象徴詩『溺愛』
白磁の堤防
固定された海風の化石
純粋持続
幽暗な月まで届く透明な階段
無菌室に垂れる吊り糸
針先には螺鈿細工の病害虫
魚籃に腐ったシロゲンゲと
そこに自蔵された星座の形
強請りのため
裨益となる
酷使され焼け落ち切れた
疫学で配偶された単彩の一組
動物試験ではない
無気力ではない
汗で汚れたシャツを脱ぎ
キナリの泡が舞う岩場に入る
抱き抱える私操脳瘍 骨無しの子
海の底へ還そうとしている
既存思想を反射する皮膚
アクリルの青が洗う
胸を掻き毟るような奇声
麦笛に似た呻き
抱えを払い
暁を払い
泳ぎ出す
魚のように跳ね上がり
波間に暗い銀を散らす
沖へ沖へと泳ぎ
見えなくなる
水を得た
骨無しの子