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機巧人形の異世界譚  作者: 蛹太郎
第1章
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粗鉄の矢

林の中に入った俺達は、ある魔物を探していた。

その名もクイックディアーカモ。

まぁ、名前の通りめっちゃ素早い鹿だ。


平原でよく見かけるこの魔物は、基本的に臆病で、他の魔物なんに襲われると、自身にスピードを上げる魔法をかけ、驚異的なスピードで逃げるらしい。

そしてそのスピードは、木が生える林や森でも失われる事はないという。


討伐方法のテンプレとしては、気付かれない位置から一撃で仕留めるか、魔術で動きを阻害して近接攻撃で倒すかの2択だ。

だが、後者の方はあまりおすすめ出来ないらしい。

クイックディアーカムは、いざ自分の身を守るとなると、魔法で強化した強烈なスピードの突進を仕掛けてくる。

機巧人形オートマタの俺ならいざ知らず、生身の人間が食らったらただじゃ済まないだろうな。


「…という訳で、魔術を使った遠距離攻撃で倒す」

「了解。それでさっきの魔法の練習だったのな」

「ん」

ユリアは俺に返事を返しながらも、その意識は獲物を探し続けている。


凄い集中力だ。そんなに集中しないと見つけられないのだろうか。


というか、俺の試験なんだから俺だってちゃんと探さないと。

とは言っても、森の中に隠れる動物を探すなんてやった事がないからどうすればいいのか分からない。


何か技術とかコツみたいなものがありそうだが、俺には分からないな。

せめて、簡単に見つけられるようになればな…


『個体名:ライトの発案により、ライトの記憶を元にスキルの作成を開始………成功しました。スキル『熱源探知サーマルアイ』を所得しました。』


うぉぉ!?何か急に声がしたと思ったら、スキルを作っただって?!


慌てて俺はステータスを確認してみる。

リストの中には、今しがた作られたスキルが当然のように鎮座していた。


何だこのスキル…熱源探知っていうんだから、生物の熱を感じ取れるようになるのか?


とりあえず物は試し、使ってみる事にした。


「ん…このスキルは無詠唱で使えるのか?言葉が浮かばないな。まぁいいか、『熱源探知サーマルアイ』…おぉ、本当に見える」


使ってみた感想は、そのまんまサーマルゴーグルだ。

FPS何かをやった事がある奴なら分かるだろう。

あの暗闇でも人が見えるようになる道具を着けた状態。

今の俺の視界は正にそんな感じだ。


その能力を使って生き物を探していると……かなり遠くにだが、熱源を見つけた。

シルエットからして、お目当ての鹿のようだ。


ユリアに報告しようとするのと同時に、ユリアも見つけたのかこちらを見た。

お互いに頷くと、俺達は気配を殺して少しずつ獲物に近付いていく……


数十分は経っただろうか。

熱源探知無しでもやっと視認出来るようになった。

途中、熱源探知を切ったらあの鹿がどこにいるのか分からなくなった。


その答えは、奴の体毛の柄にあった。

体毛が緑色なうえ、迷彩のような柄になっているのだ。

なるほど、それでカモフラージュのカモね。

そりゃ簡単に見つけられないわ。


「ライト、もうこれ以上は気付かれる可能性がある。ここが限界」

「分かった、やってみよう」


さて…どんな魔法を使うかな?

そうだなぁ、ハンティングって個人的には矢で獲物を狩るイメージがある。

実際に猟師をやっている人達はショットガンなりライフルなりで撃ち落としてるんだろうから、俺も大概ファンタジー系ラノベの読み過ぎだとは思うがな。

とにかく、俺のイメージに従い矢を飛ばす魔法を使いたい。


属性系の矢を飛ばす魔法がいくつかあるみたいだけど、倒した魔物って食べる訳だろ?

それで味が悪くなったら困るだろうし、どうすればいいかな。


と、いろいろ考えた末たどり着いた答えが魔法で生み出す鉄の矢だ。


属性魔法で味が悪くなるのを気にするぐらいなら、属性魔法を使わなきゃいいんじゃないのか?

という発想だ。


こんな単純な答えにたどり着く事に時間が掛かったのは、属性とか魔法とかの、異世界人を誘惑する素晴らしいものがあったせいだと思う。


さて、何をするか決まったところで早速やってみよう。

頭の中で鉄の矢をイメージする。

重くてあまり飛ばなさそうな気がするが、今回これを発射するのは魔力だ。ある程度重くても問題はない。


「お、きたきた」


早速頭に呪文が浮かんできたので詠唱する。

ん?さっきとは少し雰囲気が違うけど……

ま、いっか。

魔法の仕組みなんて、理論じゃまだ理解してないんだ。呪文なんてそんなもんだろ。


「我は鋼鉄を操りし者。粗鉄よ、我が意のままに姿を変え、眼前の獲物を穿て!『ラフネスアイアン・アロー』!」


詠唱を終えると同時に何かウインドウが出てきたが、今は相手に当てる事に集中していて全く見ていなかった。


宙に魔法陣が1つ浮かび、魔法陣の中から1本の矢が生み出される。

そしてそれは、風切り音を立てながら飛翔し、クイックディアーカモの頭を吹き飛ばした。

飛んでいった矢は、鹿の頭を砕いた時点でそれなりに減速し、木に当たると音を立てて砕け散った。


1発で倒せた事に喜んでいた俺は気付かなかったが、俺の横ではユリアが「造鉄魔法…?!ありえない、そんな事が……」とか色々呟いていた。


早速倒した獲物の所に駆け寄るが……その凄惨な光景に俺は足を止めた。

生き物の頭が吹き飛んでるんだからグロいのも当たり前だ。

車に撥ねられたネコやタヌキの比じゃない。


獲物を倒せたという高揚感は、瞬時に冷めてしまった。

これが現実なのだ。


置いてかれたユリアが遅れて俺のいる所へ辿り着く。

どうやら俺の状態を見て、今どんな心境なのかを察したらしい。


「……生き物を殺すのにはまだ慣れない?」

「まぁ、な……」

「当然。私なんて、初めて狩りをした時は腰を抜かして吐いてしまった。立ってるだけ上等」


とは言っても……やはりこの光景はあまり気持ちのいいものじゃない。

そんな俺にユリアは諭すような口調で言った。


「ライト、いい?私達は生き物を殺し、それを食べて生きてきた。そして、これからもそれは続く。殺した生き物は無駄にしちゃいけない。……分かってくれる?」


ユリアのその言葉が、何故か心にずんと響いた。


「そう、だよな……あぁ、その通りだ」

俺は震える手を伸ばし、ユリアから受け取ったナイフで、鹿の解体を始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


クイックディアーカモの解体をしていたら、いつの間にか日が落ちていた。

慣れない解体だったが、終わる頃にはなんとかそれっぽい事は出来るようになった。

肉は俺が回収し、骨はユリアが集めていた。


「骨なんてどうするんだ?」

「日用品に使えるから、雑貨屋さんに行けば売れる。一応ギルドでも買い取ってくれるけど」

「ギルド?」

「朝に説明した。この町は冒険者稼業が中心。ギルドぐらいあって当然」

「冒険者の話は聞いたが……なるほど、ギルドねぇ」


冒険者になるという話は研究所でされたけど、機巧人形オートマタが冒険者になれるんだろうか?

俺自身、心は人間のつもりだが、周りはどうだか……


「今日は遅い。ギルドには明日行く」

「分かった。とりあえずユリアに従っとくよ」


今日はもう疲れた。肉体的にじゃなく、精神的に。


夕日を背にのんびり歩きながら、研究所に帰ったらゆっくりしたいなぁ、とぼんやり考えた。

閲覧ありがとうございました!

検定勉強しんどいです……

この話を書くのも、一種の息抜きとなりつつあります。


感想、批判など、お待ちしております!

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