第46話 会談【tea party】
あ、ども。
約1年ぶりです。誤字脱字ご容赦ください。
食い散らかすだけ食い散らかした男たちは、口直しにと誰かの追加発注しただろう魚介類をじゅうじゅうと焼き始めていた。
(まだ食うのかあの人たち。すげぇ胃袋してるわ)
孝和もそこそこ食は進むほうだが、これだけ肉をメインに腹に放り込まれれば、飢えも多少は落ち着く。
どこと無く白けた心持の孝和と、もう食う食って食って食うだけの男たちとのテンションの差はやはり大きかったということだろう。
(こういう感じのって昔の合宿思い出すなぁ……。あの時も豚汁とか飯炊きとかいろいろ作ったしなぁ)
数年前に行われた合宿という名の山ごもりのことを思い出す。
法寿の開催した合宿。当時学生だったため、経済的ヒエラルキーの最下位に位置した孝和は、十数人の男どもの飯炊きを任ぜられた。
(こういう類の男どもって事が終われば、度を超えて食うからな。まあ、残されるよりゃマシだけどさ)
鍛錬後の体に鞭打ちながら作る、業務用クラスの鍋いっぱいの汁物に同じく業務用クラスの釜で炊く米。
それがすべてハケて無くなった時の達成感というものは、作った側としては何とも言えない達成感があるものだ。
空っぽの鍋と釜を覗き込んでヌフフと知らず知らず笑みがこぼれたことを思い出す。
きつかったと言えばきつかったが、あれはあれでなかなかいい思い出である。
「すこし、いいかい?」
大ぶりのエビの殻をむいた男を見て“あ、すげー美味そう”と呆けていた孝和。
ふいに肩がポンと叩かれる。振り返ると、肩を叩いたククチが立っていた。
顎をしゃくり、正面の建物をさす。どうやら離れたところで話がしたいのだろう。その建物まで行かないかと誘う素振りをみせていた
「はあ、まあそこそこ腹にも入れましたし、いいですけど?」
その場を離れることに承知する孝和。行きがけの駄賃代わりにちょうどミディアムレアに焼きあがった肉を口に放り込む。
キールのいる方に目を向けると、未だにレディーたちに餌付けされているキールの姿が見えた。
なかなかのモテっぷりに苦笑する。一応そのままにしておいても問題は無さそうだが、一言声を掛けて行くことにした。
「キール!ちょっとここ離れるけど、留守番してるかぁー?」
『ほぇぇ?どっかいくんなら、ぼくもいくー!!』
それまでの“超”接待の場から何の未練も見せずに、ピョンと椅子から飛び降りそのまま孝和の腕目掛けて跳ね飛んで来た。
周りから差し出されたフルーツに、脇目も振らずにまっすぐに。
ピシィ!!
そんなことは決してない。決してありえないのだが、空気が裂ける音が周囲に響いたのを確かに孝和は聞いた。
音の聞こえた方向からかなりの熱量と毒気の混じる何かが女性陣から放たれているようだ。決して好意的でないそれを全身に浴び、背中に悪寒を感じたのは仕方ないだろう。
「い、行きましょうか。なるたけ早く、で」
「ふふふ。いやあ、将来がたのしみだねぇ……。いいタラシになれるかも知れないよ?」
『たらしー?』
「あの、そういうの止めてもらっていいですか?ちょっとここ最近ゲスい言葉にキールが影響されてるんで」
『たらしってなーに?』
「キール?知りたいからって全部その時に教わる必要はないんだよー?今回はわかんないまんまでいいからねー」
どこか棒読みになりながら、キールにそう教え諭す。
視線はククチに向かい、“ちょっと黙っといてくださいよ!?”と言葉もなく訴える。
肩をすくめ、どこか軽薄な笑みを浮かべながらククチは歩き出す。からかわれたことに気付いた孝和は、いそいそとククチの後を追う。
なにせ、時間を追うごとに孝和に向けられる視線はその身を貫かんばかりの嫉妬心で燃え上がっているのだから。
「で、どこまで行くんですか?」
正面にあった建物へ向かうとばかり思っていたが、そうではなかった。
その横の小道を通り、裏手に向かってククチは歩を進めていた。
『そーだよぉ?あんまりとおいと、かえってくるまでに、ごはんなくなっちゃうよ?』
いや、俺の肉はそうかも知れんがお前の分はきっと大丈夫だ、と心の中でツッコミを入れながら、ククチの反応を見る。
「大丈夫。大丈夫。そこだよ、その中さ」
ククチは指先で目的地を指差した。
その先にあるのは他の建物と比べて頑丈に作ってあるようだった。なにせ、門番がその入口を固めている。
先ほどまでの荒くれの方々と人相はそう変わりないが、漲る気迫が段違いだ。眉をよせ力んだ表情でしっかりと周囲に視線を走らせていた。
ちょっとやそっとではビクともしないようなレンガ造りの建物にずんずんとククチは進んでいく。
そのあとをそそくさと小走りでついていく孝和。
何かを言おうとした門番の一人にククチは軽く手をあげ、連れであることを手振りで示す。
それを確認すると一方の門番が半身をずらし人一人分の通れるスペースを空け、もう一人が扉を開く。
「どうぞ。皆さん中でお待ちです」
「もしかして結構待たせたかい?」
「ククチさんたちで最後ですよ。まあ、親方はそこらは気にしないですし良いんでは?」
「はは……。違いない、違いない!」
笑いながら中に入るククチを追って、孝和もキールを抱えて歩き出す。
門番の横を通る時にチラリと門番を確認すると、すでに先程までの軽い雰囲気は微塵も感じさせずしっかりと視線を正面に向けている。
錬度と意識の高さを感じ取りながら、思う。
(何かすげえ厳重だ……。虎の穴に入るんなら虎の子が居ないと割が合わないんだけどねぇ?)
扉も全開ではなく、体を滑らせるようにして中に入る。入ってすぐに目隠し用の厚手の黒い幕が行く手を遮った。
厳重とは感じたが、ここまでとは感じていなかった孝和は少しだけ体をこわばらせる。布の向こうに人の気配を感じ、ゆっくりと幕をくぐるククチの後を追う。
「はぃい?何だよ、こりゃ?」
そこに置かれていたのは2台の馬車。目に入るのはそこにいっぱいに積み込まれる木箱と、それを忙しそうに運んで行く男たち。周りにはこれまた同じ木箱に色々と物を詰め込んで男たちの姿。
ずいずいとそのまま速度を緩めることなくククチはそちらに向かって進んで行く。
荷を積む彼らから少し離れたところにテーブルが置かれていた。後姿ではっきりと誰かはわからないが、少し頭の薄くなった男性と、それに寄り添う少し大柄な女性、さらにどこかで見たことのある銀髪の女性のシルエットが見えた。
「あ、ア……」
『アリアさんだぁーー!!』
その後姿に気づいた孝和が、声を掛けようとしたのをかき消すほどの音量(思念?)で、キールが腕の中から飛び出していく。
「あ、ぅ……」
その勢いに気付いたアリアは首だけを捻る。薄く笑みを浮かべた彼女の顔を確認して孝和は言葉を飲み込む。キールを最初に確認し、椅子を引いてそれを抱き上げた。
その後に追い抜かれたククチの苦笑いを、さらにその後ろでどこと無く所在無さげな孝和を見つける。
「あら、タカカズ!監察官は大丈夫だった?結構時間が掛かったみたいだけど?」
「あ、ああ。俺の方は何とか大丈夫だけど。それよりそっちの方こそ大丈夫だったの?あの時は結構、体調悪そうだったけど」
アリアはとりあえずキールを抱きとめて、どうしようかという表情をありありと浮かべた孝和に声を掛ける。
「大丈夫、大丈夫。あれから少し休んだらほとんど元通りになったわ。キールのおかげよ?ありがとね、キール」
『うん、よかったー。あのじゅつ、つくったばっかだったからー。あのね、いまならもっと、あまーいかんじでつくれるんだ!』
「あ、甘い?」
『うんっ!!がんばって、えーと……。しゅーせー?してみたっ!』
「そ、そう?飲みやすくなってるなら、良いんじゃないかしら?」
『やっぱり、おいしーほうがいいもんね!』
「いやいや、キール?修正点はそこで良いのか?」
さすがに我慢できなくなってツッコミを入れてしまった。
副作用とかそういうことではなく、まさか最優先の修正事項が味であるとは思ってもみなかった。
『えー?アリアさんも、ミリアムさんもゲホゲホしてたしー。ごくごくのめないと、だめなんじゃないかなー?』
「飲んだ後の体調とか、そういったトコがまず大事なんだよ。なんにしても体に悪いものだとダメだろ、やっぱ」
『なにゆってるの!ますたー!そこはいっちばんさいしょに、だいじょーぶにしたんだもん!!ぼくだっていっしょーけんめーそこはつくったんだからっ!!』
どうやら少々キールのプライドに傷をつけてしまったのだろう。ぷんすかと、背景に書き文字が浮かぶだろうという調子でキールがさらにアリアの腕の中にうずもれていく。
孝和はすねた子供のようにぷいっと視線が外されたのを、何となく感覚的に感じ取った。
「悪い、悪い。俺はお前がその術使ったとこを直に見てなかったからさ。一回でも見せてくれてれば何となくわかったかもな……。まあ、今度じっくりみせてくれよ、な?」
『むむむ……。じゃあ、こんどはもっとすんごいの、よーいするから!』
「す、すんごいの、か?一応ほどほどに、な?」
“すんごいの”の方向性がどのベクトルに向かうのかに若干の不安を感じながらも、少し機嫌を直してくれたキールの様子に苦笑気味の笑顔をはりつかせる。
「それは、それとして……。これで一段落、という感じでいいのかな?何がどうなったのか完璧には把握してないんだけど」
ちらりとアリアの後ろに視線を送る。先ほどまでアリアの横に座っていた男性が、椅子を引いてこちらに向き直っていた。
どうやら孝和たちの再会が落ち着くまで見守ることにしていたのだろう。
軽く孝和が会釈をすると、彼はその口を開いた。
「やあ、座ったままですまないな。先に謝っておくが、見ての通り僕は足を悪くしていてね。このままで説明をさせてほしいんだが、構わないかい?」
そう言うと、彼は自身の左ヒザを軽くなでるようにして薄く笑みを浮かべた。
「いや、別に構わないですよ」
「すまないね。君たちには色々迷惑をかけたというのに、助けてもらった側が呼びつけるというのもどうかと思ったんだけれども」
そこでふと気付く。
「あ、そういえば自己紹介がまだだったね。僕はここで行政官をしてるアデナウ・コーンだよ。いやぁ、見事に攫われちゃってねぇ。生きた心地がしないっていうのはああいうことなんだろうね。せっかく助けてくれたのに、その相手がこんなオッサンじゃあがっかりしたろう?」
「いえいえ、こっちから勝手に首を突っ込んだとこもあるんで、別にいいですよ。それよりなんかこっちも勝手に面倒ごと増やしたりとかしてたんで」
すっと手が差し出され、その意図を察したククチの手によって横に置かれた椅子が用意された。
「あ、どうもすみません」
孝和は頭を下げ、その椅子に座る。アリアも自分の座っていた椅子を孝和の横に移動させて横並びに座った。
同時にぴょんとキールがアリアの腕から、座った孝和の両腿の上に着地する。
自然と軽くその上に手を置く孝和。
手のひらを軽く押し戻してくる、程よい弾力が実に心地よい。
「まあ、茶でも用意するとしよう。僕の好みは少し濃いめなんだが、それでいいかい?」
「じゃあ、俺もそれでおねがいします。キールはどうする?」
『ぼく、おみずー』
テーブルの上には、少しへこみのある使い込まれたポットが置いてある。同じくテーブルの上に置かれた4個の陶製のマグカップへと、コポコポと音を立てて中身が注がれた。
それらを片手に2個ずつ、計4個を持ってテーブルに座っていた最後の一人が立ち上がる。
にこりと笑ってそれを孝和とアリアに指しだす。
ぺこりと会釈をしてマグを受け取った。その勢いのまま啜るように茶を口に含む。
「あ、美味い」
何の気なしにふと口から言葉が漏れる。肉の油気が少し残っていた口中を洗うように、強く焙じた茶葉の香りが満遍なく広がる。
何度かここのあたりで口にした茶は、どうしても塩気を含んでしまう水で入れたためか、どこかいまひとつな感が否めなかった。人によってはこういった淹れ方を好むものもいるのだろうが、孝和はどうもしっくりこない品物だ。
だが今口にしたものは、茶葉がいいのもあるが、濃いめに入れたことでその難点を覆い隠している。無理やりにその欠点を打ち消した感はあるとはいえ、自分の好みに近く口の中もさっぱりしたこともあって、すとんと肩の荷が下りたような充足感と安心感がある。
まあ、簡単にいうとほっこりしてしまったのである。
(美味いし、巧いなぁ。この茶、淹れた人……)
少し感動を覚えつつ、ポットをもった人物をみる。先ほどまでテーブルに座っていたこともあり、正確な身長はわからなかったが、立ち上がったことでその体躯がわかった。
170の後半と思われる女性としては長身と呼ばれるほどの背丈。それでいてすらりとした体つきに、白のシャツに乗馬用のズボンで包まれてはいるが、見える腕は少し削がれたような肉付きで骨ばっている。
何となくその体のバランスに“ある女性”が重なる。
(あー……。何となくこの人って……)
『アリアさんとかイゼルナさんと、おんなじかんじ?』
「ああ、そういやぁ、……って!?」
ぽんとキールから出た意見に同意してしまい、そのまま言葉が出た。
瞬間、孝和はある結論にたどり着く。
あれ、イゼルナさんて貴族じゃあなかったっけ、と。内縁で義父のアデナウ・コーンが非常にフレンドリーで忘れていたが、そういえばそうだったハズだ。
色々整理して行くと、コーン氏はともかくイゼルナの関係者、特に血縁関係の人間は“貴族”だと聞かされた記憶がある。
その貴族の一員であると推測される人物に、椅子に座ったまま呆けていたうえ、あまつさえ茶の準備までさせていたのだという事実に。
ぞくりと背筋に寒気が走る。
あれ、俺、何かいつの間にか詰んでるんでないかい、と。
「うわ、失礼しましたっ!!お茶なんか入れさせてっ!俺がやりますからっ!」
『ふわわわぁっ』
取り繕う暇など無い。兎にも角にも、立ち上がり謝罪の言葉を吐き出す。立ち上がった勢いのままキールが孝和の膝からアリアの膝に緊急避難を行う。
孝和もそれには気づいたが、今はやらねばならぬ事がある。勢いよく立ち上がり、女性からポットと、キールに渡そうとしていたのだろう深皿に入った水を受け取ろうと手を伸ばした。
「ああ、そんな慌てなくても。ほら、キール君もびっくりしてるわよ?ねぇ、アリアちゃん」
「うふふっ。そうですね、叔母様」
慌てぶりがさぞ滑稽に移ったのだろう。アリアと、そのアリアとイゼルナによく似た女性は微笑む。
その様子を見てフリーズした孝和の袖をアリアが引く。女性は手のポットをコーンに渡してから孝和の肩に手を置く。
とりあえず、座れ、ということだろう。
席に着いた孝和の膝に再度キールがよじ登り、うっすらと底が見えるくらいになったマグに茶が注がれる。
「あ、どうもすんません……」
人間ここまでくると、正直どーとでもなってしまえと投げやりになってしまうものである。
まあ、アリアもくすくす笑顔を浮かべているのだし、何とかなるだろうと楽観的に考えることにした。
「で、どう?そのお茶?ようやく外に出せるくらいの量が取れるくらいになったからって持ってきてもらったの。身内だけでなくて普通の人の意見も聞きたくって」
「意見、ですか?」
そう言って再度カップに口をつける。
今度は一気にではなく、啜るようにゆっくりと口内に入れ味と香りを十分に確認した。味は悪くは無い。むしろ上物と言えるだろう。香りの強さも申し分ないと思われる。
ならば、問題としては
「幾ら位するんですか、コレ?」
「大体、このビン一つで銀3枚ってところかな?高いだろう?」
コーンが持ち出した瓶は、丁度15cm程度のサイズであまり量が入りそうではない。
「……高いっすね」
「そう?」
「そうかしら?」
「それが一般の意見というものだよ、ご婦人がた。私の感覚では1ビンで銀1枚が限度だと思うんだがね?」
「……まあ、妥当かな、と思いますけど……」
正直な話、それでも高いとは思う。思うが、味も香りもなかなか上物であると感じた。食神フズの称号『食の開拓者』持ちの孝和が、そう考えるだけの品質は備えた逸品である。
ただ、それはまず買ってもらわないことには始まらない。
先ほどの会話にあったことから考えるに、まだ世間にはそう知られていない茶葉であることは確実で、所謂“ブランド”物ではないはずだ。
どんな世界であれ肩書は強みだ。
どこどこ産の、なになにという人物の作の、といった背景に人は弱い。
名が知れているということはそれだけでほかのものと一歩差が出る。
(そこら抜かしても結構いい線のものだけどねぇ……買いたいけどなぁ……もうちょい安けりゃなぁ……)
色々出費も嵩むのがこの商売である。出先での飲食はほぼ手出しで、宿は現地で財布と自分の疲労感と相談しながら、ちょうどよいものを見つけて泊まり、出発の際にはまた一通り必要なものを準備する。
それでいて報酬は、必要と考える分に色がつくかつかないかというところ。
正直、長くはできないし、やらないほうが言いに決まっている商売なのだ。
それでもその一発当ててやろうと考える博打的な職業であることは間違いない。
長々と前置きが長くなったが、要するに……
(実際俺、計算してくと金欠気味なんだよね……)
天を仰ぎながらずずずっと茶を啜る。
美味しいわぁ、と美味な茶と共に人生の世知辛さを飲み込んで行く。
「まあ、そういうわけでコレが商品なわけなんだ。かなりの量になるから今全員で箱詰めの最中でね。今回はどちらかと言うと顔見世に近い形でのお披露目だからそんなに利益は考えていないんだよ」
「はぁ、大変ですねぇ」
「何とかこの祭りで存在感だけでも見せ付けないと、他にもいい茶葉の産地があるからね」
「そう、お隣は本当にいいお茶が出来るのよ……。だからね……」
「はぁ、大変ですねぇ」
領地経営というものの大変さの一端を垣間見た気がする。
きっとこの他にも色々と考えることがこの二人には有るのだろう。茶葉を含んだ交易やら領民の生活やら、今回の件で問題になった治安であったりとか。
「だからねぇ。コレをきっちり運んでくれる人たちを探しているのだよ」
「はぁ、大変ですねぇ……。ん?」
コーンからずいっと差し出された紙。
恐らく乾きかけのインクが多少滲んだそれは、一度だけだが見たことのある書式で、実に実務的な代物であった。
何せこちらに来てからサインすることになった“契約書”である。
初めて見る書式だったのでじっくり読み込んで、粗がないかしっかり確認したのだ。
契約に漏れがないか確認するのは社会人として当然である。最低2回、出来るなら他の人間の目でも確認した上で、判を押さなければならない(ハンコではなくサインだったので、緊張もした)。
「えーと、冒険者ギルドの契約書?」
「そうそう。後はキミのサインだけなのだよ。ほら、お嬢のサインもここにある。この下にササッと書いてくれたまえよ」
(え?ここ、アンケート詐欺の現場?)
そんなことは一切無いのだが、何故か昔のTVの詐欺特集を思い出した孝和であった。
こーいう戦闘とかないティーブレイク的な話、結構すきだったりしますねぇ。
次回の更新はやる気が出たら早いです。出なければ遅いです。
最後に……「予定はあくまで予定です」