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第34話 盗賊討伐の報酬

リナルドはギルドに着くとすぐに、受付に向かい包んだままのギランの首を台に載せ言った。

「リナルドだ、指名依頼されていた迷宮の盗賊の首だ。確認してくれ」

「承りました」

30代前半の男性ギルドの職員は慌てることなく、首をバックヤードに持って行った。

(そういえば、兎人を探すDランクの依頼ってもしかして・・・・)

俺は先日依頼を受けようと来た時に、読めなかった単語『兎人』が入ってた依頼を探した。


□ □ □

ランク D

依頼 兎人の親子の捜索

内容 奴隷の兎人の親子がいなくなりました、罰が発生していないとこをみると自分の意思ではなく、人攫いによるもと思われる。母20代後半、子10代半ばの2人。色は母が白と灰のマーブル耳先が黒、子は白一色。名前は母キリージャ、子ラヴィ。

報酬 1000メセタ

依頼主 ぺトラッキ商会

□ □ □


(あ! あった!)

「リナルド!」

俺は依頼の紙を剥がしてリナルドに見せた。

「こりゃ・・・。 そうか、捜索依頼がでてたのか。 奴隷章を返しにいかなきゃいかんな」

「ねえ、子供の方はどうなるの?」

「うむ、子供の方はまだ奴隷章を着けてなかったみたいだからな、向こうには生死はわからんだろうな。

しかし、相手は商人か・・・。兎人の子供で女性・・・こりゃやっかいかもな」

「どうして?」

「ああ、この前話しただろ? 帝国では奴隷の2世や3世も、そのまま親の主人の所有物になることが多いんだよ。だが親である奴隷が、自分の給料の中で育てた子供ならば、奴隷章を着けて罰則なんかを与えたりすることは、やってはいけねえってなってる。建前上だけどな」

「それならラヴィって子は、奴隷章を着けてなかったから母親は自分の給料で育ててたんですよね、じゃあ自由になれるんじゃないの?」

「建前上な。この前も話たが成人してない奴隷の子供が自由になったからって、生きていけると思うか?

 強制的に奴隷契約されて売りに出されるっておちさ。しかも兎人だ。兎人は見ためがいいし動きが機敏だし人気があるんだよ。もしかすると母親は繁殖用だったのかもな」 

「繁殖用?」

「ああ。 帝国でも、奴隷は自分を買い取ることで自由になる法律があるんだよ。しかし奴隷に子供を産ませ育てるために給料を使わせると、当然自分を買い取るための金なんて貯まんねえよな」

「でも子供は成人して自由になるわけでしょ?」

「子供が借金してなけりゃな」

「借金?」

なぜだ?  親に育てられているのに、なぜ子供に借金ができる??

「子供ってのは、物壊したり、いたずらしたりするもんだろ?」

「まさか・・・。それって!」

「結果的に子供も、借金背負って奴隷いきって話は山のようにあるな。まあ他にもいろんな手で奴隷に落とすなんて簡単なもんだろ」

「そんな・・・、教会や国はなんにもしないんですか?」

「原則禁止はしてるな」

そんな・・・むごい。

「ラヴィはあの歳まで奴隷堕ちしてなかったんだから、母親はがんばってたんだろうな・・」

俺はなにも言えなかった。

この依頼も商会がだしたものだ、おそらく『商品』としての兎人奴隷だったのだろう。

だから母親は最後の力を振り絞って、俺たちにラヴィを自由を与えて欲しいと懇願したに違いない。

「リナルド、俺はラヴィを自由にしてあげたいよ」

「ガハハ! 言うと思っていたぜ。 しかしよぉ? どうすんだ? 旅に連れていくのか? イリアのことはどうすんだ? おめえの奴隷にするのか?」

「俺が決めるわけじゃないですよ、自由になってもらった後本人に決めてもらいますよ」

「そうか・・・」

そんな話をしていると見たことある人が近寄ってきた。


「あら?  アズマ君じゃない??」

ラブラドールレトリバーでヨークシャーなココさんだ。

「あ! どうもココさん」

スッと近寄って、クンクンしてる。

「あれ? 血の匂いがするわね?」

その時となりのリナルドが目にはいったのだろう。

「わ!!  リナルド様!!  来てらっしゃったんですか??」

「よお! ココじゃねえか、久しぶりだなあ」

ココさんはスッと俺を離れて、リナルドの腕に抱きついている。

(やっぱ、この人誰にでもスキンシップする人なんだなあ・・・)

「イスラに来たら一番に声かけてくださいねって、言ってたじゃないですかー」

「わりーわりー。ちょっと忙しかったんでな。それより俺の弟子が世話になったみてぇだな?」

「そんなことないですよー。なかなか受けてもらえない雑用系の依頼をパッと達成してくださったんだからー。 ねー、アズマちゃん?」

(アズマちゃんになってる・・・。やっぱり苦手だ)

「は・・・はあ。まあ」

「今日は何の御用ですかー? 依頼の受付ですか? そーいえば領主様より指名依頼が入っていましたよ」

「ああ、終わらせてきた」

「わあ! もうー? はやーい!]

丁度その時、リナルドが出していた鑑定が終わったみたいで、男のギルド職員が戻ってきた。

「お待たせしましたリナルド様。手配中の磨り潰しのギランに間違いございませんでした。

今回この者の武器も一緒に提出していただいたので、報酬は上乗せになっております」

「きゃー! ギランを倒したの?  すごーい」

ココさんはリナルドの腕に、スリスリしてる。

「おう! それやったの俺じゃねえんだわ。 アイツ」

親指で俺を指差している。

「ど・・ども・」

男性職員は、少し驚いた顔をしたがすぐに通常営業の顔になり

「ではパーティメンバーのアズマ様に、ギラン討伐分のギルドポイントと報酬をお支払しますがよろしいでしょうか?」

「ああ、それで頼む」

「ではリナルド様には、指名依頼分のギルドポイントと、報酬をお支払します。12万ポイント、3000メセタとなります」

「あれぇ? 指名依頼にしては報酬が安くありませんか?」

「ああ、報酬は別の形でもらってんだ。多いくらいさ」

(約半日で30万か・・・でも勇者への依頼にしては確かに安いかも)

「メセタは現金になさいますか? お預けになさいますか?」

「預かっておいてくれ」

「かしこまりました」

男性職員は俺のほうを向いて

「では、アズマ様こちらへ」

「はい」

「アズマ様へは、ギラン討伐の報酬でギルドポイント10万ポイント、報酬で12000メセタになります」

「うを!高!」

(120マン円?!)

俺がビックリしていると、男性職員は

「ギランは手配される前までBランク冒険者でしたし、盗賊としてもそこそこ有名でしたからね」

「あ・・・ありがとうございます」

「報酬は現金がよろしいでしょうか? ギルドにお預けになりますか?」

「じゃあ、1000メセタだけ現金で。後は預かっておいてください」

「かしこまりました。お引出の際はアーガンディル大陸にあるギルドの支店で、いつでも引き出せますので」

「わかりました、ありがとうございます」

(所持金10万円かあ・・・ここまで長かった)

ココさんがリナルドを離れて、今度は俺の腕に抱きついてきた。

「すごーーい! あのギランをやっつけたんだね! 流石リナルド様の弟子って感じ」

ぐいぐい胸が腕に当たってる。

「はあ・・、運が良かっただけですよ・・」

「ガハハ」

リナルドは笑っている。

俺は目でリナルドに助けを求めようとした、その時。

赤髪の大男の向こう側に、こっちを睨んでいるジャッコさんの姿を発見してしまった。


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