トリンドル王国
トリンドル王国王都、この街は人口100万人を擁するこの国の中枢である。
1つの都市でこれだけの人口を擁する国は他を見渡してもなかなかない。
世界各国より輸入された物、食品が溢れ返り毎日お祭りのように人がごった返している。
正門から城まで大きなメインストリートが一直線に続き,碁盤の目のように街並みは整備されている。
大まかに庶民エリア、貴族エリアと別れ、一番奥に王の住む城が構えられている。
しかしながら、他の国では考えられぬぐらい人々にも人権が認められ、王の城で働く者たちの半数程度は公平な試験によって選抜される。身分制度は一部で残っている程度である。
貴族たちも、決して血筋だけの無能というわけではない。競争原理が働く国だからこそ、親は子供に英才教育を施し、優秀な庶民に引けを取らないように育て上げる。そうして名門を名門足らしめるのだ。
また人間だけでなく獣人、竜人、ドワーフなど多くの人種が共存する理想的な国家ともいえる。
翼は正門からメインストリートに足を踏み入れていた。
出店が所狭しと並び、さまざまな声が飛び交っている。
今は夕方だからだろうか、晩御飯に向けて食材を買っている人が多いようだ。
≪アリス!何だか活気に溢れていていい街だな!!≫
≪うん!こんなの初めて。≫
≪お、おう、そりゃ良かった。今日はこれから冒険者ギルドに登録しに行こう!その後は疲れたから早いとこ宿に行きたいんだけどいいかな?≫
≪いいよ。≫
≪よし、じゃあそうしよう!≫
しばらく道沿いに進むと一際大きな建物が建っていた。
外まで人の笑い声が漏れてくる。
≪ここみたいだ。入るよ?≫
≪うん。≫
緊張しながら扉を開いた。
何だここは!?
ジョッキを片手に酒の飲み比べをする者、ボディビルをする者、歌を熱唱する者、、、、何でもありのサーカス軍団?が目に飛び込んできた。
≪アリスここで合ってるよな?冒険者ギルドって。≫
≪・・・うん。≫
中が騒がしすぎるためか、俺に注目する者はほとんどいなかった。
しかし仕事中の受付嬢たちは違った。
凝視してくる。仕事熱心なことだ。
しかし
・・・目力がすごい。それに心なしか頬をポット赤くさせている。
なんだか居心地が悪い。
気を取り直し、何人かいる受付嬢のうちもちろん1番美人さんのところに歩を進めた。
といっても全員美人なのでただの好みの問題なのだが。
なるべく自然に、とりあえず適当に進んだ先にいた受付嬢が、たまたまあなたでした、というかんじを醸し出しながら話しかけた。
霊体美少女のアリスからなにやら殺気が出ているような気もするがそんなのスルーだ。
「あの冒険者として登録したいんですけど、、、、」
「はい、私クレアです。22歳、独身です。」
「え?はぁ、そうですか、、、」
「あなた様のお名前はなんですか?」
「黒木翼です。」
「ああ、なんと尊いお名前、私を迎えに来てくれたのですね?」
「え?いや・・・違いますけど。」
「ふふふふ。」
なんだろうこの女性。初対面なんだが??
美人だからこの受付来たけど間違えたか?
≪アリス!殺気を抑えてくれ!≫
≪イヤ。この女危険。≫
≪そこまで言うほど・・・・う~ん、じゃあ早く終わらしてもらおうか。≫
≪うん。≫
「それで冒険者登録したいんですけど、、」
「分かります。分かります。私との結婚生活は冒険者のように波乱万丈の人生になるかもしれない、けどそれでも、どうしても私を妻として登録したいんですね!」
「ダメだこりゃ・・・・・」
その時だった。
顔に傷のある男がこちらに近づいてきた。
「おい、そこのお前、多少色男だからってなに人気№1のクレアちゃんを口説いてんだコノヤロー!!歯食いしばれや!」
ボコっ
いきなり殴られ気を失った。なぜこんなことになってしまうのだろうか?
正門で鳥人間に突き飛ばされ、ギルドで殴られ、、、本当についてない。
薄れゆく意識の中で世の理不尽を感じざるを得なかった。
それからどれぐらいの時間がたったのだろうか?
意識が覚醒してくるとなにやら柔らかいものを枕にして寝ていることが分かった。
しかも頭を撫でられている。アリスだろうか?
うっすらと目を開けると細長い脚が目の前にあった。
おや?アリスではないぞ。
しかもこの程よい弾力のある枕は、女性の太ももだ。
俗にいう膝枕されている。
俺はそのまま寝たふりを続行することにした。
ついでにクンクンしたり寝返りをうったりスリスリしておいた。
ふむふむ、くるしゅうない。
しばらくして、たった今目覚めたような演技をして起き上がった。
膝枕をしてくれていたのは№1受付嬢のクレアさんだった。
やはり喋らなければ誰もが振り返る美人だ。
顔だけでなく細長い脚が男心をくすぐる。
まるでモデルのようだ。
数秒沈黙があった。
「あの、、私、ごめんなさい。私が暴走してしまったせいでツバサ君を巻き込んでしまったわ。」
「えと、まあ終わったことはいいんですけど、、、それより冒険者登録をしたいです。」
「それならツバサ君が寝ている間に済ませておいたわ。あとで冒険者の登録カードを渡すわ。登録料については迷惑料としてこちらが払いますので無料で大丈夫です。」
「それといつ目覚めるのか分からなかったので、私がツバサ君を引き取って看病していたの。だからここは私の家なんだけど、今日はもう遅いからゆっくりしていっていいから。というかこの先私がずっと面倒を見てあげるわ。ご飯も作っておいたから食べる?」
「あ・・・・じゃあいただきます。」
ご飯は嬉しいんだが、どさくさに紛れてサラッと怖いこと言ってるぞ。
強制的にヒモにされそう・・・
ここはクレアさんの家なのか。
そういわれるとなんだか部屋全体がほんわかいい香りがする。
置いてある家具のセンスもいい。
だが密室に女性と2人きりなどアリスに何をされるか分かったもんじゃない。
≪アリス!今どこにいるの?≫
≪翼起きたのね。今翼を殴った奴の後をつけてるの。今夜は帰れそうにないわ。≫
・・・・・マジか、てことはクレアさんとこのまま2人きりなのか。
人の家でスライムやゴブリン出すわけにもいかないし。
まずいぞ、少しドキドキしてきた。桜井さん違うんだ、これは浮気じゃない。
ふと窓の外を見ると空は真っ暗になっていた。
なんだか俺は肉食動物に食べられる草食動物の気分だった。
・・・それもまあ嫌いじゃないけど
考え事をしていると、クレアさんがキッチンからおいしそうな料理を運んできた。
おいしそうなニオイに食欲がそそられる。口中によだれが分泌される。
こちらの世界に来てから初めてのまともな食事だ。
「ボテドンのステーキと具だくさんのクレア特製スープよ!」
「おおおっおいしそうです!ホントに食べてもいいんですか?」
「ええ、もちろんよ!ツバサ君のために作ったんだから!!この席に座って!ふふふ。」
「いただきます!」
「あ、ちょっと待って!ツバサ君はまだ安静が必要なんだからジッとしてて。私が食べさせてあげるわ!」
ん・・・うむ、うむ。
自分のペースで食べたいんだが、まあ、仕方ないよな・・・な?
俺がじゃあお願いしますというと、ニヤッと不敵な笑みを浮かべたように見えたが見間違いだろう。
あれはニヤっじゃなくてニッコリだったと思いたい。
「はい、お口開けて。」
う、うおおぉ!そんなに熱くもなさそうだが息をフーフーしてる。
なんとあざとい女だ。けしからん、本当にけしからん女だ。
だが嫌いじゃない。
「アーン。」
「・・・おいしいです。」
なんだこれ、めっちゃ恥ずかしい、、、けど・・・いい。
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