大魔王「なぜ人を殺してはいけないのだ?」
「余は大魔王だ」
訪れた旅人の身分を確認するため何者だと問うたら
その旅人が大魔王だと抜かした。
突拍子もない事をいいだす旅人に村の門番は困惑したが
他に入村を待っている者もいない。
ここには暇な門番と暇な少年、そして大魔王を名乗る旅人しかいない。
暇つぶしにちょうどいいと乗ってやることにする。
「大魔王が我が村に何用だ?」
大魔王はそう返されても態度を変えず
「地上制覇の足掛かりにまずこの村を余の支配下に置こうと思ってな」
などとそれらしい事を返してくる。
しばらく問答が続きいい加減飽きてきたところで茶番を終わらせようとした。
「悪いが大魔王に支配されるつもりはない早々に帰られよ」
すると大魔王は
「余の支配を拒むというなら死を持って償ってもらうぞ」
不敵な笑みを浮かべ物騒なことをいいだす。
死を持って償うなど冗談としても笑えない。
「そんな事をしてはいけない」
この茶番を終わらせるつもりはないのか?
門番はいまだ飽きもせず大魔王といいはる旅人に感心する。
そんなことはお構いなしに
「なぜ人を殺してはいけないのだ?」
と大魔王が問う。
「大魔王のお前に死が訪れるのか疑問だか、人は死ぬからだ」
門番が答える。
「なら・・・・・・そういう事か」
何かいいかけてから、飲み込み納得したようだ。
フッと笑い去っていった。
一連のことを見ていた村の少年が門番に問う
「なんであの人は何かいいかけて帰っていったの?」
すると門番は答える
「あの問いを逆にして返そうとすると矛盾するからな
人は死ぬから殺してはいけない。ということは
逆にすると死なない人なら殺していいことになる
でもどうやって死なない人を殺すんだ?」
「なるほど、そういうことか」
少年は納得した。
しかしさらなる疑問が湧いた。
「あの人何しに来たんだろうね?」
「それもそうだな・・・・・・何しに来たんだろうな」
暇がまた戻ってきた。