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第42話 アジラティ=メンフィス

更新遅くなって申し訳ありません。

リムーに到着した俺たちは、すぐにギルドに向かった。

ギルド内は大騒ぎだ。

かなりの怪我人が運びこまれており、食堂横に併設されている救護室はてんてこ舞いしている。

俺たちは3階の統括本部に向かい、ドリーさんから話を聞いた。

「良かったです、こちらが連絡する前にネ、動き出してくださって」

「ギルド長のフレッドは、まだ戻ってきてねーのかよ?」

「はい、それがまだですネ。調査のために、ニムアイ島に向かったままなのですよネ」

「ニムアイ島に?」

サロさんが訝しげに聞く。

「はいネ。新しい迷宮が発見されたとか・・・」

「そうか・・・。 まあ仕方ねえ。 で、どうなってる?」

「はい、議事堂が占拠されましたネ。 議長とメロトニス各国の長たちが捕らえられていると思われますネ。 犯人は蜥蜴人60名ほど、その誰もがかなりの武人ですネ」

「なるほど」

「要求は?」

「ギルドには手を出すなとの書面がきているだけですネ。 おそらく議事堂内でザッカー島を、独立させるための書類を制作させているとおもわれますネ」

「こちらの被害は?」

「リムーと周辺にいた冒険者で討伐に向かったんですが、残念ながら下の有様ですネ」

「援軍はどうした?」

「はいネ。ガウリアス帝国イスラ周辺にいらっしゃる『奏毒の勇者』エリカ=ラッリ様に救援要請をだしましたネ」

「近場にはエリカさんだけですか・・・。 これでは戦力として不足ですかね・・」

サロさんは頭を抱えている。

「まあ、やるしかねーな」

「よし、動けるもの全員を招集。 2班に分けるぞ。 

まず、正面から解放を願いでてみよう。 これに俺たち『爆炎の白花火』をメインであたる。

次にその間に、裏から救助を担当するのを『旋風の勇者』サロをメインにだ」

「わかりました」

「サロ・・・死ぬなよ?」

「フ・・・リナルドさんこそ、要人ごと燃やさないでくださいよ」

「へ!  言ってろ!!」

すぐに俺たちは1階に降りて動けるものを集め、リナルド班、サロ班に分け出発した。

俺たちはサロ班が出発して、30分ほどしてからの出発となった。

その間に潜入の準備をするそうだ。


議事堂前、時刻は昼少し過ぎ普段ならこの辺りは通行人も多く、バザーも出ているので人通りが多いはずなんだが、今日は静まりかえっている。

「おかしい・・。 静かすぎる」

リナルドは警戒しながらも、門を抜け正面玄関の大扉まで来た。

「誰かいないか? 俺たちはギルドから来た。勇者リナルド=レンツィだ!  話をしたい。 扉を開けてくれないか?」

その時、大扉がバタンと勢いよく開いた。

そこには、蜥蜴人じゃなく先ほど班分けをして、サロ班のサブリーダーをすることになった、強面の冒険者が出てきた。

「リナルドさん! 奴らもう撤退した後ですぜ!」

「なに!? 議長たちは?」

「中です。全員が無事のようですが、サロが蜥蜴人の足跡をたどって追跡してます。おそらく港に向かったと思われるそうです」

「よし! サブリーダーはギルドに連絡をとり、すぐに救護班を呼べ。 お前とお前のパーティは俺たちと一緒に来い!」

犬人のハスキー犬みたいな顔の男と長髪を一つ結びにした大男が、それぞれうなずいた。

 「残りはこの議事堂に残り、現状処理を頼む!   サブリーダー! あとは任したぞ」

「はい!」

すぐに、港まで走り出した。

港ではサロと10人ほどが、蜥蜴人8人ほどと斬りあっていた。

「リナルドさん!  船です!!  出航してます」

サロさんがリナルドが来るのを見つけ、叫ぶ。

「おう!」 

そのまま走り抜け、埠頭の先まできたが船はすでに30mほど先に進んでいた。

船上からド派手な羽飾りを着けた、体つきのいい蜥蜴人が叫ぶ。

「我々ザッカーの民はメロトニス諸国連合から独立する! これまで人族との共存共栄をしてきたが、本来我らは選ばれし選民! 我らの島こそが聖地なのであるから、蜥蜴人以外の上陸をこれ以降認めん!」

「喧しい!! おめーらの言い分は分かるが、議事堂占拠してやることじゃねーだろうが!! ぶっ放す」

リナルドは深く深呼吸をして、両手を前に突き出した。

「我、リナルド=レンツィの名において、彼の船を燃やしつくせ!」

2mほどのドでかい火球が船に向かって、高速で飛んでいく。

「すげ・・」

正直リナルドの炎魔法を、まともに見たのは初めてだった。

だけど船に直撃する直前、火球ははじけ飛んだ!!

「おいおい・・・。手加減したとはいえ、アレを飛ばすかよ・・ガハハ!」

嬉しそうだ・・・。

火球のはじけ飛んだ煙が消えたあと、1人の蜥蜴人が立っており、すぐに海に飛び込んだ。

そいつは泳ぐでもなく、腕を組んだまま滑る様に海面をこっちに向かってくる。

「来るぞ! 俺はアイツとやる」

剣を抜きながら、何かブツブツと詠唱を始めた。

「おめーらは、サロの援護に迎え。 みんな死ぬなよ!!」

「おう!!」

サロさんの味方は数を減らして、この時すでに5人となっており、圧倒的に押し負けていた。

俺たちが入り、サロさんがすぐに蜥蜴人2名を減らした。


海から上がった蜥蜴人は身長は2mを超えており、体格もその他の蜥蜴人とはひとまわり大きく感じ、顔にも腕にも無数の古傷が刻まれていた。そしてその濡れた顔をぬぐいもせず、こうつぶやく。

「ち! 結局俺が出なきゃいけなくなったな・・・」

そして叫ぶ。

「デポン! やれそうか?」

サロと斬り結んでいた、マフラーみたいなものをした蜥蜴人が返事をした。

「やばそうだ・・・」

「っち! カスどもが・・・」

蜥蜴人は左手を上げ何かを詠唱した。すると精霊陣が浮き出て中から1m半ほどの巨大なコガネムシが3匹出てきた。

コガネムシはすぐに、俺たちのところへきて、戦闘に加わった。


「おいおい・・・、召喚魔法を使えるのか? 初めて見たぞ」

「だからどうした?」

蜥蜴人は低い声で、リナルドに答える。

「おめーが、アジラティ=メンフィスだな」

「だとしたら・・・どうした!」

アジラティは大振りの槍を背中から取り出し、リナルドに斬りかる。

ギイイン!!

「俺はリナルド=レンツィだ。『爆炎の勇者』って呼ばれている」

「それがどうしたと言っている!」

ギイイン! ガイン!

「お前つえーな! ガハハ!」

「勇者とか・・・マジうぜー!!」


ガイン!!  なんだよこのコガネムシ! むちゃくちゃ堅い。

ガイン!!  ギイン!  くそ!

なにより気持ち悪い。 あんまり見たくない見た目だ。

日本から離れて大分たつから、大きい虫にも慣れたし、食べるのも一部を除いては抵抗なくなったけど、

この大きさはなんだ!?

「アズマ! 関節を狙うんだ!」

サロさんが蜥蜴人と斬りあいながら、叫んでくれる。

狙えって・・・。 よく見ないといけないじゃないか!

俺は気持ちを抑えながら、コガネムシの右前足の関節に剣を入れた。

割とすんなり斬り飛ばすことができたが、その後が大参事。

黄土色の血をまき散らしながら、攻撃を仕掛けてきた。

奴らの攻撃は、口から物を溶かす液体を吐くのと、体当たりだけだったが、流血の振りまきも加わった。

まあ、当たったからってどうということはないけど。

「アズマ! 背の外皮と頭の付け根を狙うんだ」

ズン!

首の辺りを狙うと、背中の外皮が丸ごと落ちた。

落ちた外皮はよく見ると、何人かの蜥蜴人が装備している盾に似ている。

「うわ!」

俺は思わず声を出してしまった。 外皮が取れたことによって、グロさが増した。

「外皮さえ外せば、剣がとおりますよ」

「はい!」

時間はかかったが、なんとか3匹を倒した。

召喚されたモンスターは、消えるのかと思いきや、死体はしっかり残っている。

蜥蜴人はアジラティを除いて、あと2名となっていた。

もっともこちらも動けるのは、サロさん、ハスキーの人、一つ結びの人、スキンヘッドのマッチョ、俺、ラヴィの6人になっていた。

他の人達が2名の蜥蜴人と斬りあっているので、俺とラヴィはリナルドの方に意識を向けた。

その時俺は、確かに聞いた。


彼らの斬りあいは、激しさを増していた。

アジラティはこちらの蜥蜴人が劣勢なのに気付いたようで、

「っち!!  ゴミどもめ!」

そう言い捨てた。

彼はリナルドとの間合いを槍で牽制しながら、左手をあげ召喚魔法を唱えた。

「我、長谷川悠真の名において命ずる。百足の王よ聖なる森より舞出で彼の敵を滅せよ」

と【日本語】で。


戦闘シーンは難しいですね。

お読みいただきありがとうございます。

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