表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

始動

「それで、ここのボルトを締めて完了だ」


 タカノ伍長は、見た目に反して実に堅実な男である。作業手順書の通りに外装を確認し、整備する様は、熟練の職人と遜色がない緻密さだ。素直に感心していると。


「お、ヴァルキリーがお出ましだぜ」


 女性の話になると、たちまちにその評価を改めたくなる。


「ヴァルキリーですって?」


「ほら、あれ。コイツのパイロットだ」


 リュウは驚きを隠せない。


国掴神(くにつかみ)のパイロットは女性なのですか?」


「なんだ、お前知らなかったの?」


 おそらく、パイロットの情報は軍事機密であろう。この格納基地では常識だろうが、リュウが知る由はない。


「鋼鉄の女が、鋼鉄の棺桶にって、ここじゃ有名な話だぜ」


「鋼鉄?棺桶?でも、意外とキレイな方なんですね」


 リュウは思ったことを口にする癖がある。


「それも知らないのか。ま、棺桶云々については後で飯食いながら教えてやるよ」

「鋼鉄っていうのはその、あれだ。キツいんだ、性格が」


「へえ、タカノさんが言うならよっぽどだ」


「お前なぁ……」


 自身の仇討ちを、異国の、しかも女性の手に委ねるのは、男としての矜持に関わることだ。だが、組織における階級や規律は絶対である。リュウは、言いかけた言葉を飲んで、仕事へ戻る。


「あと1時間だな。そしたら飯だ」


 新兵の初日とは、こうして軽口を叩きつつ、穏やかに過ぎていくものだと思っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ