空色玉 オーナー:ジョニー高山(2)
おばちゃんから語られた一つ一つは信じ難いものでだった。宝玉という不思議な玉のこと。そして、おばちゃんが高校時代からの親友たちと共にその玉を、悪い組織から遠ざげようとしていること。
こんなぶっとんだ話でも、なぜかおばちゃんの真剣な目から語られる話は、なぜか信じなくてはいけないような気持ちにさせた。
「それで、この玉でおばちゃんは未来が見えるってこと?」
「ああ、なんでもかんでも見えるってわけじゃあない。未来をいくつか予測して、誰が何を選択すれば、どんな未来になるのか見えるというわけだ。遠い未来が見えるときもあれば、近い未来が見えるときもある。後、見える未来は突然降ってくるようなもので、コントロールできるわけじゃあない。まあ、先代はコントロールできたみたいだから、慣れればできるのかもしれんが」
「そ、そうなのか」
「そこで私はこの力を、ジョニー、あんたに託したいと思ってる」
ぶっとんでた話にさらに輪をかけてきたおばちゃんの話に耳を疑った。
「はあ!?なんで俺が!」
「宝玉には得て不得手があってね。あんたなら、この力を使いこなせる。その未来が見えて...」
そこまで言った瞬間、おばちゃんの目が見開いた。
「私は昔からどんくさいが、ここまでとはね....。予測よりはるかに早い」
そして、すぐにおばちゃんはカウンターから店の扉に向かい内カギを閉めた。
「おばちゃん!なにやって....」
「もう、時間がない!私もすぐに向かうから、この宝玉を誰にも見られないように持ってあんた、玉東駅に向かいな。お金なら貸してあげるから」
「ど、どういうことだよ!なんでそんなところに!てか、急にどうして!」
「そこにさっき言った私の仲間が待ってる!私も....」
「・・・?」
「私もすぐに追うよ。安心なさい」
「いや、どうにもわけが」
「さあ!早く!裏口から出てくんだよ!決してこの玉を誰かに見られちゃいけないし、取られてもいけないよ」
そういうと、おばちゃんは空色玉を俺に握りしめさせた。
「でも!おばちゃん!」
「さあ、行くんだ! 男は腹くくってなくても、泥まみれになろうが、何だろうが、やるときはやる生き物だろう!?」
「・・・!!」
おばちゃんの凛とした姿に俺は息をするのを忘れた。
「わかった!必ず!!」
キッチン奥のドアノブに手をかけようとしたとき
「私を頼ってくれてありがとうね。ジョニー。息子を思い出すようだったよ」
「何を言って...」
「さあ!行きな!!時間がないよ!」
「お、おう!!」
そして、俺は勢いよく裏口から近くにある森田駅へと駆け出した。その駅から玉東駅までは一時間弱。俺は緊張なのか興奮なのかわからぬ胸の鼓動を感じながら、宝玉をもう一度握りなおした。
その直後、遠くからパトカーのサイレンが聞こえたのが妙に不気味だった。