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Elder Gear Online  作者: 御堂 竜座
76/94

75話

三人称視点。

姉弟のやり取りから、塔から撤退するまでの間に入る閑話のようなものです。



 プレイヤーによるテストプレイが始まって二週目。

 話題の作品の一つとして注目された【エギアダルド】は、しかし「不公平だ」という声も、やはり少なからずあった。


 エギアダルドのシステムは極々現実に近い。

 世界各所にリアルタイムで物事が生じては進んでいくこの形式においては、全種類のコンプリート、コレクションという要素に重点を置くことが難しくなってしまう。


 イベントクエストもまたその範疇で、往々にして限定された条件のものは羨望と妬みの対象になる。『一度しか発生しない』と『極高難易度条件でしか挑戦できない』とでは似ているように見えるが、エギアダルドは前者。一度きりということは、見たくとも見ることができない……そういう事態を招いていまう。




 そこに至って、リタ・ハルトマンは『EGO:エギアダルド βtester's App』を用意した。このアプリケーションには、世界観に大きく関わるクエスト発生や通知機能がある。


 アプリケーション上で表示されるほどの重要なイベントにおいてはイベントの発生を通知するにとどまらず、そのカットシーンやイベントを自動的に記録。

 一度しか見ることができない状況を閲覧出来るようにし、一つの映画のように断片的につなぎ合わせるという試みをとっていた。



 『通知:グランクエストオーダー発生。』と、普段とは異なり「緊急通達!」と強調されたテロップが流れていた。

 そのテロップを一通り見ることで、プレイヤーの感情は不満から離れて大きくそちらに流れる。




 「――マジかよ、こんなことになってたのか!」と、プレイヤーの一人がアプリの公共チャット欄に書き込む。


 たった今公開された「映像」を見たプレイヤーは、自身のキャラクターが経験していることそこでようやくすり合わせができた。


 たった今……ディスプレイの中、砂漠の中央に立っているキャラクターの目の前にまさに黒い水晶の塔《、、、、、、》が出現していく。それはそこに限らず、主要なスタート地点に選べる都市の、隣接した初期段階のフィールドほとんどすべてに出現していたのだ。

 ……厳密に言うと『プレイヤーが開始地点に選んだ都市』だが、そこまで把握するには時間がかかる。

 アプリを利用する全てのプレイヤーが『アランたちとナミネ』のやり取りの映像を自分が関われないことに不満げに見て、その顛末が自分たちにも無関係ではないことだったのだと驚き……そして、『製作者』からの通知を見て、挑戦心を煽られることとなる。



『通知:グランクエストオーダー発生。



 依頼者:氷壁都市領主・ダスティン・ロナ・ガブリオレ・シャルスロウ伯爵



 攻略対象:ダンジョン名【黒水晶の煉獄塔《波音》】



・詳細


 依頼驚異度:★★★(緊急)



『……このダンジョン攻略依頼は、諸君らエトランジェ(プレイヤー)がいるであろうすべての地域に出現しているものと報告がある。

 従って、その全ての【黒水晶の煉獄塔】に適応するものとする。


 確認できる情報はただ一つ。敵は、神……その名を騙る、『ナミネ』という邪な存在である。

 それ以外、戦力並びに階層の数、塔の構造、罠の有無……全ては、招待が掴めていない。


 ――また、囚われの猟兵のエルフの一族、その姫が黒き存在に奪われたと報告がある。そちらに関してはギルドの依頼を通じて記録転写魔法メモリアル・ヴィジョンによる情報共有を行ってある。この依頼の末尾に、その記録情報を付随しておくので参照されたし。


 おこがましい話ではあるが、我々人族ではこの驚異には対抗できそうにない。それどころか、未だ身内の勢力争いに活かしてこの機に乗じ相手の戦力を削げないかなどと謀略を企む始末……おなじ人族としてまことに、恥ずかしい限りと言える。



 ――それでも、我々のために戦ってくれるというものがいるのなら。

 彼の忍びのような、エトランジェ《プレイヤー》がほかにもいるというのが真実であると信じる上で、私、ダスティン・ロナ・ガブリオレ・シャルスロウは貴殿らに助力を願う。

 貢献した者には、私の及ぶ限りではあるがそれ相応の報酬は約束しよう。


 力ある、我こそはと名乗る者の力をどうか貸していただきたい……我々のためでなくていい。

 どうか囚われた、我らが隣人たる森の民に救いの手を』



クエスト報酬

 ・100000セル

 ・スキルポイント加算:10

 ・イベントクリア報酬ランダム

 ・?????



 ※このクエストは全体の貢献度によって結果が変動します』



 ――その通達に目を通したプレイヤーたちの反応は様々だろう。

 ある者はこぞって明日からの本攻略のために残された時間を使って準備を入念に。

 ある者は残りの時間が僅かであることを利用して、教皇偵察に。

 ある者は我関せずといった具合に自分のやりたいようにする。


 プレイヤーのとる行動は様々で、時に予測がつかないほど突飛なことをする者もいるだろう。



 ――「作者」の狙いってどこなんだろう?


 ――どう足掻いても悲劇なんじゃ?


 ――ひとえに姫様を救うためクエスト発注とか……伯爵様イケメン過ぎるからばりばり手伝うわ


 ――攻略とかまじめにやらない人もいるだろうし、悲惨な結末しか見えないなー


 ――報酬美味しいから参加しようかなぁ。別に完全クリアしなくてもいいわけだし


 ――ユーザーの中からボスエネミー選出とか大胆過ぎる




 コミュニティチャットの中でも様々な会話が飛び交う。これも人によって千差万別、

 作者の意図を探る者もいれば、先の展開を予測しようとする者もいる。



 書き込みこそしていないが、どうするかは決めているものもいるだろう。


 

 ――悲惨な結末? 不幸な未来? 

 そんなことはない。

 そうだったとしても、絶対に『救う』……そう心を固めるプレイヤーが一人いるこ


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