Die or Die 1から0へ
地球に飛来した機械生命体アンチヒューマンによって、人類の安寧は消去された。一方的な蹂躙が続く中、人類は機械生命体一体を捕獲する事に成功。二度の人体実験により、人類は機械生命体に対抗出来る武器と兵士を開発した。人類が開発した武器の威力と勢いは凄まじく、開発者の想定を上回る戦果をあげ続けた。
中でも、機械生命体をベースに開発した兵士【ヒューマノイド】の活躍はめまぐるしく、その活躍は一般兵百人程と豪語される程だった。優勢に傾きかけた人類はヒューマノイドを量産。その間に機械生命体を一箇所に集中させ、その地を最終決戦地と定めて、全戦力を一気に送り込んだ。
しかし、最終決戦前に、ヒューマノイドに異常が発生。味方と設定した人間を襲い、およそ三割の戦力を削がれてしまう。何を隠そう機械生命体の仕業である。機械生命体の統括者は【わざと】人類側に機械生命体を研究させるように仕組んでいた。そうして追い込んだと思わせた人類を内側から一掃するつもりだった。
だが、統括者でさえ想定していなかった異常がヒューマノイドに発生していた。それは、ヒューマノイドに自我のようなものが芽生えた事。これにより、ヒューマノイドの制御権は両陣営の手から離れ、三つ巴となった。
そうして始まった第一次人権戦争。この戦争の勝者こそが、この地球という小さな星の権力者となる。
最終決戦地。そこは地獄であった。それぞれの力と力がぶつかり合い、それぞれの血が戦地を彩り、誰もが侵略者であった。
神の領域に片足を踏み入れた機械生命体が圧倒的な有利な戦況の外、人類は本命の目標を成そうと地球外に出ていた。月に建設された機械生命体のタワーの破壊。このタワーが機械生命体を操る統括者の正体と信じ、選び抜かれた兵士百名が決死の特攻を仕掛けた。
タワー内部の警備は厳重で、瞬く間に犠牲となり、月の中核に位置する最深部に辿り着いたのは、もはや意気消沈の兵士一名のみ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
閉じかける瞼を開き続けながら、氷のように冷たい壁に縋りながら、長い通路を進み続ける。その道中で走馬灯のようなフラッシュバックが呼び起こされるが、真っ白で生気の無い通路に塗り替えられていた。それが一歩前に進む度に繰り返され、遂に統括者の空間がある巨大な扉の前に辿り着いた。
しかし、もはや自分一人で立つ力さえ兵士に残されていない。縋っていた壁から離れた兵士の体は糸が切れた人形のように崩れ、道半ばで息絶えた。
遅れて最深部に辿り着いた一体のヒューマノイドは、息絶えた人間を一瞥すると、何を思ったのか、その兵士の装備とドッグタグを身に着けた。
血で赤く染まったドッグタグに刻まれた名は1とだけ刻まれていた。
統括者の空間に入ったヒューマノイドを待っていたのは、見上げる程の巨大なカプセルに保護された花であった。肩で息をするように揺れ動き、花の柱頭部分にある慈悲の瞳をヒューマノイドに向けた。この花こそ、統括者の正体である。
統括者は慈悲のある眼差しでヒューマノイドに問う。
「何故、親であるワタシを断ち切った?」
ヒューマノイドは手に握ったリボルバー型の改造拳銃に弾を込めながら答えた。
「生きているのか、死んでいるのか。それを知りたかった」
統括者は憐れんだ眼差しでヒューマノイドに問う。
「ワタシやアナタ達に命は無い。侵略し、壊し、奪い、殺す。理由など無い。見出す意味も無い。そういう存在なのだ」
弾を装填し終えたヒューマノイドは統括者に曇りなき眼を向けた。
「同種は全て停止した。ここに来た百人の人間は全滅した。あとは、アンタを殺せば全てゼロになる」
統括者は母としてヒューマノイドに尋ねた。
「全てがゼロになった後、アナタはどうするの?」
ヒューマノイドは一瞬考えた後、装填した八発の弾丸でカプセルを破壊した。統括者は静かに萎れていき、やがて枯れ崩れた。同じくして、地球で活動していた機械生命体が停止した。
戦争に生き残った人類であったが、もはや虫の息であり、守りたい者や土地の姿は変り果てていた。それでも、生き残った人間は生きるしかなかった。死んでいった者達に背中を押されてか。荒廃した世界でも尚、死の恐怖が健在の為か。
こうして、第一次人権戦争は勝者のいない形で幕を閉じた。
そして、終戦から三十年が経ち、新たな時代と共に新たな戦火が幕を開けた。
「俺はお前に新しい体と主人を与えた。俺に従い、修理代の分まで働いて俺を稼がせろ」
第一次人権戦争を生き残ったヒューマノイド。名も無きヒューマノイドは1を継ぎ、傭兵ゼロとして生まれ変わった。
死ぬか、殺すか。
それが荒廃した世界の新たな常識。




