第27話 白き焼け野原
「本当に、巫女の魔法は凄まじいなぁ」
リナルドがボヤいている。
羽と肉の焼ける匂いが、あちらこちらから漂ってくる。
ボスを失ったガルードの戦士たちは、北の方に敗走していった。
雪が新雪で危険なため、深追いはできないとのことだったが、100人ほどの討伐隊が組まれた。
今、俺たちは頂きにあった本部の中を調べている。
木で櫓を組み、外側に動物の皮をのせたテントがいくつか建っていた。
中は意外と広く、ちょっとした調理場なんかもあった。
一番奥の他より一回り大きいテントが、ボスのものだろう。
気になったので、リナルドを誘って見に行ってみた。
「なあ、リナルド。
結局、魔族ってなんだったの?」
「ああ、魔族化した獣の中には、人の言葉がわかるやつがいるんだよ
まあ、話せるなら話したいと思って、ここまで来たんだけどよぉ…。
まさか、巫女が現れて一網打尽とは思わなかったわ。」
「人に近い獣が、人の住んでる地域に侵出してくるときは、大体魔族化した親玉がいるって話なんだがよ。
詳しいことは、まだわかっちゃいねえらしいんだ」
「これといって、何もないですね…」
あのガルードについては、何もわからなかった。
なぜ日本語が話せたのか?
なぜガルードなのか?
帰ると言っていたが方法はあるのか?
家族はどうしたのか?
出会い方が違えば、友になれただろうか?
考えれば考えるほど、彼に同情してしまっている自分がいた。
そしてその彼を、まるで虫でも殺すかのように焼き払ったリタを見ると、胸がモヤモヤしてくるのだった。
彼の死体は、火葬の必要などなく燃え尽きていた。
持ち物など、確かめるまでもなく炭になっていたが、武器の棍だけは燃えずに残っていた。
俺は周りや、リナルドに断ってから、彼を近くの樹の根元に埋葬した。
もう砦に帰ったと思っていた巫女が、それを遠くから見ていたようで。
「何をやっておるのだ?」
わざわざ近づいてきて、話かけてきた。
「埋葬してるんですよ」
不機嫌さを隠そうともせず言った。
「貴様!? なんだその口の聞き方は!?」
赤毛のお供が俺に掴みかかろうとする。
「かまわぬ、ロリエ」
リタは赤毛を制止した。
赤毛さん、ロリエって名前なんですね……。
「敵を埋葬とはの……。
物好きなやつだ。」
「お互い、死力を尽くして戦ったんだ。それくらいいいでしょ?」
「ククク、貴様は戦争を何かの競技だと、思っているのではないのか?
奪いにくるなら迎撃する、欲しいものがあれば奪う、ただそれだけのこと」
その美しい顔でニヤリと笑いながら、俺を見ている。
「そうかもしれないけど、相手にも人生があったろうし、家族だっていたはずですから」
「ククク、まあよい。
ところで、このガルードの最後、お主何か会話しておらぬかったか?」
「え?? き……気のせいでは??」
「ふむ、そうかの……ちと遠かったからの……。
悪魔化した獣は人語を話すと言うからの……。
ロリエ、帰るぞ」
「は!!」
帰り際、ロリエさんはおれを睨んでいった。
棍を墓標に、俺は手を合わせた。




