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第18話

「はぁはぁはぁ……」

マズッた、こんな筈じゃなかった。


その日、俺とアンドレは天気もいいので狩り行くことにした。

家の雑用を終わらせ、軽いサンドイッチを作りお弁当とした。

夕飯の材料でも取れればと気楽な気持ちで森に入った。

イリアは裁縫の勉強に行った。

最近は服の仕立ても習っているらしく、今着ているこの動きやすい服はイリアが作ったものらしい。

デザインは某ゲームにでてくる旅人の服みたいなものだ。


森は静かなもので、いつもより入ったとこまでなんの気配もなく来てしまった。

仕方ないので川で魚でもと思い移動していると、川の近くにゴブリンが3匹ほど昼食をとっていた。


俺たちは狩りなれたゴブリンを今日の獲物に決め、何時もの不意をつく形で戦闘を始めた。

真ん中の少し小さく黒い奴を俺がやることを、アイコンタクトとハンドジェスチャーで知らせ斬りかかった。


アンドレの攻撃は見事に急所に入ったようで

「ギャギィー」

と断末魔の声を上げている。

アンドレはすかさず2匹目に攻撃を仕掛けるが、戦闘態勢をとった2匹目は受けきった。


俺の方はそうはいかなかった。

明らか不意をついたはずなのに、受けきられたのだ。

半ば最初の一撃で決まると思っていた俺は、逆に不意をつかれた形になった。

しかもゴツゴツした岩が多い河原での戦闘、いつもの素早い動きが出せなかった。


ガイィン!

ガキィン!


他のゴブリンより身体は小さかったのに、一太刀一太刀の重さは今までも比じゃなかった。

全身に嫌な汗がでてきた。

マズッた、完全に油断していた。

何度も戦ったゴブリンに俺は負けるはずがないと思っていたのだろう。


「はぁはぁはぁ…… よくみると耳にイヤリングなんかつけてる、ゴブリンじゃないのか!?」


「ちょっと待ってて、こっちもしぶとい……」


「待てるか……?」

3連撃をなんとか受け流すと、敵もイラついてきたのか大きくバックステップをとり、

「ギャアアァァーー!!」

大声で威嚇してきた。


なんとかビビらずに構えをとっていると、アンドレがもう一匹を片付けてこっちにきた。

「こいつ……」

アンドレもこいつがただのゴブリンじゃないことに気づいたみたいだ。


瞬間、空気が変わった。


なんだこれ??

この感覚……

はっ!?


「アンドレ!!! 散れ!!!」

アンドレを俺は横に蹴り飛ばした 。


それと当時に風の魔法が俺を切り裂いた。


「ぐわっあ!!」


「アズマ!? まほう!?」


ボクシングのガードの様に顔面をガードしたが腕を深く切られてしまった。

と同時に俺の脇腹にゴブリンの剣が刺さった。


「ぐうぅ………」

強い……、無詠唱魔法からの突き。


このままでは全滅だ、そう思った時すかさず動いていた。


「ギャイ???」

敵は油断していた。


おそらく必殺のコンビネーションだったのだろう。

動きが止まったのだ。

脇腹に刺さっている剣を握ってる腕を、握って

「アンドレ!! 今だ!!」


俺に蹴られたアンドレは、態勢を立て直しこちらに向かってきていた。


「おおおぉぉぉおおお!!」

アンドレの渾身の突きがゴブリンの喉を貫通した。


ここは掃除屋の街。

少年は貧しくも、なんとか生きていた。

母と子その二人の生活は今で言う底辺というやつだろう。

数年前に拾った毛皮や、魚を取る網安物だったがナイフ、それらをまとめててに入れられたことは彼らにとっては幸運っだった。


家は辛うじて持ち家だった。

少年の父が母に送った最後の手切れ金がわりだったのだ。

アズマの様に自分で狩りをし母と己の生をとどめておく、そんな毎日だった。

しかし、ここのところ母の具合が悪い。

食事が喉を通らないのだ。


「母さん、食べて……昨日も何も食べてないじゃん」


「ごめんなさいね、食べても戻してしまうの。だから私の分もカイル、あなたが食べなさい」


「母さん、もうあまり長くはないかもしれないわ」


「そんな!? 母さん!! 」


本当はカイルもわかっていた。

母の状態を。

でも信じたくなかった。


「あぁ!! 聖アテナ様、どうか、どうか母の病気を治してください

治してくださるのなら、私のこの命あなたのものにしていい」


そう少年は祈るしかできなかった。


ヤバい、血が流れすぎた。

意識が朦朧としている。

アンドレと一緒になんとか家にたどり着くことができた。

だが、状況は悪いとしかいえない。

この世界に輸血なんてない、今の状況薬師のアデルさんが来てくれたところで、多くは望めないだろう。


「寒い………」


回りにはサリーナさん意外、みんながいる。

なぜかエミリア様までだ。


「おにぃちゃん……」

イリアの涙が止まらない。


「イリア、すまない……。 もう俺はイリアを守れないかもしれない」


「アズマくん、気をしっかり!! 今王都の治療魔法師を呼んでいるわ」

エミリア様が言う。

なぜそこまで俺にかまってくれるのか……。


「アズマ!! 医者連れてきたわ!!! 」

サリーナさんの声がした。

顔がクシャクシャだ。

「サリーナさん、ありがと」


「アズマ、アズマぁ」


そして医者の顔を見て、

「いつかのヤブじゃねぇか!!」

叫びたかったが、口から出てきたのは小さい声だった。


ああぁ、こんな死に方か。

なんで俺にこの世界に転生してきたんだ?


ボーリンが脈をとり、首を横にふった。


「あああぁぁぁ!! お兄ちゃん!! 私のこと守るって約束したじゃない!?」

イリアはアズマの上に泣き崩れている。


しばらくすると異変が起き始めた。

イリアの身体から光の玉が生まれて、それが徐々に大きくなっていった。

エミリアたちは始めは驚いたものの、逃げる間もなくその球につつまれ、サリーナさんの長屋より大きくなり、やがて掃除屋の街全体を包み込み。

そして消えた。


その日、掃除屋の街に奇跡が起きた。


ある家では

「カイル!! カイル!? 」


「母さん??」


「ああ、カイルお腹が空いたわ、食べ物余ってないかしら?」


「母さん!!」


別の家では、

「ばあさん、今日は腰の具合がいいでよぅ。久しぶりにどうかの?」


そのまた別の家では

「お嬢様、お薬の時間でございます」


「うーん、なんかいらないわ、治っちゃったみたい」


「また、そのようなお戯れを」


「でもね………」


ギルドの食堂の横救護所では、


「痛てぇーよ、痛てーよ」

カマキリに似た顔の男が呻いていた。

「この程度の傷でここを利用しないでもらいたいわ」

ギルドのお姉さん(サリーナさんの後輩)が傷の手当てをしていた。

「だって、まさかドラゴンが出てくるなんてよおー」


「はいはい、ドラゴンなんてこの辺に出たって報告はありません」

べちぃ!!

強めに湿布薬を貼り付けた。

「いてえぇ!!!…………………ってあれ? 痛くない………」


「なにをいって………」


その日、掃除屋の街にいた病人、怪我人

すべてが治ってしまった。


お読みいただきありがとうございます

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