異世界転移
ちょっと短いかもしれません(汗)
「どうかしたの?私の顔に何か……あぁ、もしかしてこれか?」
俺が見つめていた意図を察したのか、少女は機械の腕を動かした。
「い、いや……すまない、アンタほどの状態を見たことがなくて……気を悪くしたよな、ごめん」
「いや、いい。そういうのは慣れてる。確かにここまで機巧化が進んでるのは珍しいし」
悪い事をしたとは思ったのだが、彼女は本当に気になっていない様子。
あまりそういう事は気にしないタイプなのだろうか?
「それにしても、アンタはどういう経緯で病院に?俺はテロに巻き込まれてさぁ……大した怪我を負ってないのはラッキーだったけど、散々だったよ、全く……」
「病院…?それが何なのかは私には分からないけど、あなたは瀕死の重症を負っている。培養槽に入れておかないと死んでしまうぐらいには、ギリギリ」
「は……?」
彼女の言葉に、俺は混乱した。
俺が、重症?
「い、いや…冗談はよしてくれよ。だって今だってこうして普通に話せ、て……」
頭を掻こうとした手が視界に入り、動きが止まる。
俺の視界に映った、俺の手と思しきものはーー
マネキンのような、人間のものとは思えない見た目をしていた。
「な、何だ…これ……」
関節部分は、指だけでなく、手首も球体の形になっている。
当然肘も同じ構造だ。
そして肌は、冷たい銀色をしていて、部屋の明かりを鈍く反射して輝いている。
「……っ!」
俺はベッドから跳ねるように飛び降り、鏡を探した。
その時は頭がいっぱいいっぱいで、この建物がどう見ても病院じゃない事なんて、気付きもしなかった。
半分パニックになりながらやっと見つけた鏡に映ったのは、それこそ原型なんて止めてないくらいに機械らしい人形の顔をした俺だった。
「おい……う、嘘だろ……」
信じられない。
どういう事だ?俺が、機械になってる?
先ほどとは打って変わって、覚束無い足取りでベッドのあった部屋に戻る。
そこで、先ほどは視界の関係で見つけられなかった、少女の言っていた培養槽というものを見つけた。
見つけてしまったのだ。
「あ……あぁ……っ」
それを見て、俺は腰を抜かした。
少女の言葉に、嘘偽りは一切無かったのだーー
ボロ雑巾みたいになった、体のあちこちが欠損した俺の体が、不思議な色の液体の中に浮かんでいる。
それを見て、俺は気が遠くなるのを感じた。
とてもじゃないが、見てられない……
俺は流れに任せて、そっと意識を手放したーー
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再び目覚めると、先ほどの少女の他にもう一人増えているのに気付いた。
アイドルやモデルなんて比じゃないぐらいに美しい女性が、少女と一緒にこちらを覗き込んでいたのだ。
「やぁ、初めまして。元気かな?」
「……体調的な意味であれば、問題ないです」
「となると、やっぱ精神的にはダメージ喰らっちゃったかな?まぁそうだよねぇ、立て続けに驚愕の事実を突き付けられたんだからねぇ」
綺麗な女性は、飄々とした様子でかけていた眼鏡の位置を直した。
改めて自分の手を見てみる。
……やっぱり、さっきと同じくマネキンみたいな手だ。
出来れば夢であって欲しかったが、そうもいかないようだ。
「さて、それじゃあ今の君の状況を説明したいんだけど、その前に自己紹介するね!じゃあはい、ユリアちゃん!」
ユリアと呼ばれた先ほどのサイボーグっぽい女の子がこっちを見て会釈をした。
「私の名はユリア。この博士に命を救われて、今は助手をしている。体の機械は博士が作った発明品。それで、この人が……」
「はいはーい!ご紹介に預かりました博士でーすっ!そのまま博士って呼んでねー!」
……博士、アンタの名前は?
そんな顔をしていたのだろう。ユリアがそれを汲み取って小さく呟いた。
「……ごめんなさい、彼女の名前を知りたいだろうけど、教えてくれないの。私も、博士の名前は知らない。」
「あ、そうなの…まぁ、教えてくれないんなら仕方ないか。それじゃあ、俺の名前だな。俺は……」
と、ここで俺は思いとどまった。
いきなり本名教えて良いのか?
助けてくれたんだろうけど、イマイチ状況が飲み込めない。
というかこんなター●ネーターみたいな状態になっている時点で現実味がない。
とりあえず、何か本名じゃない名前を……
「俺は……ライト。ライトって言うんだ」
ライト、というのは俺のあだ名だ。
名前が光だから、そのままの意味でライト。
小学校の頃からずっとこのあだ名だ。
安直だとは思うけど、割と気に入っているのだ。
「ふむ、ライト君ね。よろしく!」
あっ…この名前、名前を書くと死ぬノートの奴と被ってるじゃん……やばい。
いや…大丈夫、きっと大丈夫だ。
俺の予想が正しければ、この名前でも指摘してくる奴はきっといない。
「よし、互いに自己紹介も終わった所だし、それじゃあ状況確認に移るよ!ユリアちゃん!」
「あなたは、私が拾ってきた。博士の実験で、ボディに入ってもらう人が必要だったから。けど、普通の人じゃやってくれないから、戦場で死にかけの人を見つけてきた。戦場では、あなた以外は連れて帰れないぐらい弱ってたり、既に死んでたりしたから。あなたを選んだ理由は、それだけ」
うーん、この様子だと、予想はほとんど間違ってないと思うが…念の為に確認するか。
「戦場?それはどこのだ?」
「…?あなた、兵士じゃないの?見た感じ16、7ぐらいだったから、てっきり兵士かと……まぁいい。あなたを見つけたのは、イルディナという小国。帝国に吸収されるのを拒否して戦争になった所」
なるほど……やはりか。
イルディナなんて国、俺は聞いたことがない。
瀕死の人間の脳か意識を機械に移す謎の技術、聞いたことのない国、日本よりも圧倒的に早い成人扱い
ーーどうやらここは、異世界らしい。
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