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第46話 告白

「ヒュー!!  眺めがいいなあ!!」

「本当にいいところね」

カブリ島の真ん中にそびえる山の山頂から、島全体を見渡している。

「リナルド! 昼ごはんは魚かな? 魚だよね? 魚しかないよね?」

「うっせー、迷宮になってた場合、調査に時間かかるからな。 いきなりさぼるわけにはいかねーだろ」

火口湖は綺麗なコバルトグリーンで、飲み水にもできるし、魚も豊富らしい。

「お?  アレのようじゃのー」

そのコバルトグリーンの湖に、半分浸かった崩れかけた遺跡が見えた。

元々の色は純白であっただろう建物は、今は少し黒ずんでいる。 おまけに壁には苔や蔓が多く生えている。


遺跡の入り口から少し離れた場所に、キャンプを作る。

「よし、拠点を作り終わったら、いよいよアタックにかかるぞ」

俺たちはベースキャンプの制作から始め、夕方前くらいから遺跡に入ってみた。

「さ~て、中はどうなっているかな~?」

「お?  外の意匠と中は全然違うみたいだな。 迷宮になってるな」

「そうだのー。 だがまだそんなに時間が経ってないようだのー」

「リナルド! 向こうにモンスターの気配! 数は3」

「おー! 幸先いいな」


結局、この迷宮は出来立てホヤホヤだったらしく、15層ほどしかなかった。

3日かけしっかり調査し、魔石も小さいながらも質の良いものがたくさん採れた。

迷宮自身の現身となるモンスターが16層に出てきたが、クラゲタイプの小さいヤツだった。

これは何本もの触手を持っている厄介な敵なんだが、まだサイズが小さく俺の炎魔法との相性が良すぎて、

瞬殺だった。

「イヤー、案外楽な仕事だったのー」

「フ・・・」

ダンは当然だといった具合に軽く笑う。

正直、俺たちのパーティはかなりバランスがいい。

今回ランクSに指名依頼が出ても、おかしくないくらいの依頼内容だったのだ。

そもそも船での長旅は危険がつきものだし、こんな遠くで迷宮へのアタックなど救援なんて望めないからな。

ラッキーだったと思っていた。

『胡椒』を使用し、脱出が終わったあと、ゆっくりと元の遺跡に戻ったようだ。

集落に戻るまえに、もう一度中に入ってみた。

どうやら古い神殿だったらしく、中には2人の女神の像が薄明りのなか、たたずんでいた。

どことなく、ティアに似ている・・・そんな気がした。

「あれ、この像なんかティアに似てない?」

どうやら俺だけじゃなかったらしく、サリーナもそう思ったらしい。

「う~ん・・・、そうなのよねぇ。なーんか私、この島初めてじゃない気がしてきたわ」

「おいおい! ティアまで冗談だろ?」

「港に着いたときからなのよね~」

「まあなんにせよ、この神殿の荒れようから10年20年放置されてたわけじゃないでのー。ティア殿の記憶に残っているわけがないのー」

「ふふふ。 ちょっとお祈りさせて」

そう言うと彼女は跪き、2人の女神に祈りをささげていた。

屋根の小さな穴から降り注ぐ、日の光に照らされて女神が3人いるかの様に見えた。


集落に戻るとすぐに宴の用意がされ、島民たちをあげて宴を開催することになった。

島の広場に場所を移し、たくさんの料理、島自家製の酒、肉に魚。

島民ですら、長らくこんな宴はやってないと言っていた。

島の長といわれる人物が俺たちに酒を注いで回る。

「いやー、こんなに早く解決してくださって、ありがたいありがたい」

「いえいえ、今回は発見が早かったからですよ」

「さあさあ! 今日はたくさん飲んでくだされ、食べてくだされ!」

促されるまま、俺たちは飲んで食った。

ペクドスは、島の酒の在庫を無くしてしまうほどの勢いで飲みまくっていた。

ダンは虫料理はないのかと言って、住民を驚かせてたが島の子供たち総出で虫を集めてきてくれたらしい。

サリーナは既に食いすぎて苦しみ、俺の膝で寝ている。

夜の海風が時折彼女の長い髪を乱れさせ、それをスッとかき上げるとき、珍しく酔っているのか頬が赤いティアは、隣で座って宴の炎を見ていた。

「珍しいな、ティアが酒をのむなんて」

「ふふふ。そうかな? そうかもね。 サリーナちゃんは寝ちゃった?」

「ああ、久しぶりのごちそうに、はしゃぎ過ぎたんだろうな」

俺の膝でそれに答える様に、耳がピンピンと動いた気がした。

「ここに来てまだ何日かだけど、いろいろ思い出したわ」

「え?  思い出した?  やっぱり来た事あったのかよ?」

「ふふふ。 来たというよりは、出て行った・・・かな?」

「てっことは、ここで生まれたってことかよ? にしちゃティアを覚えてる奴がいねーじゃねーか?」

「ふふふ。 そりゃそうよ、100年も前のことだもの」

「100年って・・・おいそりゃ・・・」

「そう・・・。 今まで黙っててごめんね。私もエルフなの」

そう言って彼女は髪をかき上げ耳にかけた、その先端はほんのわずかにとがっている。

「言われないと気付けねーな・・・」

「まあ、ほんのちょっとの違いなんだけどね」

そう言いながら、ニカっと笑う。

「あ?  じゃあ、あん時の・・・」

「そうなの。私より長生きなんて無理なの」

ペロっと舌を出して笑う。

「でもね私、今のリナルドのパーティ大好きだよ。

ペクドスは怒るとこわいけど優しいし、ダンは無口だけどよく気を使ってくるれてるのわかるし、サリーナは賑やかで楽しいし、ライバルだけどね」

そう言って、クイっと酒を飲んでまた笑った。

「ライバルって・・・おい?」

「ふふふ。ホントはね一目ぼれなの」

「えぇ?  おまっ!! 酔ってるな!  ぜってー酔ってる!」

「ふふふ。 酔ってませんよーだ」

膝の上で今度はさっきより激しく、ピンピンピンと耳が動いた気がした。

お読みいただき、ありがとうございます。

次でリナルドの過去編は終了する予定です。

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