会合〜魔法?使い〜③
「助けてくれてありがとうね」
「困っている人がいたら助ける。当然だよ」
ギリギリ使えそうな廃墟のビルに避難した後、そこで拠点を一時的に構えることになった。辺りは暗く、僕らは充電式ランプの微かな光を頼りにサバ缶をつついていた。
「反撃の手段はあったんだけど……急に来られたから準備できなくて」
「?相手は全員魔法も、銃も使えなかった様子だったけれど。それに今の魔法技術なら、あのくらいの魔法ならばすぐに打てると聞いたことがあるけれど?」
すると、その子の白い目に困惑の表情が見えた。
「確かにそうだけど、それは本当に極めた人の話。普通の人はそんなに速く使えないわよ。そもそも私、魔法使えないし。」
「ふーん…………え?、え?………え?」
一瞬理解ができなかった。視界から入ってきている情報とたった今伝えられた情報が矛盾を起こして、頭の中がショートしてしまった。
「え…だって…え?そんな魔法使いですっていう格好してるのに?」
「?そうよ?なんか変?」
「えっと…失礼だけど、じゃあなんでそんな格好してるの?」
「コッチのほうがテンションが上がるからよ」
真剣な顔でそう言われる。……理解できたようで、理解できなかった。
「それなら、どうやって3人も凍らせたの?」
すると、待ってましたと言わんばかりにスカートのポケットから何かを取り出した。
「これは…閃光弾?」
「違う。似てるけどね。これは言ってしまえば"氷結爆弾"。魔力を人工的に再現して、その力を使って急激な吸熱を行って辺りを凍らせるの。……人に使うと1,2時間くらいは凍らせられる」
氷結爆弾を受け取り、近くでよく見てみる。確かに、仕組みや構造は閃光弾と同じだけれどガラス部分は微かに冷たい。
「凄い…理屈はよく分からなかったけど、魔法みたいだ」
すると笑顔になって女性が立ち上がる。
「"余りに発展した科学は魔法と見分けはつかない"……ってこと!」
「な…成る程…?」
その目にはなんというか、色々強い人だ。すると、女性はこちらに近づいてきた。
「ねぇ、貴方は次に何処に行くの?」
「え…デムレ自治区だけれど…」
「行き先同じじゃない。それならちょうどいい。」
「?」
「取り敢えず…少なくともデムレ自治区までは、私と組まない?」
一瞬、また理解をしかねたが、今回はしっかりと理解できた。
「え…いや…でも…」
目的的に巻き込むわけには…と言おうとしたものの
「一人よりも二人で行動したほうがはるかに安全よ?」
ぐう。正論。
「……わかりました。取り敢えずデムレ自治区までだよ。」
「よし、契約成立!……そう言えば、名前を聞いていなかったわね。名前は?」
「シドー・ラナイトです。」
「シドーね。私は、ルナ・キトカロス。ルナって呼んで。」
ルナは手をこちらに伸ばしてきた。
「よろしく。ルナ」
思わぬ形で仲間ができた。少なくとも、暫くは暇になることは無さそうだ。