白色玉 オーナ: 佐藤 哲太(3)
「じゃあね、また遊ぼうね! だってさー。そんなにかっこよかったかなあ俺」
「そうは言ってないぞ、哲太。もう一度言うぞ、そうは言ってないぞ哲太」
にやけ顔の俺の顔が夕日に照らされた。俺と幸太郎は二人で並んで歩いていた。
「哲太は里美ちゃんとは、小学校の頃から一緒なんだよな?」
「ああ、里美ちゃんが6年生の時にこっちに転校してきたんだけどな」
木野里美は俺らのクラスの女子。清楚でおしとやかなショートカットの黒髪の美少女はクラスでも人気者だ。
里美ちゃんや幸太郎、またクラスのやつらとのザリガニ釣り大会は早くも時間が過ぎた。
「それより哲太お前、早く帰んなくて.....」
「そうだやべっ、早く帰ってこいって言われてるんだった。じゃあな!幸太郎!」
「おつー」
おれは家の方向につづく砂利の坂道を駆け昇って行った。
「遅いぞ哲太ー」
家の門を通るとすぐに庭から優しい父の声がした。
「あれ?母さんは?」
あさは居たはずの母さんの姿が見えなかった。
「今日は急に母さんに用事ができてな。夜ご飯食べるころには帰ってくるよ。それより、荷物を置いたら、父さんの書斎に来なさい。」
俺は言われた通り、かばんを部屋に置くと2階の父さんの書斎に向かった。父さんの書斎はめったに入ることができない。「入るな」と父に言われているのとそもそも鍵が開いていないのだ。父さんが部屋にいる時もいないときも常に鍵がかかっており、父さんしかその部屋のカギを持っていない。他の部屋には鍵などないのに。
書斎に入ると、父さんは仕事机の前の椅子に座っていた。その前にはもう一つ椅子があった。
「座りなさい」
小さいころに来たことがあるのか、どこか一度来たような感覚をこの部屋は与えた。
「悪いな、友達と遊びたかったのに。」
いつもの父さんだった。この部屋に入ってから否、帰ってきてから父さんの声はいつもの父さんなのに、顔は深刻であった。
「早く話を済まさなければならない。早速本題に入る。これから言う事は誰にも言わないと約束してほしい。」
父さんの声までもが深刻な声へと変わった時、映画のワンシーンに出くわしたかのように俺は息を吐くのを忘れるほど肩がこわばった。
「おい、それより哲太は好きな奴とかいるのか?」
いきなりの不意な質問におどろいた。
「え...いや別にいないけど。。。」
ばれないように目をそらした。まさか、父にそんなことを聞かれるとは思わなかった。このデリカシーなさ男め。
「ふっはっはは。デリカシーなさ男で悪かったなあ。そうかお前の好きな奴は里美ちゃんと言うのか」
「.....!?」
「まあ、悪かった。ちょっと体験させたんだよ力のな」
そして父は静かに仕事机の引き出しから白い石を取り出した。
「これって....」
「哲太は覚えてるか?前に聞かせた、あの伝説の話を」