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第16話

この世界の暦も1年は12か月だ。

もっとも、一年の始まりは春分の日から始まるそうだ。

だから、約4ヵ月ほど日本からすると季節が遅れるらしい。


今の季節は夏の終わりだ。

日本だと9月くらいか。

こっちだと5月ってことになる。


秋の始めにお祭りがあるらしく、街はどこなく活気があふれている。

聖アテナ様をお祭りするらしい。

聖アテナ様とは、この地に精霊の恵みをもたらした女神らしく、けっこうでかい祭りになるみたいだ。


祭りを1週間後に控えた日の夕方、エミリア様とシルバード様が会いに来た。


「お久しぶりね」


「お久しぶりです、エミリア様、シルバード様

よくここが分かりましたね?」


「ええ、ガッリーニさんにお聞きしたの」


「え? アンドレに?」


「いいえ、お父上に」


「それで、なにかご用意でも?」


とりあえず入ってもらって座ってもらった。


「もうすぐ、聖アテナ様の誕生祭があるわ」


「そうですね、俺もイリアも楽しみにしてますよ」


サラサラの金色の髪をかきあげながら、

「それでね、教会からもバザーをやろうと思っているの」


スゲー!! やっぱ公爵って聞いたからだろうか、オーラが違うね

「で、アズマくんにプリンを作ってもらえないかとおもって」


「え? でも材料が集まらないことには……、あと器も」


「材料や器、売り場などはこちらで用意する。

どうだ? やってもらえないだろうか??」


シルバード様?? ちょっと殺気だってません??

普通の子供にそんな対応したら泣いてますよ。


「いいですよ、教会の方にはお世話になりましたから」


「何個くらい作るつもりですか? 100個くらいですかね?」


「100個!?」

エミリア様が睨んでる

多かったかな?


「足らないわ、全然足らない。 300個は用意して」


「300!?」

マジか、そんなに!?


「そんなに売れるんですかね??」


「売れなきゃ売れないでいいのよ」

ニッコリしながら言ってる。


「そんなもんですかね」


「1個5メセタで売ろうと思ってるの」


「5!? 高くないですかね??」

この世界の貨幣価値1メセタ100円ってところだ、物価は日本より安い。

5メセタもだせば、ランチ1食分が買える。

ちなみに、1メセタ以下は貨幣ではなく、綺麗な石や貝殻ちょっとした物々交換みたいな感じで取引されることが多い。

だから必然的に知らない人には定価で、顔見知りには1メセタ以下は取らないみたいなことが良く行われている。


「あら? それでも安いほうよ。教会のバザーだから寄付するんだし。

もちろんアズマくんには報酬を支払うわ」


「わかりました、やらせていただきます」

そうだ!! まだ祭りまで時間があるちょっと工夫したい。


「ただ、ちょっと工夫したいんですよね」


「それで、この前お会いした薬師の方を紹介してもらえないでしょうか?」


「アデルさんを? いいけど……薬でもいれるの?」

不安そうに聞いていた。

「いえ、さらに美味しくするんですよ、薬師さんが持っていればの話ですけど…」


「わかったわ、ただアデルさんは西の正門から入ったところに店を構えているわ。 だから地図を書いておくわね。

それから、西の正門を通る時に普通は税金を納めることになるんだけど、これを見せれば通れるようにしておくから」


そう言って彼女は自分の首に着けていたネックレスを、俺に首に着けてくれた。

彼女の温かさを直に感じて、ドキッとした。


イリアがこっちを見ている。

「後で着けさせてやるからな」


「いい!!」

プイッっと目線を外された。

あれ? 興味あるんじゃないの?


それからすぐに二人は帰っていった。


次の日、早速アデルさんに会いに行く。

ちゃんとお礼言ってなかったからな。


門を通る時にひと悶着あるかとおもったが、すんなりといけた。

公爵家のペンダントもってるのがみすぼらしい格好の子供なのに。

その辺も手を廻してあったのだろうか。


俺とイリアは初めて壁のなかにはいった。

馬車4台が離合できる広さの石畳の道が真っ直ぐ王宮まで通っている。

もちろん、王宮都の間にはあと2つの壁と1つの堀を越えなければならいないらしい。

アデルさんの店は大通りの宿場街を2つ入った通りにある、割りと小さな店だった。


「こんにちはー」


「いらっしゃい、あら? お使いかな?」

30過ぎくらいの黒髪のお姉さんが対応してくれた。


「すみませ、エミリア様の紹介できたアズマと言うものです」


「あら、あなたが!? ちょっと待っててね、あなた~、アズマさん見えられたわよ~

しばらくすると、ガタイのいいおっさんが奥から

出てきた。


「キミか……」

割りと強面の顔が申し訳無さそうにゆがむ。


「その節はありがとうございました、お陰で妹も元気になりました」

イリアをちらりとみると、

「ありがとうございました」

丁寧にお礼をいってる。


「いや、いいんだ。 それよりも……その……すまないことをした。

薬のこととなるとついカっとなってしまったのだ」


「まさかこんな子供を殴っちゃうとはね……、おばちゃんがしっかり叱っておいたからね」対応してくれたお姉さんがウィンクしてくる。

夫婦なのだろうか。

アデルさんはバツが悪そうにお姉さんをみてる。


「いえいえ、俺の方こそあんな風に叱ってもらって……自分のしたことを考えて怖くなりました……」


「あんた……」お姉さんは少しビックリした顔をしてる。

どうしたんだろうか?


「そうか、そういってもらえるとありがたい。

で、今日は薬でも必要か?」


「あぁ、薬というか甘い香りがする薬草ってありますか? 細長い豆のようなやつで乾燥してあって、中に小さな黒いつぶつぶが入っているようなものとか……」

そう、バニラビーンズを探してみようと思って来たのだ。


「?? う~ん、形状からしてヴァポナかなあ」

そう言いながらアデルさんは茶色い細長い豆みたいなもの出してきてくれた。


「確かに、香りがするが……、精神安定などに効果がある、これかな?」

手渡されたそれの香りを嗅いでみた。

微かだが、バニラの香りがした。


「あ、これでいいです」


「5本くらい欲しいんですけど、これ取りすぎたら危ないとかありますか?」


「5本くらいなら、そのまま食べなきゃ大丈夫だろう。

なんに使うんだ?」


「今度のお祭りで、教会からバザー用のお菓子を作るように言われていて、それの香り付けに。

あ、そうそうこの前のお礼にバザーで出すものと同じお菓子をを持ってきたんで、食べてください」

お礼にプリンを作ってもってきた。


「いくらになりますか?」


「支払いはエミリア様に頂くようになっている、そう言ってくれといわれている」


「そうですか、ありがとうございます」


とりあえず、バニラビーンズは手に入ったのでよかったが、香り弱い……。

これで大丈夫だろうか?

まあ、なけりゃないでいいか。

お礼を言い店から出て行こうとした時だった。


「なーんか、旨そうな匂いがするな」

店の奥からさらに一人、身体つきのいい赤毛の男がぬらりとでてきた。


「これかぁ」

そう言うとアデルさんに渡したプリンを手に取り、そのまま口に流し込んだ。


「なるほどなぁ」

俺とイリアの方を見ている。


「おい!! お前出てきてだいじょうぶか?」

アデルさんが赤毛の男を心配している。


「お前がエミリアとシルバードが言ってた、子供か?

俺の名前はリナルド・レンツィだ、よろしくな!」


エミリア様の知り合いだろうか?

リナルド? どっかで聞いたような……。

「よろしくお願いします」


そう言うと、イリアが

「お兄ちゃん、リナルドさんってアンドレが言ってた勇者って人?」


ああ!! そうだ!! この前西の正門に来てるって勇者の名前だ!


これが俺と[爆炎の勇者]リナルド・レンツィとの出会いだった。


お読みいただきありがとうございます

良ければ、感想などいただけたら幸いです

勇者の2つ名とか、なかなか難しいですね

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