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第4話

朝、まだ日が昇りきってない頃俺達は起き始める。

目指すはギルド横にある食堂のごみ箱

昨日の余りなんかがないか探るのだ。


今日は割と豊作だ。

前世の俺だったら、迷わず捨てる様なものだったが。

注意深く観察し、臭いを確かめたあとイリアと分けた。


昨日拾った剣を握りしめ、戦闘の練習。

俺だって何もしてないわけじゃない。

食糧が確保できた日には、こうやって身体を鍛えている。

寝るまえには魔法の練習もやってる。

しかし、誰かに習ったわけじゃなくやり方を知ってるわけでもない。

それになにより、圧倒的に腹が減ってる日が多いのだ。


会話はできるが、文字は読めない。

ギルドのサリーナさんが暇なとき、貼ってある依頼書を使って教えてもらってるくらいだ。

この状況を変えるには、いろんなことを学んでいかないといけない。


正直、生きているのが辛い。

何度も、もういいやって思った。


俺1人だったらとっくに諦めていただろう。


俺には前世の記憶がある、旨いもの死ぬほど食った記憶もあるし、欲しいと思ったものを衝動買いしたことだってある。

わずかだが、パートナーがいたことだってあるのだ。


だけど、イリアにはない。


カビの生えた、石の様に硬いパンを


「お兄ちゃん、口の中に唾たくさん溜めて噛めば柔らかくなるよ」

って笑顔で言うのだ。


俺は必ず旨いもの死ぬほど食べさせてやる。

そう思うのだ。


「今日は罠になにもかかってなかったねえ」


「ああ、それどころか罠壊されてたからな」


「たぶん、落とし穴に入りきれないような奴がかかって中で暴れて壊れたんだろうな」


「今日の晩御飯は、水かなあ」


「ボク、朝たくさん食べたんで大丈夫だよ」

ニコッと俺の方を見ながらイリアが答えた。


「ああ…」

そう返事するしかなかった。


次の日、待ちに待った水の日(水曜日)

貧民街の教会では、炊き出しが行われる。


聖アテナ教だそうで、そのアテナって人の教えを説いているらしい。

どんな教えかなんてどうだっていい、食い物くれるのだから。


堅めのパンに、ほぼ具が入ってないスープ。

ゆっくりかんで口に入れる。


「あぁ…不味い」


「お兄ちゃん!? ボクは美味しいよ?」


味は結構塩がきつめ。

それでも温かいスープが体全体にひろがる。


「そうだね、旨いね」

自分を説得するように呟いた。


この炊き出しには、有名人が来ている。

なんでも聖アテナ教の巫女さんらしく、清潔感のあるワンピースに金髪のさらっとロングの髪に青い瞳の美少女って言葉が似合う12~3歳の娘だ。

名前はエミリアって言うらしい。

なんでも、彼女の提案でこの炊き出しが行われているらしいのでエミリア様々。

巷では聖女って言われてるだけある。


貰うときに声をかけてくれる。

「聖アテナのお導きがありますように」


もちろんこれくらいしか会話したことない。


「よし! お腹も膨れたことだし、罠見に行こうか」


「うん!」


2人して駆け出そうとしたその時、


「ちょっといいかな?」


声をかけられた。聖女エミリア様に。


「なんでしょうか?」


「良かったら片付けを手伝って貰えないかしら?」


「えっと…」

少し考える。


「少しだけど、お礼もするわ」


「俺達だけですか?」


「いえいえ、片付けのお手伝いは皆に頼んでいるのよ」


「そうなんですね」


「教会の炊事場まで運んでね」


「はい」

お礼をするってなら手伝わない理由はないよな。


スープの入っていた鍋を抱え教会に入る。

窓が小さいせいか、中は暗めだ。

あと、少し埃っぽい。

独特の静けさをもつその室内は長居したくないと思えた。


食堂には何人かの尼さんがいて、「あら?」「かわいいねぇ」「こんにちは」

など脇を通るたびに、思い思いの言葉を俺とイリアにかけてくれる。

どこのおばちゃんも一緒なんだなぁと失礼なことを考えつつ炊事場へ


鍋洗いやらちょっとした片付けけを終わらすと、エステル様が来て


「ありがとう、キミたち2人に前から頼もうと思っていたけど食べたらすぐに居なくなっちゃうんだもん」


「え? なんで俺達なんですか?」


「だって一番小さいじゃない」


「あー…、そうですね」


「じゃあ、また来週ね」

そう言いながら、俺とイリアに10メセタづつ握らせた。


「お兄ちゃん、こんなに貰って良かったのかなぁ?」


「持ち回りでやってもらってるんだろ、俺達が貰わなかったら、他の奴がもらってるさ」


「そっか、じゃあいいね!!

これも、森に貯金だね」


「そうだな」


イリアはニコニコしながら森への道を足どり軽く歩いていた。


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