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第19話

朝だ。

いつもと変わらない朝だ。

昨日の腕の魔法を受けた傷、脇腹の刺傷もまったく影も形もない。


イリアと目が合うと。


「お兄ちゃん………」

抱きついてきた。


「イリア、おはよう」


「おはようじゃない!!! 無茶苦茶心配したんだから」


「あ……うん、ごめん」

イリアは目に涙を溜めている。


「なあイリア、なんで傷治ってるんだ?? 治癒魔法使ってもらったんだよな。さすがエミリア様の呼ばれた方だね」


イリアはもじもじと言いにくそうに、

「えっと、私が治したみたいなの」


「はぁ?」


「よく分からないんだけど、エミリア様が言うには私、巫女らしいの」


「巫女って、えーっ……と」


ガチャガチャ

その時

玄関のドアのカギが外され、サリーナさん、エミリア様、シルバード様が入ってきた。


「目が覚めたみたいだね、ほい!! 朝食」

焼きたてのパンと燻製肉だった。


「お腹へってたんだよね」

サリーナさんたちは朝食を済ませてきたらしい。


俺とイリアで食べ始める。


エミリア様が、

「食べながらでいいから聞いて! 昨日アズマの傷を治すためにイリアちゃんが神力を使ったわ」


「しんりき!? ってなんです?」


「簡単に言えば、聖アテナ様とその巫女様たちが使ったとされる力よ」

エミリア様はいつもよりも厳しい表情だ。


「ほー………それって誰でも使えるんですか?」


サリーナさんが

「あっちゃー………」


エミリア様も頭を抱えている。


「誰も使えないわ!! 巫女はこの世で4人!! この4人は使える神力がそれぞれ違うの、イリアちゃんは世界に1人の治癒の巫女なのよ!!」


マジか……。

あれ?

でも実際何か変わるわけじゃないよな。


「えーっと、……うん、わかりました。

でも、何も変わらないですよね?? 今まで通りここでサリーナさんと暮らしていければ……」


「……………」


なんか、全員の沈黙が長い。


「無理よ……」

エミリア様はキッパリ言い切った。


「え? でも治癒の能力がばれなければ、わかりませんよね?」


「昨日、イリアちゃんの使った神力はその現象が目に見えるものだったの、

珠状に書かれた光の文字がだんだんと大きくなり街を包み込みこんだあと、街中の病人や怪我人が治ったと………みんなが噂しているわ」


「街中!?」


「街中よ」


「じゃあ、ばれちゃってるってこと?」


「まだ特定されたわけじゃないけど、時間の問題ね」


「………どうしよう……」

イリアを見ると、苦笑いを浮かべている。


「ってか大丈夫なのかイリア? そんな強力な魔法使って!」


「エヘヘ、へーき」


「魔法じゃなくて神力ね、一緒じゃないのよ」

エミリア様は詳しいな。


「そんなことより、すぐに国が動くわ」


「え? 国??」


「そうよ」


「巫女の力は強力なの、その力を国の力として使ってる国もあるのよ」


「それって、捕らえにくるってことですか? 」


「ええ、おそらくは。 だから教会に保護って形であなたたち二人を受け入れたいと思っているわ。そうすれば2人一緒にいられるし、私も便宜を図れるから……」


「………」

なにか………余りにエミリア様の言う通りになってないか? 話が上手すぎる。

確かに出会ったころから良くしてもらっているけど、ここで簡単にイエスって言っていいのか?

考えれば考えるほど、むくむくと疑念がわいてきた。


「ちょっと、考えさせてください」


エミリア様は顔を曇らせた。

「ええっと………そ……そうね、でもあまり時間はないわよ」

親指の爪を噛みながらもどかしそうに言った。


「どちらにしろ、一度教会戻るわ。この騒ぎで教会内も混乱してると思うし、受け入れの準備もあるし、 昼過ぎには戻ってくるからそれまでには決めておいて」

そう言うとシルバード様と一緒に家を出ていった。


「サリーナさん、どうしたらいいでしょう? 余りにも上手い話すぎるようなきがして……」


「あ……アズマそんなこと気にしてたの?? 彼女は巷で聖女って呼ばれているのよ?

この王都でもっとも信用のおける人物なのに……」


「やっぱり、[はい]って言った方がよかったですかね? あ!! イリアはどう思う?」


「他のところにいくよりは、エミリア様と一緒の方がいいと思う」

イリアはニッコリ微笑みをうかべている。


サリーナさんは慌てたように

「今すぐ呼んでくる!!」


「そうですね、お願いします」

早いほうがいいだろう。


サリーナさんが家を出ようと扉を開けた瞬間

「きゃ!!」

ドアから侵入者が現れた。

「よお! サリーナ!! なんか忙しそうだなぁ?」


「バルディックさ………ん?」

ドアの向こうにはギルドの支店長が立っていた。


そこへ更に

「よおぉ! 坊主の調子はどうだい?」

ニヤニヤ笑いながらボーリンが立っていた。


イヤな予感しかしない。


「今からちょっと外出するところなんで!」


「なーに、手間はとらせないぜ。それに用があるのはおめぇじゃねえから、どっか行くなら行ってもいいぜ」


「あいつですぜ、バルの旦那」


「ほお~、男だと思ってたら女だったとはなぁ~。 しかも巫女の力とは」


「ちょっとそこのガキ話がある、ギルドまで来てもらおうか」


「お兄ちゃん……」


俺はイリアの前に立った。


「バルディックさん? 彼女たちはエミリア様の保護を受けることに決まってるんです、だからギルドで話を聞く必要はありません」


「あぁ!? サリーナ!! 必要があるかないかは俺が決めるんだよ、邪魔するぜ」

強引に入ってこようとするバルディックは次の瞬間、表にドアごとふっとんだ。


バキィ!!


「いてて、おいおい!! 上司を足蹴にするたーどうゆう了見だ?」

唇から出血したものを、左手で拭いながらバルディックは右手で剣を抜いた。


「バルディック!! あんたの魂胆はわかっているんだよ」


「わかってるっていうんなら、話ははえーわな!!」

そういいながらヤツはバスターソードをサリーナさんめがけて降り下ろした。


ガキッ!!


「くぅ!! 」

サリーナさんが完全に力負けしてる。


「その義足でどこまでもつかな? 裂牙風のサリーナさんよぉ?」


サリーナさんは俺に向かってアイコンタクトを送ってきた。

おそらくこの隙に逃げろってことだろう。

エミリア様のもと、教会に逃げ込むしかない。


「イリア!! 走るぞ!!」

枕元に置いていた剣をとり、イリアの手を握ってダッシュした。


家の入り口を出て、5歩も進まないうちに遮られた。


「おーっと! 昨日凄い怪我で死にかけたんだ、まだ横になってなきゃいけないなあ!!」

忘れてたボーリンだ!!


だけど、同時に思い出した。

「あんたにゃ、借りがあったよなあ??」


「診察してやったろう?」

ニヤニヤしてる、子供だともって油断してるな。


俺は低い体制から、ボーリンの足を狙って切りつけた。


「ぎゃあー、いてえ!」


ボーリンは痛さに転げまわってる。


バスン!!

と後ろからぐずれる音がした。


「あぁ~あ、やっちゃった。 また職探しかなぁ?」

サリーナさんがバルディックをあっさり片付けていた。


「さあ! ここも騒がしくなったから移動しといたほうがいいね。 行こうか」

サリーナさんが俺の手を握ってくれ、教会に向かって歩き出そうとしたその時。


ヒュン!!


一瞬だった。


気づいたらサリーナさんが血溜まりに横になっていた……。


やっと支店長名前でてきました


お読みいただきありがとうございます

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