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魔法?使いは眠れない②

「こんな時間にどうしたの?」

平原にあったほどよい大きさの石に座るやいなやレイさんは話し出す。

「別に大したことじゃありませんよ。そういうレイさんこそ。」

私は笑ってそう返す。レイさんの声は凛としていて、夜空にどこまでも響き渡りそうな力強さだった。

「レイでいいよ。敬語もいらない。」

「見回りの最中でさ。見慣れないテントがあったから少し監視してたんだ。」

「あっごめん。まさかこれで疑われるとは思わなくて。」

すると、レイは真剣な顔をした。

「奴らの勢力が増してきてる。えっと…確か…」

「フューチャーズ」

「そう、それ!で、"石橋を叩いて壊す"って言うくらいだから念の為」

「なるほどね…あと、石橋を叩いて壊すんじゃなくて渡るのよ」

「あれ?そうだっけ?……まぁいっか!」

あっけらかんと返される。

なんというか、クロと同じ匂いがする。自身の知らないことに対して全くの無沈着。……そういう生き方もあるんだろうけど、やっぱり、そういうのは私は怖い。

「ところで、何で2人は旅をしてるの?」

「探し物の最中よ。」

「探し物?何か落としたの?」

「そういうことじゃなくて……」

こういう人の相手は少し疲れる。何も知らない子供を相手しているかのようだ。だけれど、不思議と嫌な気分にはならない。

「要は、夢をかなえるための冒険中ってとこ」

「え!?凄い凄い!」

と、レイが私の両手を取る

「やりたいことのためにそこまでできるって凄いよ!」

同じくらいの年齢のはずなのに、その目は私よりも何倍も子供らしく輝いていた。

「あたしにも夢があってさ、みんなに恩返しがしたいの」

レイは手をはなして、真剣な声色で話し始める。

「恩返し?」

すると、少しの躊躇いの後に

「あたしさ、元々は捨て子だった……らしいんだよね」

「!?」

「びっくりするよね〜。私も覚えてないし、誰が捨てたかは分からないけど、そこをユーフォ兄貴と父さんが拾ってくれたらしくてさ」

「そのあと、みんなは自治区に戻そうと色々やろうとしていたけれど…あたしはその時、ずっと皆と居たかったからクリーナーとして生き始めた」

「ただ、最近このままでいいのかなって。まだまだ兄貴達に頼ってばっかだし、頭も悪いから。もちろん、私にできることなんて少なすぎるけど、どんな形でもいいから、恩返しがしたいなって。」

「………」

「何か変われるきっかけが………って話すぎちゃったね。」

「いや、別に構わないわ。こっちもいろいろと聞けて楽しかった」

スマホを見ると、もう0時になりそうな時間だった。

「それじゃ、私はそろそろ戻るわね。」

「気をつけてね。あたしはもうちょっと見回ってから帰るから」

「わかった。じゃあ、おやすみ」

と、テントに戻ろうとすると

「ねぇ」

レイに声をかけられた

「もし、もしだよ。あたしも一緒に旅をさせてって言ったらどうする?」

暗闇の中で希望を探す子供のような声だった。

私は一瞬、言葉を詰まらせる。

「いつでも歓迎するわ。困っているのなら…私達が助けてあげる。」

自分でも、一瞬何を言っているか分からなかった。

暗闇でよく見えなかったけれど、レイはすごい笑顔になったように見えた。


レイとルナが別れて数分後、レイたちのいた岩の近くからから人影が出てきた。月明かりで金髪と整った顔には不釣り合いな顔の大きな傷があらわになる。その人物…ユーフォ・スタスはタバコを吸いながらため息混じりに

「できる限り厳しく接してきたつもりだったが…俺もカシラと同じだな」

と、こぼした。

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