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影と天秤と

「おはよ。ルナ」


「おはよぉ……ふわぁ…」


大きなあくびと共にルナがテントから這い出てくる。何時もは誰よりも速く起きてくるルナが珍しく今日は一番遅い。


「今日は遅いね、どうしたの?」


「別に。なんにもないわよ」


ボサボサになった髪を軽く整えながら答える。寝起きの顔も相まって新種の花みたいな髪形になっていた。

そんなルナを横目に僕はとある事に気づいた。クロがいない。


「あれ?クロは?」


ルナは知らないというふうに肩をあげる。


「探してくるから、これ食べてて」


僕は軽く焼いたパンをルナに渡し少しだけ平原の方を見に行くことにした。

最初はどこまでも続くと思っていた平原だけれど、今や遠くの方にデムレ自治区と思われる建物が見える。


「クロー!どこいったのー!?」


いつもの何倍も声を張ると平原の遠くの方まで声が届く。だけれど、返ってくる声はない。


「何処に行ったんだろ…?」


そうぼやいた瞬間だった。

遠くで空気を裂く破裂音。小さな余韻が平原に広がる。余りにも遠かったけれど、銃声なのはすぐに分かった。すぐさま僕は音の方向へと向く。そこは小さな森になっていた。多分、クロはあそこに行って…そこで何かに会ったと思う。


「少し待っててね…すぐに行く!」


僕は銃声の方へ走り出した。



「はぁ、はぁ…」


音の発生源に近づくほど、音は大きくなり、数も増えていった。僕はいつでも抜刀できるように


(何人いるかわからないけど、全員銃持ちって考えて良さそう…!)


すると、遠くから怒声がした。


「おい!何やってんだ!こっちは7人だぞ!?銃もあるのに何で仕留めきれない!?」


「す、すみません!…あの黒いやつ、人抱えてるくせにやけにすばしっこくて…!」


黒いやつ…つまり、クロのことの可能性が高い!6人全員に狙われてるってどれだけ運がないんだ!?って、そんなことはどうでもいい!速く助けないと!

僕は可能な限り最高速で近づいて


「取り敢えず、一人!」


手始めに目の前の奴の頭を木刀で思い切り叩く。この程度じゃ死なないとは思う。叩かれた奴はゆっくりと倒れた。


「誰だ?クリーナーの奴らか?」


「いや、違う!」この集団のリーダーっぽいやつが叫ぶ。「ありゃ最近うちで手配されてるやつじゃねぇか!」


「丁度いい。殺せば俺たちに箔が付く。」


数目に見える範囲で5人。全員赤い蜘蛛の刺繍が服の袖に施されている。たぶんもう1人、クロと誰かを追いかけに行ってるヤツもそうだ。そして、全員拳銃を持ってる。

僕は木刀を正面に構え直した。すると


「かはっ」


間抜けなうめき声と共に、1人こちらに吹き飛んできた。


「どうし…」


その刹那、黒い影が木の陰から飛び出す。


「がっ…」


もう一人、ほぼ水平に吹き飛んだと思うと木にぶつかって気絶した。黒い影を見ると…


「クロ!?何処行ってたの!?」


その影はクロだった!


「お、シドじゃねぇか。お前も散歩か?」


クロは飄々とした様子でこちらに向かって手を振った。誰かを抱えてはいない。

 

「勝手に散歩行かないでよ…てか、これどういう状況?」


「見ての通りだが?」


「だが?じゃないよ!?経緯を説明してよ!?」


色々と急展開すぎて、僕が追いつきない。一人、近づいてきたので喉に突きを入れる。人が倒れた音がした。


「そうだな…取り敢えず、残ったのを片付けちゃうか。」


「あぁもう!」


その言葉と共にクロはスタートダッシュを切る。銃弾の雨がクロに降り注ぐが、意に介さない。その目は、獲物を前にした肉食獣のようだった。


「お前、邪魔だから肋骨折れとけ」


見事な後ろ回し蹴りが1人に入る。食らったやつは倒れ、動かなくなった。

無論、僕も何もしないわけじゃない。


「聞いてた話と違いすぎるんだけどぉ!?」


なんか嘆いてるけど気にしない。居合をを当て、そいつを倒す。


「あと一人…」 


と、最後のリーダーっぽいやつの方をを見るとそいつは逃げていた。が、何処からか銃声した。僕は援軍が来たかと思ったけれど、予想とは裏腹にそいつの足からは血が噴き出していた。


「あだっ……誰だ!?」


「あたしだよ。」


声の主が木の陰からでてくる。赤いポニーテールに、腰のナイフと銃のホルダー。そして金色の天秤の刺繍。


「レイさん!?」


「なんだ?知り合いか?」


え、ちょ、どういうこと?と、僕はパニックになっているのを尻目にクロはレイさんに声をかける。


「もう動けるのかよ?」


「応急処置はした。弾も貫通してたし。」 


この間も男は喚いていた。僕は、この混沌に喚きそうになってしまった。

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