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価値を知るもの  作者: 勇寛
いんたーみっしょん
87/111

第82話 絶対阻止防衛圏、若しくは一枚の布地について 【DENUDE P】

誤字・脱字ご容赦下さい

『ばんごうっ!』

「がぅ!」

ぼふっ!

「サンッ!」

「ヨッツ!」

「ゴ!」


 キール隊長が点呼を行う。

 規則性がないながらも一応点呼の様式には見える。

 元気よく隊員達がそれに応え、手を挙げている。

 各々が門の前に準備万端の状態で出発の時を待っていた。

 この場にいるのは街に残った「キール冒険隊」メンバーであり、それ以外のメンバーはすでにスクネのいる湖畔に拠点を移している。

 流石に街の入り口近くにゴブリンの群れが溜まっていると皆が不安がるのだ。

 深夜のコンビニ前に屯するあれと同じものと考えてもらえればいい。

 "多分"大丈夫な気はするが、"もしかしたら"何かあるかもしれない。

 その不安感はあまり好ましくないものであり、地域のコミュニティとしては排除すべき案件に容易に上げられる。

 感情的には、"なんか怖い""群れるな、帰れよ""蛾じゃあるまいし"的な負の感情が巻き起こるわけだ。

 いまのマドックはなかなか無いクラスの大騒ぎの後という事もありそういった感情が暴走しやすい土壌ができていた。

 まあ、そういう訳で、あんまり大人数で門前にいるんじゃねぇよ、という内容がオブラートに包まれて孝和に連絡が行き、大部分は街の前から撤収していった。


『では、こんかいのぼーけんのもくてきを、はっぴょーします!』

「ギャギャ!」


 ゴブリンの横にいるボアは暇そうにしていたり、眠りこけている者もいるが、あくまで行先を指示するのはゴブ共のため問題は無いと思われる。


『えーと、スクネくんにあいにゆきます!あと、ほかのみんなに、ぼーなすをとどけるのもにんむのひとつです!』

「わうわう!」


 ぺろんとポポが掲げたのは緑のバンダナ様の布地である。

 ちなみにこの場にいるゴブリン全員が腕にそれを巻いており、ボアも前掛けのような形で首が飾られている。

 ボーナスとしてゴブ達に渡される布地であるが、実際のところは目印である。

 マルクメットから、何かしら他のゴブリンと違いの分かる目印がいる、といわれたので急きょ孝和が準備した。

 布地自体はかなり頑丈であり、多少手荒に扱っても大丈夫なものを用意した。

 これを取りあえず皆の"隊章"代わりにしなさい、御揃いだから、と手渡され、キール冒険隊は湖に旅立つのだ。

 ちなみにこの隊章は孝和のお財布から出ており、マドック防衛の際にもらったお金のかなりの比重と相殺され、財政を圧迫していることを追記しておく。


「がうがう、がう、ぐるるっ!」


 ポポから指示が飛ぶ。

 端から見ると何を言っているのかまるで分らないが、ゴブリン達は自分のボアを蹴飛ばして起こしたり、粗末な水筒の水を飲ませたりと出立の準備を始めている。

 どうやら不思議なパワーで通じているようである。


『じゃあ、いってきます!』

「ああ、気を付けて行って来いよ」


 びしっ、と敬礼したポポとぐだぐだなゴブリン達は、門番の衛兵たちに挨拶する。

 ここ数日でどうも衛兵連中とは馴れたらしく、特に警戒されることもなく見送られていく。

 それでいいのかとも思うが、ディアローゼの方面からも、上司であるマルクメットからも言われている。

 "多分"いい奴らだと思うので、と。





 てくてくと歩く成獣形態になったポポの上に、シメジとキールが乗っかり移動していく。

 その後ろをボアライダーのゴブリン達が付いてくる。

 3匹に3匹のセットになった彼らは、冒険隊所属のゴブリンの中でも優秀な部類らしい。


『おお、フォーのじーちゃん、いってきまーす!』


 街の側で根を下ろしてしまったキメラトレントのフォーの横を通り過ぎる。

 風もないのに枝葉が揺れる。

 恐らく、応えてくれたのだろう。

 樹木側はここ数日の好天で青々と葉を茂らせている。

 その幹を浸食するように菌糸が覆っているが、菌糸側もえらく立派なキノコを幾株も育てている。

 ただ、あの決闘の夜まではその巨木がぽつんと立っているだけだったのだが、今では少し騒々しくなってきている。


「あー、あいつら。エメスのパーティーメンバーですよ」

「へぇ……。そうなのか、どこ行くんだろうな」

「まあ、オーガの奴もあいつらの関係だろうし、そこでも行くんじゃないか?」

「まあ、俺らに関係ないしな。よし、休憩終わりにして作業続けるぞ!」

「「うぃーーっす!」」


 木陰で休息を取りながらキールたちを見ていた男たちが、どっかりと下ろしていた腰を持ち上げ、各々の得物を掴んだ。

 ハンマーにツルハシ、スコップ、鉈などである。

 ぎこぎこと音を立てながら木材の加工される音も聞こえてくる。

 ちょうど先日の神前試合のあったその場所に今、簡易ではあるが掘立小屋や座席、そして石造りの舞台が出来上がりつつあった。

 土木関連の男たちに交じってエメスが大きな石を運んできているのが見える。


『エメスくん、がんばってるね。すごいなー』


 ほえほえと感心しきりのキール。

 石を運び、地面を均し、木を切断する。

 しっかりとその場にエメスは土建作業員としてなじんでいた。

 そのエメスの他に、この場に似つかわしくない小奇麗な格好の者たちもいる。

 恐らくは神殿関係者であろう者たちであるが、未完成の舞台に上がり、忙しなく作業を行っている。

 たまに土木関係と話し込んでいるのが何か不思議な感じもする。


『りっぱなの、つくんなきゃーっていってたもんなー。いそがしーんだ、みんな』


 またもほえほえしながら感心するキール。

 あの外連味溢れる大舞台をした結果、その場に見事なくらいに神威が現わされてしまった。

 最終的には決闘者双方に神々の祝福がなされ、その場にいる全員が文句のつけようが無いレベルで神々の意思を体感した。

 まあ、要するにこの場は、そこらの町村落の神殿関係の建物をぶっちぎりで抜き去って"霊験あらたか"な地となってしまったのだ。

 その地をただの更地のままにはできないのが人という生き物だ。

 その日の朝には街の有力者・旅の商人・冒険者・少々怪しい奴ら等々が大挙して、ディアローゼの元に"地元の発展に貢献したい"との高潔な意思と、"いっちょその利権に咬ませて欲しい"という欲望に爛れた要求をぶち上げたわけである。

 ちなみにどちらがより比率が大きかったのかについては言うまでもないと思う。

 そこにいた全員が"高潔な意思"を示したのだ、"表面上は"。

 たとえ、今現在舞台近くにフリマじみた露店やら飯を売り歩く売り子が屯し始めていたとしてもだ。

 そう、どう見てもオッズ表にしか見えない粗末な立て看板の下にユノがおろおろしていたり、何かを必死に客に売り込んでいるように見えるカナエの姿が見えたとしてもだ。

 ……きっと大盛況となることだろう、何がとは言わないが。

 

『おひるね、できないし。しずかなほうが、よかったのになぁ…』

「わぅー」


 そのせいで良い感じのお昼寝スポットが無くなり、今日は冒険になってしまった。

 とはいえ、孝和の任務もまた大切。

 暇つぶしも兼ねて、全員の意見が一致したのだった。


『みずうみまで、れっつ・ごー!』

「「げぎゃげぎゃ!!」」


 そういう訳でキール冒険隊は進むのである。





「時化てやがるぜ、全くよぉ」


 ぺっと地面に痰を吐き捨てると、森の中で屈んでいる男がつぶやく。

 同じく姿を隠している者がそれに気づき、話しかけた。


「仕方ねえよ。まさか祭りの真っただ中にアンデッドの暴走なんざ思いもしなかったじゃねえか」

「そりゃそうだがよ?」


 ガシガシと頭を掻きながら、そこからはフケがぼろぼろと落ちる。

 身を包む姿は覆面に抜身の剣で怪しさ全開で、さらに握る剣は錆が浮きどう見ても真っ当に生きている類の人間とは思えなかった。

 その周りの者たちも同様である。

 ボロを纏い不衛生な装束であるが、全員が何らかの殺傷可能な武具を握りしめている。

 正しく彼らは盗賊・山賊の類であった。


「あの時期に本当はもっと稼げるはずだったんだ。その実入りが無かった分のしわ寄せが今来てて。だからってすぐに動くと逆に狩られるってのはわかってんだろうに」

「街の奴ら徹底的にこっちを潰してきやがったからな。糞共が!」


 ぎりと歯ぎしりが鳴る。

 マドックのゴタゴタの後、神殿・衛兵・冒険者が連帯して、周辺の地域にアンデッドが残っていないかが徹底的に調査されたのだ。

 大規模なアンデッドの群れで、周辺にもしそういった存在が残存していては安全を確保できないため、虱潰しにローラーが行われた。

 ただし、神殿関係者と衛兵・冒険者のスタンスは若干異なる。

 アンデッドの殲滅を目的とした神殿と、地域の安定を求める衛兵・冒険者は似ているようで違いがある。

 この神殿からの人的援護をもらえる機会に、周辺の脅威を排除することを衛兵・冒険者が計画・立案し、神殿もそれに同意。更にはその支援を商人やそれ以外の"真っ当に生きている人間"が行った。

 要するに、アンデッド殲滅の名のもとに、社会的な害悪の徹底的な排除が行われたのである。

 マドックの盗賊ギルドもいるにはいるが、正統派を名乗る彼らはあまり街の外での暴力的な"シノギ"を好まなかった。

真っ当な商人たちに見える者の中には、盗賊ギルドの息のかかった者もいた。

 流通都市であるマドックのお零れにその原資を依存する彼らにとって、流通の妨害を行う戦闘的な盗賊団は根本で相容れない。

 金はどんな手段で手に入れても金であるので、表だって非難はしないながらも双方ともに嫌悪感を持っているのだ。

 要するに同業者からも、いわば切り捨てられた形になる。

 だからこそ、彼らは追い込まれていた。


「小せぇ……。荷もあんまりなさそうじゃないか?」

「だが、確実に手に入れることができる獲物だ。せっかく巡回ルートの写しを手に入れられたんだ。今日くらいは美味い飯食いたいだろう?」

「酒ももうそろそろ切れちまうし。アンデッドのせいで計画が狂いっぱなしだ」


 遠目にロバにひかれた荷車が何台かと、護衛数人が見える。

 この森のルートは一度"浄化"済みのため、巡回ルートとしては頻度が少し下がっていた。

 それに加え、定期的な計画になればなるほど情報が外部に漏れる危険度は高くなる。

 今回この盗賊連中が巡回ルートを把握できたのもそこに原因があった。


「配置、完了してるな?」

「ああ、向こうも気づいてるみたいだ。問題ねぇ」


 ハンドサインでこちらと、道を挟んで逆サイドの仲間に襲撃のタイミングを計る。

 何せ飢えている。

 正しく食い物が無く、そして暴力の陶酔に。

 そういう点でいえば獲物とされた集団は不運であった。

 偶然巡回の隙間に当たり、盗賊が襲うことに躊躇わない程度の人員であり、盗賊たちが飢えていたのである。

 そうこうしているうちにロバにひかれる荷駄が見える。

 食料品をメインとした行商人だろうと思われた。

 それを守るのは数名の冒険者と、荷主として荷台で轡を取っている行商人たち。

 イケる、と盗賊たちが判断した。


「かかれッ!!!奪えるものは奪ってとっとと逃げるぞ!!!」


 飛び出していく盗賊たち。

 各々の得物を握りしめ、油断なく行商人を襲う。

 中にはボロではあるがローブを着こみ、杖を持つ者までいる。

 魔術師くずれまでがいるこの集団は、ポート・デイの盗賊ギルドの混乱から逃げてきた者たちが核となっていた。

 件の混乱で彼らは狩場をこのマドック周辺に変えざるを得ず、この周辺の小さな盗賊を吸収しつつあった。

 要するに、ベテランの盗賊であり、強奪に関してはプロ中のプロ。

 迅速かつ徹底的な収奪を旨とした部隊展開は素早く、あっという間に行商は囲まれてしまう。


「さて、お前らには荷物ごと纏めて置いて行ってもらいたい。ああ、生き死にの話しはそれが終わってからでいいよな?」

「く、くそっ!盗賊狩りが進んでるって聞いたのに、運が悪い…」


 行商側の戦意は未だ保たれている。

 冒険者達は行商とは元々地元の同じ顔見知り同士であった縁で、この護衛任務を受けた。

 行先も実はその小さな村であり、全員が帰郷を兼ねての護衛となっている。

 仕送りやら何やらでいつもは持たない量の荷駄も積んでおり、これを奪われることは実質その村の生命線を断たれるに近い。

 抗わねばならない理由がその荷には存在していた。


「抵抗するってんなら、どうなっても知らんよ?俺たちの機嫌が悪くならない選択がお勧めだがね」


 へらへらと笑う盗賊。

 悔しそうにそれをにらむ行商団。

 覆らない戦力差。

 じりじりとした緊張の中、行商のリーダーが荷を一部残すという折衷案を提示しようとした、その時である。


『ぼく、そーゆーわるいこと、しちゃだめだとおもうんだー』


 盗賊はぎょっとすると同時に後ろを振り返る。

 その視界いっぱいを真っ白に輝く魔力の輝きが覆い尽くした。





コンコン


「はーい。今開けますんでー」


 宿の裏手の勝手口がノックされ、夕食の仕込みの最中だった孝和が手を止める。

 パタパタと勝手口まで駆け出すと、ドアをがちゃりと開く。


「はい、何か御用です……」

「おい、彼で間違いないか?」

「はい、この男がタカカズです。俺、マルクメットさんと何度かここには飯食いに来てますから、間違いないはずです」

「え?」


 がし、とドアを開けた側の腕を掴まれる。

 振りほどこうと思えば振りほどけたのだが、何せ相手の恰好をみてしまった。


「衛兵さんに捕まるようなことはしてないと思うんですけど?」


 2人組の衛兵が孝和の腕を掴み、そのまま外に出るように促す。

 なんだなんだと休憩していた宿の従業員たちも、ぞろぞろと野次馬に出てきた。


「まあ、落ち着け。君は従魔士だと聞いたが確かか?」

「はあ、そうですが?」


 掴まれた腕はすでに離されている。

 どうやら強制的に連れて行こうという訳ではなさそうだ。


「その従えている者の中に、白いスライムとゴブリンとイノシシと黒い狼とキノコがいたりするか?」

「…います、ね」


 ピンポイントで何か起きていることが分かる。

 何故だろう。

 泣きたいかもしれない。


「詳細はウチの詰め所で行いたいとマルクメットより言伝を貰っている。では、ご同行頂けるだろうか?」

「うぅ、はいぃぃ」


 何したんだろ、あいつらと思いながら孝和は前掛けを、横にいた宿の従業員にわたし、衛兵についていくのであった。





「基本的人権って大切なんだけどなぁ」


 深遠なテーマを呟いてしまった。

 衛兵の詰め所はなぜか混沌とした空気に包まれている。

 視線の先には、首と手首に縄をつけられて歩く者たちがいた。

 恐らく犯罪者であろう彼らはうなだれ、とぼとぼと詰め所の中に運び込まれてきたのだ。


「全裸って、マジか」


 その男たち全員が全裸。

 いや、"男女が"であろうか。

 ぞろぞろと数珠つなぎになった男たちの後に、頭から毛布をかぶせられた者が数名連れられてきている。

 その毛布から見える足元というか腿のあたりが男性のそれではなく、若くはないが女性のそれであったからだ。

 縄がうたれた者たちは一列になる様に縛られ、つながったまま移動させられている。

 その列に繋がっているということは彼女たちも犯罪者であるということだ。


「ここまでするのか、すごいなぁ」


 異世界の流儀なのか、と思いはするが流石にドン引きだった。

 人の尊厳とかそういうことは、やっぱり考えないといけないのではないだろうか。

 すこしばかり同情を禁じ得ない。

 

「いや、あれはお前のトコの奴がやったんだが」


 詰め所に到着するなりつぶやきが耳に入ったのか、入室してきた孝和にマルクメットがそう言った。

 手にはマグカップが2つ。

 片方を孝和に渡すと自分は美味そうにその茶をすする。

 少しばかり酒精を感じるのは香りづけに何か加えてあるのだろう。


「いま、何とおっしゃいました?」

「お前のトコのキールとかポポとかシメジとかと思われる集団が、盗賊行為を働いていた集団と遭遇し、ぐうの音も出ないほどにボコボコに蹴倒して、全部ひっくるめて分捕っていったらしい、と報告を受けている」

「……冗談では?」

「目撃者がいる。ちなみに長く行商をやっている男でな、俺の知り合いだ。金に汚いところはあるが、こういった類の嘘を好む奴じゃあない」


 頭痛がする。

 まさかの地球と異世界の人権の問題ではなく、自分サイドのやらかしている問題であったとは。

 頭を抱える孝和に更なる追撃が襲う。


「一応、冒険者が街の外で不法な襲撃を受けた際の規程では、襲撃された際の入手品の所有権は撃退した側にある。今回の事例はそれに該当するだろうな。頻度としては多くないが、盗賊団が壊滅して武具がまとめて売り出されることも年に数件ある。ただしなぁ……」


 苦笑いを浮かべるマルクメット。


「さすがに容赦なさすぎるかな、これは。報告を聞いた段階だと爆笑したが、実物を見ると引いてしまった」

「確かに。俺ならパンツまでいくなんて考えませんし」

「同感だ。俺もさすがに、な」


 武士の情け、という意味の言葉がこの世界に有るかどうかわからないが少し気の毒だ。

 まさか、盗賊からひん剥くことが許可されていたとしても、全剥きするとは思わない。

 武具・財布・靴までなら何とか想像の範囲内であるが、"ぱんつ"まではいかない、いやいけない。


「容赦、ねぇなぁ……」

「容赦ないよなぁ……」



 はあ、と同時にため息をつく。


「で、キールたちは?」


 きょろきょろあたりを見渡すとそれらしき姿が無い。


「盗賊どもから引っぺがしたあと、盗賊の拠点にしてたところに向かったと聞いている。連絡をしてきたのは街へ引き返してきた行商で、盗賊どもが転がされているところにはもういなかった」

「え、まずいですよ!?」


 危険極まりない。

 冒険の範囲を超えている。

 急いで助けに向かわないと。


「心配なのは分かるが、正直その心配いるのか?」

「いや、盗賊ですよ!?危ないでしょうに!?」


 大慌ての孝和。

 それに比べマルクメットは大きく息を吐いた。


「盗賊の拠点に留守役に残したのは2、3人らしい。数も少ないし、それになぁ」


 ポリポリ頬を掻くマルクメット。


「盗賊をぶちのめした時には、どうやらスクネとかいうオーガもいたらしい。と、いうか門番の記憶では街を出た時に4騎だといっていたが、森で合流したんじゃないのか?ゴブ共も十数騎いた気がすると行商が言ってるんだ」

「おおぅ、エグイなその布陣。全く抜ける気がしない」

「ちなみに"ひみつきちだー"といっていたらしいぞ」


 心配が若干薄れる。

 彼らは完璧に楽しんでいる。

 だがしかし、それでも危ないものは危ない。


「たぶんその拠点捜索に行くんですよね?だから俺呼んだんでしょう?」

「察しの良い奴は好きだな。だが、それを嫌うものもいる」

「好かれるほうがうれしいですよ、俺は」

「安心しろ。俺はあの食堂のファンだ。職務に反しない程度には融通を利かせよう」

「有難うございます、ははは」


 ため息をつくと孝和は茶を一気に呷る。

 喉に少し熱さが残るが、今はそれが逆に有難い。


「門の前で待ってる。早めにな?」

「……なるべく急ぎます」


 さて、死霊馬に会いに行こうか。

 少しだけ日の落ち始めた空を見上げて大きくため息をついた。


タイトルのPは、ぱんつです。

ええ、ぱんつのことです、はい。

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