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とある高校の365日

雪の日

作者: 照月雫

なぜ私ではないのだろう。その鈍くて重い気持ちが私の胸を締め付ける。


中学一年の時、野中太一に恋をした。彼は賢いから、一所懸命勉強をして少しでも追いつこうとした。高校で生徒会に入って、副会長と会計として近くに居られるようになった。なのになんで……。



「あっ美穂ちゃんーー」



隣にいるのが私じゃないんだろう……。


ちょっと赤くなって野中くんは彼女に話しかける。どんな関係なんだろう。よく一緒にいる。この間は二人で出かけてたって聞いた。やっぱり付き合ってるのかな……。人気のない中庭で二人で仲良く話して居たのだろうか。


嫌なことを考えてしまった。こんなの見たくもないし知りたくもない。


さっさと立ち去ろう。そう思って背を向けた時だった。


「あ! 井城さん!」


彼に呼ばれてしまった。無視するのも不自然なので振り返る。


「じゃあ私帰るから」

「うん。ありがとう」


にこやかに笑って手を振る二人が見えた。なんでこんなもの見せるかなぁ……。


「井城さん?」

「あ、ああ。何?」

「あの……」


野中くんが口ごもる。


さっきあの子と話してた時にはそんなのなかったのに。やっぱり私だから? あの子みたいに優しく笑えないから? 可愛くないから? 素直じゃないから? 愛想がないから?


空が暗くなってきた。雨でも降るのかもしれない。ああ、嫌だなぁ。


「あ、あの!」


顔を背けていたのに気づいて慌てて彼を見た。


「え……?」


野中くんの顔は見たことがないくらい紅く染まっていた。


「これ、貰ってくれる……?」


「え?」


可愛らしく包装された箱が差し出され、戸惑う。


「あの、これって……」


「今日ってほら、クリスマスだから」


「うん」


「うん」


……え? で、これの意味は一体……。


一瞬考えてわかった。クリスマスプレゼント。きっとみんなに配っているのだろう。こういうイベント好きだから。


「別にそんなのいいのに……」


「え?」


「みんなに配ってるんでしょう? 大変じゃない? そういうの」


ああ、またやってしまった。好きな人を否定することしかできないのだろうか。同じことばっかり、馬鹿みたいだ。


「…………えっと」


ちょっとして野中くんがゆっくりと口を開いた。


「"みんな"じゃないよ?」


「え?」


「井城さんの分しか用意してないよ?」


頭にあった可能性が次々消されてゆく。そういうことなのだろうか。


「あの……それって」


「井城さんだけ特別!」


自惚れてもいいのだろうか。


ふわり、と白いものが舞い降りた。いつの間にか降り出した雪が、辺りを優しく包む。


「…………好き」


「え?」


ハッとしたように野中くんが私を見る。


そしてどちらからでもなく微笑んだ。


「井城紫苑さん」

「野中太一くん」




































「「あなたが好きです」」

この度は「雪の日」をお読みいただきありがとうございます。いつもは後書きを入れないのですが、一つお知らせがあるので書かせていただきました。


四月から「渡辺夏月」というユーザ名で活動していたのですが、新年から新しいユーザ名に変わります。新しい名前は「照月雫」です。読み方は「テルツキ シズク」です。


名前は大きく変わりますが、名前に込めた意味や小説に対する思いは変わりません。精一杯頑張っていきますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。

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