第15話
今俺は穴を掘っている。
木の根元によくいるカブトムシの幼虫みたいやつを探すためだ。
正確にはなんの幼虫かは知らないし、カブトムシのそれより2まわりも大きい。
「はい、6匹目!!」
前世の記憶がある俺だから、虫だけは食べないと思っていた時期がありました。
ところがある日、あまりにも空腹だったので食べてみたらこれが旨かった。
あとで聞いた話によると、冒険者のなかでも割りとメジャーな食べ物らしい。
今日はサリーナさん、アンドレ、イリアとで森に来ている。
森で獲物を狩って、BBQでもやろうって話だ。
サリーナさんはポッポを2匹狩ってきた。
あんなすばしっこいやつを、罠も使わずによく狩れる。
右足が義足といっても、俺はまだ稽古で一本も取れていない。
「卵もあるわよ~」
そう言って4個ほど卵をだしてくれた。
「帰ったらプリンよろしく~」
どうやらポッポ相手に本気だしたみたいだ。
アンドレは魚を捕ってきていた。
「沢カニがいたんでとってきたよ」
沢カニっても甲羅の部分だけで30センチくらいある。
「デカイなあ、沢カニ」
イリアは野イチゴみたいなものをサリーナさんと一緒に捕ってきてくれていた。
網なんてないから串焼きスタイルだ。
「うまー」
幼虫はそのまま焼いて、硬い頭の部分を外して食べる。
中がクリーミーで旨い。
「熱い、うまいー」
アンドレがカニの脚を折ってから食べている。
自分で捕ったものは味も違うのだろう。
「やっぱりみんなで食べる食事は美味しいね」
イリアが笑う。
「久しぶりに、パーティー組んで冒険してる頃を思い出したよ」
サリーナさんは懐かしんでいた。
家に帰ってからプリンを作りつつ、幼虫食べて思いついたお菓子を試作してみた。
トウモロコシ粉に水をいれホットケーキみたいにして焼いたものに、カスタードクリームを作って野イチゴをいれ挟んでみた。
ワッフルってやつかな。
「うーん、やっぱり砂糖じゃないから甘さがなんか違うけど……」
「はあぁ?? こんなに美味しいのに違うとかバカじゃないの??」
サリーナさんがマジでドン引きしている。
イリアもサリーナさんもアンドレも幸せそうな顔をしていた。
それからサリーナさんは夜勤だと言って、でかけてしまった。
イリアと2人で寝ていると、話しかけてきた。
「楽しかったねぇ~、美味しかったし」
「ああ、美味しかったし楽しかったな」
「またやりたいね」
「またやるさ」
「絶対だよ」
「絶対だ」
そのあとイリアはしゃべり続けていたが、俺は眠くてよく聞こえてなかった。
コンコン
広い屋敷の中でドアをノックする音が響いた。
「入れ」
若い男の声がした。
部屋に入るとそこは執務室になっていて、机には金髪の美少女が座っている。
その隣には銀髪の青年が立っていた。先ほどの声の主はこの青年だろう。
カッカッカ
部屋に入った者が歩くと、右足から硬いものが床を叩く音がでる。
「こんな夜中にすみません、こんな時間じゃないと目立ちますからね」
金髪の少女が言う。
「いえ、特にこれといったことはありません」
部屋に入ってきた者が答えた。
「魔法の件、だれにもみられぬ様にな」
銀髪の青年が言う。
青年に言われ、気まずそうに答える
「はい、あ~、えっと……」
「なにかあったの??」
「報告するほどのことじゃないんですけど…今日彼の方が新しいお菓子を作ってくれたことくらいですかね」
「なんですっって!!」
ガタッ!!!
少女が椅子から立ち上がる。
「それで、持ってきたの!?」
「いいえ、食べてしまいました」
「な!? 持ってきてないですって!? シルバード!!」
青年はその長い剣を抜き
「その髭、切り落とされたいらしいな!! サリーナ!!」
「ひぇえ!! で……でもプリンは持ってきたんで!!
ごめんなさーい!!」
その夜、屋敷では「ぐぬぬ」と唸る獣の声が聞こえたと使用人たちが噂してたとか………。
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