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価値を知るもの  作者: 勇寛
それこそが日常
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第48話 俺とコイツと【WE ARE】

誤字・脱字ご容赦ください。



「あー……。いい感じかも……」


 一面に広がる青空。暖かな日差しはぽかぽかとして心地よい。時に薄く雲が広がりながら空の青さに溶け消えて行く。

そこに風がふわりと吹いてくた。おそらく、街道沿いにちらほらと育った野花のものであろう香りが、どこまでも優しく孝和を包み込む。視界一面に澄んだ青空を仰ぎ見る。

実に美しい。日本の都会とは違う空の高さが非日常を感じさせる。荷台に体を預け、とろんとした目を空に向ける。

至福、とまではいかない。これ以上の快楽というものも確かに現実には存在するのは事実だ。

 だが、こういった自然の優しさに身を浸すのもまたいいものである。

 カポカポと馬の足音がBGMで緩やかに聞こえてきて、それにあわせて軽い振動が体を揺らす。でこぼことした道の段差に馬車の車輪が足を取られたのだろうが、何度も踏みしめられた道は比較的なだらかで大きく跳ねたりはしない。

 実に眠気を誘う“いい感じ”の状況である。


「ふわぁぁ……。でもなぁ……、今寝てると、夜に眠くなくなるしなぁ……」


 大あくびをぶちかまし、格段に腑抜けた表情はぼーっと空に合わせていた焦点すらずれ始めていた。


『あーー!ねえねえ!!ますたーっ!!』


 唐突に響いてきたキールの念話にほんの少しだけ頭が冴えてくる。

 眠気を振り払い、キールの居るであろう方向へ顔を向ける。

 ただし、姿勢はそのままで顔の向きだけを変えた。

 天を仰ぐような格好でキールに話しかける。


「んん?どうした?」

『あのね!とーくにまちがみえるよっ!マドックだっ!やっとかえってきたよー!』

「ああ、そうか……明日の昼前には到着予定だったからな。もうそろそろ見えてきてもいい頃か……。教えてくれてありがとうな」

 

 ひらひらと手を振りキールに感謝を。その視線の先の白玉にも見えるキールに、これまた“黒玉”に見えるモノがまとわりつくように寄り添う。


「わうっ!!」

『んーとね。あのとーくにあるかべが、そーなんだよ。もーちょっとしたら、おっきないりぐちがあるんだー』

「わう!わうわううう!?」

『そーだよ?おっきなまちなんだー。ぶきやさんとかほんやさんとか、ごはんやさんとか、いろいろあっていーとこなんだよ』

「わうう……。くぅぅぅん……?」

『ああ、ここからじゃあみえないんだよぅ。たかーいかべのむこうがわにあるんだから』

「くぅ!わふっ!!」

『そーだね。もしかしてもっとたかいとみえるかもー。……じゃあ、エメスくん。よろしくおねがいしまーす!!』

「わうっ!!」


 キールと黒玉を肩に乗せ、しっかりと地面に足をつけたエメスは、軽く顔を孝和に向け了承を求めてきた。

 苦笑とともにうなずく孝和。

 エメスの両手が高々と天に向かい伸びていく。しっかりとその両手に捕まったキールと“黒玉”は4mを優に超える高さに歓喜の声を上げる。


「わぉぉおおおおおーーーん!!!!」

『わおーーーーーんっ!!』


 どこまでも天は遠く澄み渡る。

 その青色に遠吠えが遠く、高く溶け込むように消えていく。


「いやぁ……楽しそうでなによりだよ。うん……」


 幸せなんだろう。たぶん。

 そんな思いとともにだらけた孝和と対照的に、通り過ぎていく地面を見つめるアリアがいる。


「はぁ……」


 ため息が流れるアリア。その手には割れ砕けた錫杖の先端部。ミスリル製のフィギュアヘッドの無残な姿がある。ここに帰る道中で思い出し、アリアに返還したのだが、何度も何度も割れた面同士をくっつけてそのたびにため息をついている。

 ため息の回数からすると数十回分の幸せが逃げて行っている計算になるだろう。


「あー……。大丈夫だよ、そこが壊れたのは確かだけど戦って壊れたんなら、不名誉なことじゃあないんだし。なんとか勝って終われたんだから、きっと何とかなるって」

「……そうよね。でも、何も問題なかったとしても、代わりの杖が来るまで時間はかかっちゃうのよ」

「やっぱ勝手に直すわけにはいかないんだ?」

「神聖力っていえばいいかしら?形だけ取り繕っても意味がないの。そういった物が抜けた杖なんて持ってたら一発で偽物扱いよ。聖職者のクラスが上になればなるほどそこらへんの感覚は研ぎ澄まされるから……」

「直すにしても独占状態の規格のみ可ってわけか。しょうがないわな、そりゃあ」


 今日何度目になるか分からないが天を仰ぐ。

 実にきれいな青空だ。

 ぼーっと意識が途切れそうになりながらも、孝和はあのポート・デイのドタバタの遁走劇の始まりを思い出していた。

 時間はちょうどコーンが孝和にサインを求めた直後にさかのぼる。






「えーと、あれはどーいったわけで、あーなったんでしょうか?」


 壁のわきからそっと顔だけを出した孝和は、自分と同様に“それ”を覗き込んでいるコーンに尋ねる。


「いやあ、私もわからないんだが。君等を運び出す時についてきちゃってね。最初は行政館までついてくる勢いだったから……。お嬢が説得してくれなかったらどうなってたか」


 杖をつきながら孝和の後ろからニコニコ顔で笑うコーン。

 ちなみにお嬢とはアリアのことだ。


「……やっぱ、俺の担当、ということになってるんですね?」


 ほぼわかっていながらコーンに尋ねる。


「そうだね。ほら、あれを見て御覧よ。“彼”の持っているのは君の持ち物だろう?」

「ええ、しっかりと見えてますよ。しっかりとね……」


(誰か、セーブっ!!お、俺にセーブポイントをッ!!!)


 心の中で全力で叫ぶ。

“ああ ゆうしゃよ しんでしまうとは なさけない”。

 いやいや死んでたまるものか。

“ぼうけんのしょに きろくしますか”

当然 “はい”だ。

“ざんねんですが ぼうけんのしょに カードがささっていません。スロットに カードをさしこんでください”

求めてもどうにもならないものは往々にあるのだ。やり直しの出来る人生などどこにもない。

そう都合よく神は世界を作ってはくださらないものである。


「く、くそお……。いきたくねぇええ」

『あ、エメスくんだー!』


 なかなか二の足を踏む光景を目にした孝和の横を、陽気にキールが駆け抜けていく。

 あまりに唐突で、とっさに反応する暇すらなかった。


「あ!キールっ!!」


 あまりに無邪気に“それ”に突撃していくキールに声をかけてしまった。



 ギシッ


 軽く軋みを上げ、“それ”がこちらに首だけを向ける。ただし、あくまで首だけで本体はそのままの形である。


「う、うぐっ。くそぉ……」


 もう間に合わない。なんか完璧にロックオンされているのだ。

 見た目はもう“アレ”である。

 RPGをやったことがある人間ならピンとくるヤツ。

 例えば、古代の森の巨木に刺さる剣だったり。例えば神殿の最奥の宝玉だったり。城の

絨毯のど真ん中の不自然な魔法陣だったりする。

 要するに、目の前で決定ボタンを押すか、近づいた瞬間に画面が暗転してしまう系の“重要イベント発生”的な感じのものが目の前にある。


『エメスくーん。のっけてー』


 ピョコピョコと駆けて行ったキールが、片膝をついているエメスの体を駆け上がる。

 そのエメスは両手でしっかりと孝和のジ・エボニーを鞘ごと握りしめ、首をこちらに向けた以外微動だにしない。

 きっとあのジ・エボニーがトリガーである。あれに触れた瞬間に、要回復・要セーブな展開に発展するヤツだ。間違いない。

 

「まあ、大丈夫ではないかな?キール君もなついているようだが?」

「あいつは結構物怖じしないですから……。おれはどうなのか分かんないですよ」


 ただ、何かキールに感じるものと同じようなものを感じる。うっすらとであるが、大丈夫ではなかろうかとそろそろっと歩みを進める。


(男は度胸ってかぁ?君子危うきに近寄らずってのも聞いたことはあるんだけどなぁ)


「あー……っとぉ?エメスぅ?」


 ギシッ


 ゆっくりとエメスが立ち上がる。肩口まで登っていたキールが『ふぉぉぉっ!!』と若干嬉しそうな悲鳴を上げている。急激に視点が高くなったのが嬉しかったのではないだろうか。

 ズンズンとエメスの足並みが、軽く足裏に感じる程度で石畳を揺らす。


「あー。昨日は色々とありがとう、な?あの後ぶっ倒れちまって、結局どうなったかがよくわかんない感じになってるんだけどさ」


 労いの言葉にコクコクと首肯するエメス。その顔面には深々と昨晩の爪痕がくっきりと残されている。

 3本の爪痕が実に痛々しい。

 しかし、他にもかなりのダメージを受けていたはずの腹部や両腕はそれほどでもない。

 軽くひびが入っていたり、亀裂が走ったりはしているものの、特にひどかった腹部の大穴がふさがっているようにも見える。


(何故に回復してんだ?)


 どう見ても生物的な要素ゼロのエメスが回復している。もしかすれば魔術的回復が出来るのかもしれないが、それならば顔面の傷も元に戻っているべきであろう。


「えーと、だ。その顔、大丈夫か?腹とかは何故か治ってるみたいだけど?」


 尋ねる孝和。それを受け、エメスが肩に乗るキールに視線を送る。


『ふむふむふむ。わかったー。エメスくん、おろしてー』


 両者に何かしらの意思疎通があったらしい。通訳なしではエメスとコミュニケーションが取れない孝和としては、キールに橋渡しを頼みたかったのだが、エメスの肩からきレーンゲームよろしくキールが地面に下ろされる。

 それと同時にエメスはジ・エボニーをキールに手渡す。

 そのままズルズルとジ・エボニーを引きずりながら孝和に向かい移動するキール。エメスも少し孝和から離れる。

 一連の行動をほけーと観察していた孝和。その横にコーン、奥方、アリアにククチといつの間にか来ていたエーイが合流する。

 その刹那である。


ドガシャァ!!!


「ぬぉぉぉおおおおおお!???」


 一切の容赦なしのフルスイング。

 エメスの豪腕が“エメス自身の顔面に”炸裂した。


「「ええぇぇええっ!??」」


 自身の顔面に向かい全力でその拳がめり込む。顎を狙い的確に振りぬかれた拳が、エメスの頭部を跳ね上げる。細かな破片が周囲に飛散する。

 パラパラと空から降ってくる金属片が離れた孝和にまで降りかかる。

 唐突の自傷行為。


ドガァァン!!


 そして今度は逆のサイドからのこれまたフルスイングの追い討ち。

 いきなりの暴挙に戸惑いと混乱の声を上げた孝和たちを誰が攻められようか。

 その声を気にせず、さらにエメスの行為は続く。


メキメキメキッ!!


「ひぃぃぃいいっ!!待った待った待ったぁ!!痛い痛い痛いっ!!」


 背筋を一気に悪寒が走る。

 咄嗟に出た言葉はつい口に出てしまったのだ。

 なんとエメスは先程より亀裂の大きくなった顔面の爪あとに、両手の指を無造作に突っ込み、上下に引きはがすようにして力を入れ始めた。

 考えるだに恐ろしい。背筋だけでなく、全身に鳥肌が立った。


「それは駄目ッ!!痛すぎだッ!!」


 そんな物を見させられた者達は、あるものは顔を背け、あるものは呆然とその光景を眼球に叩き込んでいた。

 だが、エメスはそれらを気にした様子も見せず、メリメリと音を立てながら自身の顔面を引き剥がす。


ベキッ!


 完璧に今までの音と違う“終わった音”“折れた音”“ヤッチマッタ音”が響く。

 ゲゲッと思いながらその音を聞く一堂。

 しかしエメスは何の痛痒も感じさせず、その両手に自分の顔面を掴んでいる。


(おいおい。どうしたんだよっ!?……って、ありゃ何だ?)


 丁度顔面の下半分を掴んでいた右手がそのまま下に下げられる。

 すると、そこから“口元”がちらりと覗く。スッキリとしたシャープなラインの顎と少し薄めの唇。

 掴んでいた下半分をその場に投げ捨て、今度は両手で上半分を掴む。

 ズズズッと擦れる音をさせながら、ゆっくりとその頭部から頭部が引き抜かれていくというよくわからない状況がそこに展開されていた。

 

バサァツ!!


 引き抜いた“元”顔面をつかみ、わずらわしそうに顔を振りたくる。

 そのたびに周りにぱらぱらと細かな破片が飛び散る。

短くはあるが、つややかな頭髪。閉じられてはいるがスッと通った眼と鼻に、彫の深い造作で整った全体のバランス。

一言で言うと、抜群のハンサムフェイスである。

ボディとのつながりも申し分なく、教科書のトップに出てくるような所謂“度肝を抜く天文学的金額の美術品”がそこに完成していた。


「……。問題、無シ」


 硝子を軽く響かせるような声がその口から漏れ出る。


「おおぅ……。問題、なし?な、なら話してもいいか?」


 後ろからの視線に耐えきれず、孝和が尋ねる。ビシビシと感じる視線は全てがこう言っていた。

“早く、どういうことか、尋ねろ”、と。


「主、我ハ、主ガモノ。許可ハ不要、ト思ウ」

「そうか、いや、まぁ、なんだ。えーと、お前はエメスでいいんだよな?と、いうか俺が勝手に名付けただけだから、もしかして他に名前があったりとか?」

「フム……。我、主ガ所有物。我、目覚メル前、記憶ナイ。ナレド我ハ我ヲ、“エメス”、デアル、ト思ウ。故ニ、我、エメス、ト思ウ」

「じゃあ、今のところエメス、でいいよな?」

「良イ、ト思ウ。問題ナラバ、ソノ時デ考エレバ良イ、ト思ウ」

「そうか、じゃあその時が来たらまた考えるとしようか……。じゃあ、次の質問な?」

「了解」


 ずしんとその場で胡坐をかき、孝和の質問に答えるエメス。

 ちょうど視線が孝和と合う形で正対したのでどこか居心地が悪い。


「その、さ。腹のあたりに大穴ぶちあけられてたと思うんだが、それはどうした?」

「ナルホド」


 腹の周囲をすりすりとさするエメス。見た目には亀裂が残っているが貫かれたような穴はみじんも見えない。


「時間カカル。シカシ、少シズツ、魔術で修復ヲ」

「魔術で治したぁ?」

再生リペアト、イウラシイ。何人カ使ウ者、確認シタ。キールノ魔術モ、見タ。真似スレバ良イ、ト思ッタ。結果、成功シタ。キールノ魔術、駄目。我、未熟……」

「いや、それでもすげえよ」


 首を落としうなだれるエメスに孝和はそう語りかける。おそらく、捕まっていて運び出された者たちや、戦闘で負傷した者達の治療を見ていたのだろう。

 何しろ自分は魔術の“ま”の字にすらたどり着けていない。真似しただけで再現できてしまうとは、実にうらやましいことだ。


「主、試スカ?」

「いや、俺はキールに治してもらったから」

「ソウカ、残念」


 再度がっくりとうなだれ、残念な様子を見せる。

見た目と違いエメスはなかなか感情豊かなようである。


「しゃべれるんだよな」

「会話、可能」


 首肯し、ジッと孝和を見つめる。


「別に俺が来る前にその頭、綺麗にしててくれればもっとスムーズにここの人と会話できたんじゃないのか?」

「主ノ剣返ス。最優先。他者トノ意見交換、意思疎通、重要。シカシ優先順位、違ウ、ト思ウ」

「そうか、いや、そこまで優先してもらわなくてもよかったんだが」

「我、間違エタ?」

「ああ、そこまで深く考えることじゃないから!とりあえず落ち着け、な!?」


 立ち上がろうとしたエメスを静止して、そこに座るよう諌める。

 多少開けているとはいえ、うかつに動き回られる方が危険だ。なにしろこの巨体だ。ここで縦横無尽に動き回られてはたまらない。


「主、スマナイ」

「まあ、なぁ?」


 ちらと後ろを見ると、ニコニコ顔のコーンが契約書を手にしている。

 はぁ、とため息を吐き孝和は契約書と逆の手にあったペンをコーンから受け取った。


「では、サインをこことここに」

「なんか、流されてる感が否めないんですよね」


 さらさらとギルドの契約書にサインを署名する。

 署名済みの契約書とペンを再度自身の手に戻したコーンは、生乾きのインクを乾かすように息を吹きかける。


「では、これで契約は済んだ。依頼主は私、アデナウ・コーン。依頼内容は“マドックまでの交易馬車の護衛”。キャラバンを組む予定の他の商隊は街の付近で待機中だ。出立は明日の朝一に延期させてもらった。それまでに合流すれば十分間に合う。まあ、まだ金を払わない“付きまとい”の連中も集まってくるだろうし。冒険者ギルド長の不正が影響したと説明済みだから、現状問題はない」


 “付きまとい”とはキャラバンに勝手についてくる者達のことだ。要はコバンザメよろしくキャラバン本体に張り付いてくる金のない連中を総称してそう呼んでいる。

 キャラバンの本体に彼らの護衛義務はないし、それを彼らも十分理解している。

 それでも、大人数で動くのであれば襲撃者は二の足を踏む。キャラバン本体も非常時には失っていい駒として戦力勘定できるし、最悪そういった連中を盾に逃げたり出来ることもあり双方文句も言いにくいのである。


「あのハキムって男、まだ捕まらないんですか?」

「ああ、もし捕まえても奴の権限は停止されている。新しいトップがギルド本部の承認後に赴任するまでは、その町の管理者が代理権執行者となる」

「時間の調整くらいは簡単に出来るわけですか。書面の作成はその権限で?」

「まあね。で、報酬についてだが、“ポート・デイより発見された彫像1体及びその備品一式”だ。備考として、“移動期間中に必要と思われる備品は依頼者より提供”としておいた」

「うわぁ……」

「傭兵団より提供したものと、食料がほとんどだがね。道すがら確認してくれたまえよ。行きと同額の金額と未払いになっていた報奨金も補填しておいた。あの時の全員に分配されるように書類も作成中だ」

「至れり尽くせりっすね。ありがとうございます」

「ム……。我、主ト同道スレバイイカ?」

「悪いな。あんまりゆっくり出来そうにないんだわ。今日中にはここから出ていく予定だから。頼むよ」

「ワカッタ。シカシ我、特ニ用意スルモノ、ナイ」

「まあ、後で考えようか、そこらはさ」


 うなずくエメス。

 準備品も含め夜までに考えれば何とかなるだろう。

 そう考え、孝和はコーンに向き直る。


「いやはや。本来なら、町の皆で歓待しなくてはならないのだがね。今回の件は色々と根がふかそうでねぇ……。うちも海軍の連中も全容が今ひとつ掴みきれないんだよ。このまま君らを街に残しておくと、多分愉快なことにはならないだろう。出来るだけ早く町を出た方がいいはずだ」


 深く吸い込まれるような沈んだ表情の中に、ギラギラと光る目があった。


「わかってます。こっちもなんとなくヤバそうな雰囲気は感じてますんで……」


 あれだけの大立ち回りをしたのだ。拘束期間も長くなり、マドックに帰るのにも不自由しそうな気がしていたのにまさかの当日の開放である。

 何らかの形でコーンが動いたのであろう事は難くない。


「巻き込まれたメインは私だからね。政の関係でつついてきた可能性が高そうだ……。護衛もこれ以上多く分けておくのは難しいのだよ。やな言い方をするが守る対象は少ない方がいい」

「ですね」

「とはいえ、君に護衛が必要なのかと言う問題もあるんだがね?」


 最後にヘラッと軽く笑いかける。


「あははは……。突出した個の力って、圧倒的な数の暴力には敵わないことも多いもんですよ?」


 孝和も軽く笑う。ここを出るまでは護衛の方々にそういったものは全任せで行きたいものである。


「そういうものかね」

「そういうものですよ」


 すごい中途半端……。

 最初の新規の登場人物の詳細は次話で、ということにしておきますね。

 出来上がった分だけでも投稿しとかないと、いつまでもそのままになる感じだったので。

 一応前編扱いですかね。後編はまた後日に。

 まあ、早めにできあがったらいいなぁ……。

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