのでそこそこの強さになったはずだ。
強化はこれでいいとして、秘密結社(仮)の名前をどうしようか?
≪みんな!秘密結社の名前何が良い?≫
≪スライム軍団っす。≫
≪ツバサラブ。≫
≪フラワースメル・・・です。≫
≪よし!全部却下だ!≫
考えるのはいったん終わりにしよう。名前については保留だ。
「そろそろ夕ご飯の時間だから食堂に行こうかと思ってるがアリスはついてくるか?」
「ん~どうせ食べないから待ってる。」
「そうか、じゃあ俺は行ってくるから待っててくれ。」
「うん。」
食堂に行くと他の宿泊客たちもちょうど集まってきた。みんなお腹がペコペコらしい。
適当に空いてる席についてボーっとしていると、バニラちゃんが食事の配膳を始めた。一生懸命なのが微笑ましい。まさに看板娘だ。
今日のご飯はなんだろうか?
「ツバサお兄ちゃん、お待たせしました。今日は新鮮な魚定食だよ。フライにしてあるの。」
「おお、とっても美味しそうだね。俺魚も大好きなんだ。」
「ふふ、いっぱい食べてね。じゃあ私まだお仕事あるからまた後でね。あ、それと他の人には内緒だけどお兄ちゃんのだけバニラ特製だよ。」
「そっか、ありがとう!なんだか他の人に悪い気がするけど喜んで食べさせてもらうよ。ちなみに弟のロビン君は今いないのかい?」
「ロビンはパパと一緒にお風呂を作ってるよ。」
「お風呂!?」
「うん。人手が足りないから弟も手伝ってるの。」
「そうなんだ。大変そうだね。」
「まぁね。でもお風呂が出来たらお客さんもっと増えると思うし、、、、、というかご飯冷めちゃうよ。」
「あぁそうだね、いただきます!」
うむうむ。今日もおいしいご飯だ。
昨日ブックマークしてくださった方ありがとうございます。みなさんの応援のおかげでやる気でます。
更新時間なんですけど、20時頃って逆にみなさん忙しいですかね??初めての作品ですしまだまだ有名な小説でもないので、面白い面白くない以前に、まず知ってもらうとこから始めないといけないんですが・・・難しいですね。SNSとか活用するのかな・・・う~ん。
見つけて読んでくださっているみなさん。物好きですね。笑
ありがとうございます!




