悲報 御一行、呼び出しを食らう①
「遅いわね…」
だいたい30分くらい経った。シドーもクロもまだ帰ってこない。パンも新しく焼いてもう3枚目に入った。
「そろそろ様子…見に行ってもいいわよね。」
私はパンを咥えて、草原の方に歩き出す。2人には少し歩いたら、すぐに出会えた。……脚を怪我したレイと、縛られた気絶した人7人のオマケ付きで。
「ごめんルナ。遅くなっちゃって」
「いや、それはいいんだけど。レイ、どうしたのその脚。」
「ちょっと油断しちゃって…ね?」
レイは子供っぽい笑顔を浮かべる。だけれど、すねに巻かれた包帯からは血が滲んでいた。
「油断して、っていう怪我には見えないけど。」
すると、レイの顔が、なんというかイタズラのバレた子供のようになっていたことに気付く。目線も私の後ろにある。
「何?その顔。」
「俺に見つかった時の顔だな」
真後ろから声が聞こえる。
「「うわぁっ!?」」
私とシドーは飛び上がりそうなほどに驚く。気配なんて一切なかったのに。
「って、ユーフォさんじゃない」
「よお。久しぶりだな。」
ユーフォさんは笑顔でこちらに手を挙げる。
「お久しぶりです。」
シドーは頭を下げる。こういうところをみてると、相当いい親だったんだなって思う。
「で、見ない顔だな。誰だお前」
「クロだ。今はそう名乗ってる」
「そう名乗ってる?」
「記憶喪失みたいで、取り敢えず僕達に同行させてるんです。」
少し困惑したユーフォさんにシドーが説明を挟む。
「アンタは…確かあれか。シドとルナが言ってたやつ。ユーフォ・スタスだっけか?」
「そう。クリーナー幹部ユーフォ・スタスだ」
「まぁ、幹部だとかそういうのはいいんだが、どうして俺らのところに来た?」
クロがそう聞くと、ユーフォさんはレイのほうを見た。てか、肩書はどうでもいいって…やっぱり適当すぎるでしょ、コイツ。
「レイが戻らねぇから様子を見にくれば…あんな三下どもから一発食らうなんて随分なまったな」
「すみません。兄貴」
レイが頭を下げる。ユーフォさんは言い方こそ厳しいけれど、私にはそこまで責めている感じには思えなかった。むしろ、心配しているような…
「まぁいい。何があった」
「実は…」
聞くと、私と別れたあとにフューチャーズの奴らが襲ってきて一晩中1人で戦っていたらしい。別にそこまでしなくても…と思ったけれど。
「ルナ達の近くだったから…襲わせるわけにはいかないって思って」
と言っていたので何も言えなくなってしまった。
その後、次々と襲ってくる奴らに環境も相まって手こずり脚を撃たれてしまったけれどたまたま散歩していたクロが見つけて何とか生き延びたそうだ。
「で、その戦果がコイツラと」
ユーフォさんは倒れている7人に目線を向けた。
「いや。それはシドー達がやってくれたやつです。私は…その、何人か…」
そこで私たちを見ながら言い淀み、ユーフォさんに目線が移った。
ユーフォさんは頷いて。
「わかった。こっちで処理しとく」
と言った。この時レイの肩の力が少し抜けたのが分かった。
シドーは何の会話をしているか分からなくて首を傾げていたけれど、こういう時分かってしまう自分が悲しい。
「…所で、何で散歩してたの?気がついたらいなくなってるし…」
「暇だったから。反省はしていない」
「この自由人…」
と、クロと私が言い争っているのをよそにユーフォさんは難しい顔で何か考えていた。
「……妙だな…」
(全員がチャカを持ってるなんて…フューチャーズにそこまでの資金源も、実力もなかったはず…)
「どうしたんですか?」
と、シドーが聞く。
「いや、ちょっとな…」
するとユーフォさんのポケットからメールの着信音がなった。
「わりぃ。少し待ってくれ」
スマホを取り出し、目を落とす。やがてその目線はこちらに向けられた。
「シドー、ルナ、クロ。」
「なんですか?」
ユーフォさんの口からでてきたのは想定外の言葉だった。
「うちのカシラからお呼び出しだ」
「「え?」」
私とシドーは愕然とし、
「面白くなってきたなぁ!」
クロはとてもいい笑顔になっていた。
ら




