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激しい憎悪

ここから廃工場はかなりの距離がある。

二人は病院から抜け出して止まっているタクシーを呼ぶとそのまま乗り出した。


その間に光楽がさっき起こった事柄を全て語る。

あの忌々しい女性に訳のわからない能力で奇襲に合い、自分は危うく死ぬところまで追い詰めらた事。

そしてじぶんにも何らかの能力を持っていること。

祈りの精霊と名乗った輩はその部類に入るだろう。


「大方話はこんなものだ」


説明をいい終えた光楽は不安で堪らないでいた。

この話を聞いて愛想をつかれたらどうしようと心臓がバクバクしている。

でもそれは仕方がないことだ。


巻き込もうとしてるんだから。

愚痴られようが殴られようが光楽には反抗する余地は与えられていないしする気もない。


それでも光楽は陸にしか頼めない事がある。

それはきっと陸自信も感づいて知ってる事だ。


「何しけた顔してるんだよ」


陸が言った。

光楽はよく人にお前の表情読みづらいなと言われるが陸と鈴だけは自分の表情を分かってくれるらしい。


それが友達なのかなと思うものだが、今こうして二人を巻き込もうと、いや、鈴に対してはもう巻き込ましている。

そう思うと胸が痛い。


「だってお前を巻き込もうとしてるんだぜ、それなのに文句1つも言われないでいると何か死刑執行猶予をまたされているみたいで、なんかこうモヤモヤするんだよ」


言うと笑みを見せては陸は鼻で笑った。


「お前ってバカみたいに律儀だよな。バカな俺が言うのも何だけどよ」


自虐的に言い話を続ける。


「一人では解決出来ないと思った時には別に巻き込んでくれていいんだぜ。俺にとってダチに頼られるのは嬉しい事だしな。まぁお前の言ってくれたその事柄はちょっと中二病的でついていけねぇけどそれでも全てを信じてやる、笑ったり蹴落としたりはしないさ。だからそんな自分を責めるな」


言い終わると軽めに光楽の胸に拳をぶつける。

光楽は不安で冷たく冴えきった心の中が暖かくなるのを感じていく。


そして一度殺されかけた自分を見つめ思う。

あいつは強いと、果てしなく勝てる気がしないと。

だけど、それでも抗ってやる。


友達誰一人と傷着けずに助けてやると。

その決意を頭の中で連想を続かせて、新たな友達になったもう一人の人物にも熱く燃えたよな覇気のある言葉を言う。


「ミト、支援は頼んだ」

『うん、任せて』


ミトと名乗る祈りの精霊。

光楽の傷を癒し、尋常じゃない刹那とも言える回復力は信じがたいことに痛みもなく傷も塞がっていた。


ミトはこことは違う別の世界に住み着いて、その他にもいろんな精霊も滞在している。

そして人の域には絶対に入れない力を持ち、一人一人の精霊はそれぞれに役割を持つ。


その1つがミトが使う回復支援能力だ。


光楽はその事を完全に理解しているわけではなく、ミトも自分の能力しか教えていない。


でも光楽はそれでもいいと思っていた。

今という現実を受け入れている、ということもあるのだが第一はやはり鈴だった。


精霊だ能力だそんなまどろっこしい言葉を今は捨てて鈴を救うことだけを考える。


それが光楽だった。


だから光楽はまだ多数の精霊がいることも、その多数の精霊が光楽に興味を抱かれていることも、本人はまだ知る余地がない。


「お客さん着きましたよ」


廃工場に着きいよいよ戦闘になる。

眠りから目覚めてミトに鈴の全ての事情を聞いた時から凄く手が震えていた。


パーカーを着た女性にどんな糸で鈴拐ったのかは知らないが、鈴を巻き添えにしたことはとても許せない衝動を襲う。


タクシーから降りて、廃工場の扉目掛けて走りながら光楽は言う。


「陸、お前は何もしないていい、真っ先に鈴の所に掛け走ってくれ。そして思いっきり抱き締めてやってくれ。今あいつはとてつもなく不安な衝動に圧されているから、涙1つじゃあ鈴は耐えられない」

「了解したがかっこいいなお前、じゃあお構い無く鈴の涙は俺が拭き取るぜ」

「好きにしてくれ」


これが光楽の陸にしか頼めない事だった。

予想通りという顔で陸は了解して扉を目指して掛け走り続けた。



5



見知らぬ建物の中にいると気づいた時はそう長い時間は必要なかった。

鈴が最初に感じたのはもう使われていない建物。


そして目で見る限り壁が若干錆びかかっており、鉄板、レンガ。

そして建物を支える柱がある。


その時点で廃工場と感づいた鈴はどうして私がここにと同様で目が泳ぐ。


カシャ


そんな音がした。


音は自分の身近で響き、まさかと唾で喉を鳴らす。


今自分は学校にあるような椅子に座っているということは分かる。

その流れ的に……


カシャ


また響く。

意識してしまったらもうどうしようもなく、手や足に冷たい何かに触れていると分かってしまう。

嫌だ、そんな筈がないと首を降り事が起きた事を認めなかった。


(見ちゃあ駄目だ!)


そう思うのだが一度聞いてしまった音に好奇心をどうしても気になってしまう。


鈴はもう一度喉を鳴らし、覚悟を決めた。

ゆっくりと恐る恐るその目で見たものは、自分が思っているものと一致してしまった。


「……あっ、ああ……」


手に鈍く光を見せる手錠、それが足にも着いている。

この状態から自分は監禁されているんだと分かってしまった。


「どうして……」


身体が震え、頭が真っ白になる鈴は涙腺に涙が溜まり、溢れ出すように涙が流れた。


「ああ、やっと目覚めたんですか?」


突然響いた声。

スズメのような綺麗で濁りなく透き通った声が鈴の鼓膜を刺激する。


瞬間に鈴は怯えた鹿のようにビクッと体を震わせて、どんな相手か怖くて顔を上げる事が出来ない。


ただ、広い空間にコツコツと足音の響くこの廃工場で、どんどんこちらに近づいてきているということは分かってしまう。


耳を塞ぎたい。

でも生憎と手には手錠をつけられている。


「そう怯えなくていいですよ、これと言ってあなたに危害をさせるつもりはありません、ただあなたには餌として利用させてもらいますが」

「い、いや……だれか…」


青年は鈴の目の前に立ち腰を屈む。

瞬間に鈴の視界に入ってしまった。

赤いパーカーを着た青年の姿が。


青黒く光るその瞳は、どこか不気味な印象を抱かせる。

凛とした顔柄はとても無愛想でどこか光楽に似てるとも思ってしまう。


いや、一緒にしちゃあ駄目だと鈴は心の中で振り払う。

この人は悪党、私を誘拐した悪党なんだ。

心の中で怯えながらもキッと目を鋭くして目の前の青年に聞く。


「どうして……こんなことをするんですか?」


声が震えながらも力強く言えた。

青年は少し笑みを見せて答える。


「目的の為なんですよ。あくまでも能力者同士僕としては正々堂々と戦いたい。だから君を利用します」

「能力者……ってなんですか?」


訝しく首を傾げる鈴は当然ながら何の話か分からない。

それを分かっている青年は話を続ける。


「そうですね、あの場面で見た僕の目ではとても信じられない光景でした。彼は死に様に息を引き取るどころか身体が再生したんですよ、あれを能力者と言わずなんと言うんですか」


「だからなんの話を」

「君の友人、あれはもう人間じゃないって話です」


鈴の友人と言える人は指で数えられるほどの数人しか心当たりがない。


「う、嘘だよ!」


だからその数少ない友人はかけがえのない友達なのだ。

青年の言う言葉を信じられる筈がない。

出任せに決まっていると鈴は自分に言い聞かせた。


「なんでそんな嘘をつくの……!」

「嘘じゃないです」


あくまでも青年は言い張るようだ。

こっちはそんな与太話信じないからなんとでも言えとおもうのだが、ふと鈴の記憶が一部浮き出てきた。


(いつ私はこの人に誘拐されたの……?)


とのことだった。

頭をフル回転させて浮かび上がりそうな記憶を呼び覚ます。


学校の帰り、寄り道に本屋に寄ると二人に言い先に帰らせてから数時間後、鈴は今日新刊として発売された本を楽しみにしていて、念願に手にいれた本を購入してからの行動はもうテンションがはつらつだった。


帰り際に陸の家を通り越す場所に家があり、近くに電車も通る。

道をたどって行くと、ふと鈴の視界にある人だかりの出来た姿が見えた。


好奇心に襲われた鈴は購入した袋詰めの漫画を手に持ちながら人だかりに近寄る。


そこで見たものは倒れた光楽の姿だった。


「あれ……?」

「心当たりがあるんじゃあないですか?」


そうだ思い出した。

と瞬間に心が氷に纏ったように冷たく冷めきり、暗闇に堕ちるかのような感じに視界が黒く霞む。


「私、こうちゃんが倒れている姿を見て叫んだんだ……」

「そそ、だから彼の友人らしき君をここに連れてきたんだし。ついでに言ってあげるとあれ殺ったの僕なんです」

「え……?」

「意外に呆気なく勝負が終わりました、僕としては失望も良いところでしたし無駄足だったんですが、あんな身近でしかも10分もたたずに出血が止まるところを見せられるなんてそんな彼でもすごい力があると分かってしまい、うずくんですよねああ早く力を試したいな、彼は不死身みたいだし本気出しても死なないだろうな」


青年は鈴のポケットを探りケータイを取る。


「彼の名前光ちゃん? でしたよね……あった」


メールアドレスを見つめそれらしきを名前を見つけるのは容易かった。


「か、返して……!」


むなしくも鈴の声は届かず、ケータイからトルルルッと音声が響く。


瞬間に扉の向こうから着信音が響いた。


「んー?」


ここは廃工場なだけあって人が通ることは滅多にない。

だから外からチャラチャラと響く着信音は響くはずもなく、ましてや青年が掛けた電話ともあまりにもタイミングが良すぎる。


訝しく青年はスライド式扉を見つめているとそれは開いた。


暗かった空間に扉が開いたことに光が差し込まれて青年は目を手で覆い隠す。


光になれてゆっくりと扉の方へ注目すると、そこには険しい表情をした二人組、光楽と陸の姿が見えた。


「こうちゃん、りっ君!? 来ちゃあ駄目だよ!」


目が赤く腫れ泣いていた痕を残しながらも言うが、その言葉は光楽と陸にとって火に油だった。

ズンズンと二人は中央まで中に入り立ち止まる。


「「お前、鈴を泣かせたな」」


ドスの聞いた声で二人は言葉を重ねあった。

青年は口を緩ませ言い返す。


「クハッ、これは傑作だ」


三人の示す目線に火花を飛ばして、光楽にとってリベンジの幕を開けようとしていた。














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