第28話 葬儀の後で
2日後、砦では軽い祝勝会が行われた。
酒と少し豪華な食事が振る舞われ、見張り以外の人たちで賑わった。
祝勝会の前に戦没者の慰霊会が厳粛に行われていた。
圧倒的に俺たちが押していた様にしか見えなかったが、実際には100名以上が亡くなっていた。
遺体は一ヶ所に整然と纏められ、可能なかぎり身綺麗にされていた。
遺体の中には巫女のお供のメローヌさんもいた。
傷を受けた半身はきれいな布で覆われていた。
側にはロリエさんがついていた。
軽く目が合った。
ヤバいまた逆ギレされそうだ。
直ぐに立ち去ろうとしたら、手を捕まれた。
良く見ると、目に涙を浮かべ顔が赤い。
「酔ってるんですか?」
「……ここで横になっていたのは、私だったのかもしれない……」
「俺にもお祈りさせてください」
方膝をつき、右手で拳を作って左手でそれをつつむ、それを胸の前にもってくる。
それが聖アテナ教の祈り方だ。
「ありがとう………………私たちはこのために生きているの……」
「つらい………ですか?」
「いいえ!! 断じてそんなことはないわ!! 帝国では巫女の護衛はとても名誉なことなの!!
たくさんの訓練を重ね、たくさんのことを学んで、それこそ小さな頃から。
ちいさな……ころ……から………メローヌぐぃ……ウグぅ……」
鳴き声で最後の言葉はわからなかった。
「あなたは……勇者に守ってもらってるでしょうけど……。
私たちは逆なのよ……。死ねばすぐに次が補てんされる……」
そうか、それでおれを睨んでいたのか……。
でも実際、俺にどうすることもできないし。
そう考えていると、式典のクライマックスがきた。
「我はこの砦の死守に命をかけた、英雄たちのために光の魔法を贈る。
聖アテナ様の御側にあらんことを…」
そう言うとリタは、戦没者のために歌を歌った。
その光はたくさんの遺体を大きく包み、始めは蛍光色のまぶしい光だったが、ゆっくりとオレンジ色になり、周りを夕焼けの様に赤く染めるとしだいに遺体とともに消えていった。
「凄い………」
「ああ……俺も初めて見たな、巫女は聖アテナ様の元に直接送れる魔法が使えるって聞いていたが、多分あれがそうなのだろうさ」
リナルドも感動しているみたいだった。
☆
ガウリアス帝国 聖アテナ教会総本部
帝都内に作られたその施設は、教会というよりは城と言ってしまったほうがいい。
その様にしか見えなかった。
白く大きなその外観に、帝都にある城と並んで双子城と呼ばれるほどの建物だ。
その地下の一室に、壁じゅうが本だらけという部屋に30は後半になりかけの男が羽ペンを走らせていた。
男は短髪でスラッとしたやせ形、目は細く色白。少々リアクションの大きい男だ。
部下が慌てた様子で部屋に入ってきた。
「ヴェロ様、ついに3人目が見つかったとの報せが入りました」
「つ……ついにきたか!!?
そ……それでなんの巫女だ??」
ヴェロは興奮ぎみに立ち上がり、羽ペンを机に投げた。
「は……、癒しの巫女だそうです」
「っっしゃあ!!
きたきたきたあーー!!」
大きくガッツポーズをする。
「それで?、もう呼び寄せたのでしょうな?」
「それが………サーラントの聖女がいい返事をしませんで……」
「ふむ………エミリアさんですか………。
いまさら劣化巫女さんに頑張ってもらっても、迷惑なだけなんですけどね。
消えてもらいましょうか」
「し……しかし……」
「わかっています、手はうちましょう」
そう言うと、綺麗な笑みを浮かべた。
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