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価値を知るもの  作者: 勇寛
祭りが、はじまる
78/111

第73話 オオキナオオキナキノシタデ 【CALL CALL CALL!】

誤字脱字ご容赦下さい。

ま、こーゆーのもいいのではないかと思うのです。

久しぶりの更新……つ、疲れた。




 森の割れる音。

 その音が戦場に轟くその時から、時間は少し巻戻る。




「何をっ!?」


 崩れた陣形を維持しつつも、街の最終防衛のための壕付近にまでアリアたちは押し込まれつつあった。

 遠目からも見えるフレッシュゴーレムの巨体はかなりの視覚的インパクトがある。

 ゆっくりとその体を揺らしながら近づくそれは、心を折るには十分なほどであり、注意が散漫になるのも仕方ない。

 多くの者が目の前の敵に意識を集中しきれない。

 それは集団の頭であるアリアやイゼルナ、他の指揮者たちも例外ではない。

 ある程度は意識をそちらに向けて部隊を誘導しなくては、自身の群れの統率が取れないほどだ。

 そこに轟音と共に叩きつけられた腕から波紋状に広がる“呪詛”。

 かなりの距離のあるアリアたちにもわかるほどに濃密なそれが水に溶ける墨のように薄まりながらも彼女たちを覆いつくす。


「?うっぷ!?」


 軽い吐き気が彼女を覆う。

 吐き気の正体を瞬時に察知した彼女は、それを弾き飛ばすために体に気功を巡らせる。

 騎乗している馬にも同様にそれを巡らせ、耐える。

 ぱあんと手を叩いたような音がアリアや、同じく気功を使うことの出来る者達から響いた。

 アリアの気功が薄墨色の澱を押し上げ、アリアと馬体から弾かれたそれが風に吹かれていく。


「は、ぁっ!」


 荒く呼気をつくと同時に、周りの様子を確認する。

 対抗する術を持つ者は僅かばかりの不快感で済んでいたが、そうでない者にとってはかなりの負担となる。

 多くの者がその呪詛を引っかぶり、吐き気を覚えてはいる。

 しかしながら、キールの術がギリギリの線で拮抗しているため、昏倒するまでの者はいない。

 若干押され気味だが、完全に押し切られるまではいかず、もしこれが無かったならとアリアはぞっとした。

 軽く頭を振り、目の前にいるアンデッドの群れに向き直る。


「とりあえずは、こっちが先っ!」


 気を取り直す。

 兎にも角にも、あちらには勇者にエメス、さらに孝和を配しているのだ。

 数で圧倒されるのであればまだしも、個で相対するのであればこれ以上のカードは無い。

 現状、集団対集団での戦を担うと決めたアリアにとって、自分たちは邪魔でしかないと考えていた。

 騎兵中心に撤退した戦力を糾合し、突撃に備えているわけだ。


(と、いうよりあの布陣が抜かれるならもう逃げるしかないわね)


 無名に近い孝和を除けば、勇者にエメス・神殿の装備を纏う強兵達。

 彼らが抜かれれば、ガタガタと音を立てて崩れる。

 アンデッドの群れについては、呪詛の影響などまるで意に介することなく街の防衛線へとたどり着こうとしていた。


「弓手!一斉にッ!……放てッ!!!」


 最終ラインの壕から空に向かい矢の雨が降りそそぐ。

 第3班の取りまとめをしていたマルクメットの号と共にタイミングを見計らった弓手が一斉に弦を弾く。

 雨に打たれるアンデッドが次々に倒れる。

 だが、その躯を踏みつけながら別のゾンビやらスケルトンやらが接近してきた。

 いや、それだけではない。

 倒れ伏した躯も、踏みつけられたそのままに地面を這いずりながら街へと向かう。


「致命傷になっていないか!?」


 アリアは矢の一斉射の地点からは少し離れた場所にいた。

 だからこそ、分かることもある。

 壕から直接狙うには、弓は狙いを定め難いのだ。

 射角の問題もあるが、もっと言えば空に射ち放ち、落下地点を狙うことになる。

 自然と当たるのは上半身を中心とした部位が増える訳だ。

 つまりは、生者には有効であっても、死者には通用しない。

 ただしわずかばかりの聖油・聖水に矢じりを浸してあるだけ、威力は増してはいるのだが。


「投擲、準備でき次第、休まず放てェ!!!!」


 そんな中、再度のマルクメットの声が戦場に響く。

 てんでバラバラの勢いで石や木片や、レンガに陶器片が飛んでいく。

 そのうちの幾つかはゾンビの頭やら腹やらにぶつかり、その中身を弾け飛ばす。

 ただ、ほとんどの飛来物が敵へと当たることはなく、地面に転がっていく。

 それを見てもマルクメットは方針を変えることなく、指示し続ける。


「援護、は不要ね……。さすがによく考えているわ」


 いきり立ち、救援に向かおうとする者たちを手で制しながら、アリアはひとりごちる。

 地面一面に広がる障害が次々投げつけられた結果、アンデッドの進路を塞いでいる。


「弓手!第2射、準備でき次第、放て!よぉく、狙えっ!!!」


 壕の縁に足をかけて弓手が出張る。

 今度は弓なりの空に向けての射撃ではない。

 真正面から、足の鈍いアンデッドの機動力を更に削り、棒立ちにした“的”目掛けての一斉射。

 更には、出し惜しみなしの聖油に火を灯した火矢での運用ときたものだ。

 射掛けられたゾンビは聖に属する炎により倒れると同時に浄化されていく。


「上手く、人を使うわ。いい腕、いえ経験かしらね」


 デキる熊、マルクメット。

 彼の脳筋染みた見た目からは考え付かない、繊細なプランニングを感心して見やる。

 防衛戦の基本は如何に損害を受けないかに集約される。

 あまり荒事には向かないものの集まりである3班を統率するにはこのプランが最善であったのだろう。

 実際に、弓手として運用しているのは元来対人経験の薄い猟師・狩人がメインである。

 獲物の解体で刃物を使う経験はあったとしても、力を込めて人体を断ち切るだけの膂力を期待するのは難しい。

 それ以外の弓手も引退した冒険者が精々だった。

 投擲に振られているのは、肩が強い若者やらを集めてはいるが、切った張ったをしている経験のない者が多い。

 それらをサポートするのに女性や、若干年かさのいった年齢層を配置している。

 つまりは最初から接近戦を避けたいという考えなのだ。

 接近戦をするのは本職のマルクメットの部下たちをメインに立てる。

 非戦闘員にも最低限の鈍器を準備してはあるが、それは護身に近いもので、その状況になったのなら即退却をすることにしていた。


「じゃあ、いい具合に場が荒れたわね。私たちは後ろの残った方を追い討つわよ。討ち漏らしはあちらで片付けるでしょう?」


 さすがに全てを片付けるまでには至らないが、数は減った。

 後続を断ち切りさえすれば、ここまで上手く策に嵌めたのだ。

 残敵の掃討は3班に任せても良いだろう。


「了解です。一部残して、あちらに援軍に行きますか?」


 補佐として就いている男から提案があった。


「退却したもののうち、騎乗できないものはイゼルナ隊が吸い上げている。おそらく、彼女ならこの機を逃すことはしない。むしろ、こちらから遊軍が混じることで邪魔になるわ」


(……と、思ってるんだけど。イゼ姉ならもうそろそろ……)


 わっ、と歓声があがる。

 その方向には、泥にまみれながらもわかる自分と同じ銀色の髪が翻っていた。

 出発時には鉢金に麻の布で髪をまとめ上げていたはずだが、今はそれもない。

 おそらくは、士気高揚のために、“英雄”たるアリアの血縁をイメージづけるためだろう。

 要は、客寄せパンダよろしく自分を使う術をもっていま、彼女はあの場にいる。

 渦巻く熱気を纏って、イゼルナ隊は防衛壕の最前線に突入していく。

 後は、マルクメットとの連携はあちらに任せることにする。

 何せ軍経験のある彼女と、現役の隊長様なら上手くやってくれるだろう。


「ご慧眼。我らはおとなしく後ろの残敵掃討に当たりましょう」

「そういうこと。行くわよ!」


 馬首を変え、隊を先導しようとしたアリアに“声”がかかる。


『だーめーーー!!あぶないよぉぉっ!!!!』

「がうがう!がうっ!」


 急に引き止められることになったアリアたちは、“声”がかかった方を見る。

 キールとポポが死霊馬に乗っていたはずだが、なかなかに素っ頓狂な格好でそこにいたのである。

 後ろ脚で死霊馬が立ち上がり(ナポレオンの肖像画のアレを思い描いて欲しい)、その頭にポポが 背伸びして乗っかり、さらに伸ばされた腕の先にキールが掲げられている。

 この場に孝和がいたならば、確実にこう言うだろう。

 どこのブレーメンの音楽隊だ?と。


「何してるの、あなたたち?」


 もちろん、キールとポポの精神性が幼いと言う事はアリアも理解している。

 だが、それ以上に彼らがこういった場面でふざける類の者たちではないことはそれ以上に信頼しているのだ。

 つまり、この重大事に一見おふざけの極みのようなことをしているのにも何らかの理由があると、アリアは判断した。


(で、いいのかしら?とっても不安、なのだけれど?)


『たぶんーー。もーすぐ、なん、だー。おおっ、とっとぉ!』


 バランスを保つのが難しいのだろう。

 大きく揺れたり、それを戻そうとしたりと、はたから見れば遊んでいるようにしか見えない訳で。

 呼び止められた一団は、今にも飛び出していかんとばかりにいきり立っている。


「遊んでいる場合では、無いのだっ、アリア殿っ!貴女が令を発せなくとも、我らはいくぞっ!!!この機を逃すわけにいかん!意思を同じくする者は続けぃいっ!!!」


 何かが切れたのだろう。

 手で集団の行先をとどめていたアリアの脇から、一騎駆け出す。

 それを追おうか、追うまいかの一瞬の躊躇があったものの、数騎がそれに続く。

 これに対し、アリアもそれを追わないわけにはいかない。

 何せ急ごしらえの戦力。

 扇の要が無ければ、瞬時にばらばらになってしまう。


「御免なさい、行かないと!」

『あーあ、あぶないのにー!』


 最初の一騎。

 それが右手側に森の境界と平行になろうとした瞬間。


ドゥッ!!!


 森が、割れたのである。





 時間軸を元の場面に戻そう。

 孝和たちがフレッシュゴーレムに飛びかかった、その瞬間。

 森を割って出てきた者たちがいた。


「ガァァァァァッツ!!!!!」


 堂々たる存在証明。

 吠え猛る、緑の鬼が大気を震わせながら、のそりのそりと土煙の中から姿を現す。

 その声に驚いた馬たちが暴れ、騎手はその制御に手一杯となってしまう。

 なぜかその肩口にはビビットなカラーリングのキノコがちょこんと乗っかっていた。


「シ、シメジっ!?」

『あーーっ!!ずるいっ!それ、みんなでいっしょにみせよー、っていってたのにっ!』

「わうわう!ぐぅぅっ!!」


 アリアは驚き、キール・ポポ組は憤慨している。

 距離があった分、馬を制御する分には問題なかったが、それでも動揺はある。

 一方のキールたちの死霊馬はそういった動揺は見せず、悠々と構えていた。


『ポポっ!ごー、だよ。ごー!!』

「がう!」

「ちょ、ちょっと!」


 駆け出していく死霊馬を止めることができず、アリアは彼らの後を追う。

 そうすると、どうやら土煙が晴れていくにつれ緑の鬼、遠目から見るにはオーガと思われる個体とシメジ以外にその周りに何かがいるのが分かる。

 ぎゃあぎゃあと何かを激しく抗議しているような声が聞こえてくる。

ただ、それが風に流れて聞こえるが、その内容までは今一つ聞き取れない。

その一方で、オーガの真横にある大木が揺れる。


『あー、やだやだっ!ぼくたちも、のるー!まってよぉぉぉ!!』

「わうわう!わぉぉぉーん!!」


 なぜか切羽詰った様子のちっこい連中の様子が、この場にまぁそぐわない。

 動揺を抑えるのに一杯一杯な先行組を追い抜いて、オーガの連中に接近していく。

 一方呆れたように肩を竦めたオーガはシメジをむんずと掴み、そばにある大木へと放り投げる。

 放物線を描いたシメジはくるりと宙で体勢を整えると、枝にぽすっと音を立てて着地(着樹?)する。

 その瞬間、緑生い茂るその大木の樹肌をぞぞぞぞっと、なにか真っ白なものがシメジ目掛けて這い寄ってくる。

 枝に落下したシメジと言えば、激しくぴこぴこと伸び縮みしている様からすると、どうやら抗議しているようである。

 しかしその抗議をしている間にシメジがその白い何かに包まれる。

 それを見るとオーガは興味をなくしたように大樹から離れ、駆け出す。

 行き先を見れば、孝和やエメス達がいるはずのエリアだ。

 すると、大樹がゆっくりと“前進した”。

 

「!?」


 周り中の人間がこの場が戦場だと言う事も忘れ、疑問符を浮かべる。

 なぜ、動く?

 いや、その前にあの樹は“あの位置にあったか?”と。


『ひどいよぉぉ……。ぼくも、のりたかったのにぃぃぃ……』

「…くぅ……」


 オーガの真ん前まで駆け抜けたキール一行の目の前を、草原を掘り返しながら樹が前進していく。

 それに比べ、森に属する部分にはそういった類の掘り返したような跡はなく、何も起きた様子さえなかった。

 ただ、相対的に“ゆっくり”動いているように見えた樹は、近づいてみると大人が軽く駆ける程度の速度で進んでいた。


「これ、まさかトレント【樹精】?いえ、それにしては小さい……」


 長い時間を生きた大樹が、何らかのきっかけで動き出したもの。

 ざっくりと説明してしまうとそれがトレント【樹精】という存在なわけである。

 つまりはトレント【樹精】足り得るには、最低限長い年月を生きた“大樹”でなくてはならないのだ。

 しかしながら、この目の前で動き出しているのは大木であったとしても、大樹ではない。

 枝振りや、生命力にあふれてはいるものの、大樹と言えるだけの老成された重厚感が薄い。

 しかも、だ。


「かなり、浸食されてるの?あれは」


 大木の幹の半ばに有る洞からキノコが生えている。

 しかも、森などで見かける表面にちまっと生えているようなレベルではない。

 豪快にも洞を起点に、表面全体の3割近くを覆っている。

 大小合わせて数えられないほどの多種にわたるキノコがそこにはあったのだ。


『ふぇえ。まにあわなかったぁぁ』

「くぅう……。ぐすっ」


 ようやく追いついたキール・ポポはしょんぼりしている。

 ちなみに、その周りには土煙で見えなかった者たちがうろうろとしているのだが。


「ゴメン、タイチョ、ギィ。アイツ、マタズニ、イッタ。トメル、ヒマ、ナカッタ」

「ギィギィ!アイツ、カッテ!ハナシ、キカナイ!!」


 ギィギィと言葉の端々に甲高い声を発しながらも、人の分かる言葉でそれらが話しかけてくる。

 ひょろりとした者、ずんぐりとした短躯の者、ぽけーと空を仰いでいる者、等々。

 総勢で10名のゴブリンと、それと同数のぶひぶひと鳴きながら鼻息の荒い猪様のおそらくはモンスターであろう集団が、キールとポポの乗った死霊馬の前に集まってきた。


『エメスくんのおともだちかー。もー、むこーにいっちゃった?』

「ギギッ!イッタ、イッタ!ジャマダカラ、クルナ、イワレタッ!」

「アイツ、カッテニ、シメジダイリ、ホーリナゲタ!タイチョタチ、マツノ、イヤ、イッタ!」


 ぎゃあぎゃあと大音量で騒ぎ立てる彼らにアリアたちは戸惑う。

 だが、意を決してアリアが話しかける。


「キール!彼らは、何!?味方!?でいいの?」


 その声に一斉にゴブリン集団とキール・ポポがアリアの方を向く。

 内心ぎょっとしながらもそれを受け止め、返答を待つ。


『えーと、んーと……。ぼく、たいちょーで、ポポがふくたいちょーで、シメジがたいちょーだいりしてるの!みんなはたいいんなんだー』

「わう!」


 どこで覚えたのかびしぃと敬礼何ぞしてみせる一同。


『そんで、あのでっかいのは、フォーのじーちゃんです!』

「フォー?名前付いてるの?あの大木」

「ますたーがいってました!だいまおーには、いどーよーさいがいるんだって!」

「え?」


 疑問符が浮かぶアリア。

 先行する大木に巻き込まれる可能性があり、動きを見据えてからでないと動けない。

 若干の時間ができたことで悠長に話をしてはいるが、本来はそんな暇はない。

 早く、要点だけでも理解しないといけないアリアは焦る。


『ふぉーとれす、のフォーじーちゃんなんだー。シメジかぼくがはなすと、おきてくれるんだけどいつもねてるから。まにあってよかったー』

「……」

『でも、シメジにまにあったら、いっしょにのせてって、つたえといたのにー。ずるいよぉ、ぼくもフォーじーちゃんのっかって、ぐはははってわらいたかったのにー』


 間違いなく、なにかヤバい分野に飛び込みかけている。

 なぜそんな品のない笑い方をしたいのかも気にはなるが、それよりも彼らがやっているこれは子供の“タイチョーごっこ”の範囲で収めていいレベルではないのだ。

 それは解るのだが、それを注意する気力がない。

 キール自身は依然術の堅持に努めている。

 やる気が失せることは言えない。


「とりあえず、あれはタカカズに後で聞くことにして……。全員、彼の巨木は敵に非ず!アンデッドの殲滅のみに注力せよ!彼の巨木は敵に非ず!伝令!一帯に伝えよ!!」


 伝令は身を翻し、戦場を掛けだす。

 間をおかず、これも一帯に伝わるはずだ。

 従魔士の孝和の存在は通知済み。

 混乱はあろうが、戦力として換算するにはなかなかうれしい援軍と言えるだろう。

 ただ一つ問題があるとすれば、


「私、モンスターの指揮経験ないんだけど……」


 誰にも聞こえないようにぼそりとつぶやく。


「仕方ない……。皆、隊列を整え、突撃準備ッ!!」

「おおさ!!!!」

『みんな、アリアさんのおてつだいを、しなさい!けがの、ないよーに!』

「ギャァ!ギャァ!」



 ブルルルッと嘶く猪の上でゴブリン達は各々の獲物を天に掲げる。

 石斧やら、石やりやら先のない錆びた剣をである。

 恐らく、この場にいる誰もが目にしたことのない、人とゴブリンの連合騎兵隊がここに完成したのである。


「い、行くわよ!!!続けェっ!!」


 どもったとはいえ、大音量で突撃を指示したアリア。

 それに続き騎兵隊が敵の後背を突かんとばかりに突っ込んでいく。

 その目的地では、すでにフォーじーちゃんこと、シメジの乗る“ふぉーとれす”が根っこを振り回しながら、アンデッドを薙ぎ払っている。


(私の知ってる戦場って、こんなではなかったような気がするわ……)


 アリアは戦場では不謹慎だろうが、全部終わったら孝和に恨み言を言ってやるわと心に秘め、八つ当たり気味に馬の腹を蹴ったのであった。

 


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