プロローグ
「拾ったのは、俺。救われたかったんだ」
ーー懺悔ーー
「拾われたのは、俺。救われたんだ」
ーー感謝ーー
得ては失い、失っては得て。夢と現実。
ーー理想は、何処に?
ーーーーーー。
夢を見ている、そうに違いない。
恐ろしい夢だ、白く塵一つ無い空間に黒が広がっていく、インク壺を机にぶちまけたみたいに。黒く黒く、澱んで汚れて息がつまる。
沼にはまった時の様に重く感じる足を動かし、黒く染まり続けるこの空間をあてもなく歩き続ける。
きっと今の俺は亀より遅いだろう。
息がきれる、体が重い、もがいてもがいて前に進めど光は見えない、焦燥する心と重い身体は一致しない
焦るから身体が鈍くなるのか、身体が重いから心は、焦るのか。
黒く黒く
ついに空間は闇に包まれた。
頭上から降る何かが体を濡らす
雨?嫌、違う。
嗅ぎなれた匂い、鉄臭いーー吐き気がする。見えやしないがそれはきっと、どす黒い赤だろう。
鉄臭い雨が降り続ける中歩く、衣服に染み渡たり身体が冷える、凍えてしまいそうだ、肉も心も。
震える、怯える
ついに足がとまってしまった、身体から力が抜け無様に膝をつく。
黒く黒く
こんな世界でただ一人
見える物はなにもないーーーーー。