東覇征役
拙作にお越しくださった皆様、本当にありがとうございます。作者の「ふゆはなべ」と申します。
どうしても適当なタイトルが思い付かなくてですね、ちょっとキメキメで書いてみました。もっとキャッチーなネーミングを思い付けば良かったのですが……。無念。
突然ですが、皆様ロボットはお好きでしょうか?また、SFチックな終末思想は如何ですか?
私は、物心ついた頃からどちらも大好きでした。小さい頃は「ゾイド」を。その後は「ガンダム」、「パシフィックリム」と、スケールの大きなものが好きです。趣向は変わりますが、ヤマトや銀英伝なんかも。
更に「風の谷のナウシカ」や、「エヴァンゲリオン」「ぼくらの」「ギガントマキア」など、終末思想的な世界観と、それに抗うキャラクターに魅了されました。
本作は、そんな作品達に影響を受けた、私の妄想物語を文章にしたものです。(同じような趣味をお持ちの方にオススメ致します)
ロボット・SF人気が下火の昨今ですが、それに抗い、この魅力を伝えたいです。強いぞー!かっこいいぞー!
シンプルで、重厚で、地を這うリアルさの中にありながら、どこか畏怖的で神格化される、そんなロボット像が目標です。
……と、この時点でかなり読者層が絞られるジャンルです。なので、ロボットに親しみがない方にも楽しんで頂けるよう、キャラクターやストーリーも自分なりに練りました。
シンプルな登場人物と、必要かつ的確な描写を心掛けています。
個人的に、構想には納得がいっているのですが、上手く皆様に伝えられているか不安です。文章力や表現力、描写に難があるかもしれません。
ですから、面白くないと思ったら是非コメントください!批評やダメ出しも大歓迎です。
また、面白いと思った時は是非レビューお願い致します。とても喜びます!
長くなりましたが、無理のない範囲で読み進めてくださいね。それでは。チャージ!!
拡大戦争の開始から数年。破竹の勢いで進軍し、大陸最東端に到達した〈アスタン無限帝国〉の一隊は、眼前に広がる大海を臨みながら、更なる東征に思案を巡らせていた。
「海を越えるには船がいる。ヤツと兵士を運ぶ巨大な船だ。帝国の造船技術では、すぐという訳にはいかんだろう」
「うむ。取り急ぎ、中佐にそうお伝えする」
彼らに海を渡った経験はない。大陸中央部に勃興した帝国は、その勢力を陸伝いに拡大してきた為だ。西方に展開した同胞の戦況は不明だが、東方戦線における初めての障壁が、この大海であった。
「先日の都市に、造船技師でも居れば話が早いのだが」
「……あの惨状では、生き残りなどとても望めまい」
「そうか。まったく、愚かな者達だ。素直に服従しておれば良いものを」
拡大の障壁となる集団に対する、彼らの戦法は実にシンプルだ。服従する者には庇護を。抗う者には、徹底的な破壊が約束された。
「おい君、これを通信兵に」
2人の下士官は話をまとめると、近くを通りがかった兵士に伝令文を渡す。それはすぐに前線のキャンプに伝えられた。
「中佐、伝令です。我が軍は勝利、大陸の最東端まで手中におさめました」
キャンプのテントにて、椅子に深く腰掛けるその男は、部下に背を向けたまま、報告を受け取った。
「しかし問題が1点」
部下が続ける。
「なに?海の向こうに島嶼だと?」
押し黙っていた男はそう言うと、さっと立ち上がり、机に置いてあった鉄製の半仮面に手を伸ばす。慣れた手付きで装着すると、報告に来た部下の方に体を向けた。
深い紫色に統一された軍服と、鼻まで覆う仮面が、その禍々しい雰囲気に拍車をかけている。胸元には、奇妙な人型を模したバッジが取り付けられていた。
「よろしい。では造船を急げ。リミットは5年だ」
「承知致しました。して、中佐」
「なにかね」
部下が怪訝そうな顔をしつつ訊ねる。
「あの子供達は何者でしょう」
視線の先には、齢10代前半の少年少女が集団で座り込んでいた。数はおよそ20人ほど。空を見上げてひどく怯えている。彼らの顔付きは、帝国軍人の多くと異なり、現在地である大陸東部に多く居住する人種の特徴が見てとれる。
「ああ、恭順の印にと、周辺部族から差し出された哀れな者達だ」
「……野蛮ですな」
「私もはじめはそう思ったが、君の報告を聞いて、1つ閃いたよ」
不敵な笑みを浮かべながら、男が再び口を開こうとしたその時だった。
「中佐!北に向かわせた部隊が救援を乞うております!」
走ってきた兵士が、テントに勢いよく転がり込んでくる。
「私の出る幕があるのかね」
男は冷静に問い直す。
「なんでも、複数の鉄塊が突撃を繰り返してくるので、部隊の装備では止められず、被害が甚大であるとのこと」
「初めて聞く〈遺物〉だな。部隊にはすぐ下がるように伝えろ」
男は同時に、視線を子供達に向け、部下に言い付ける。
「彼らも丁重にな。大事な戦力になる」
「はっ。ご武運を」
部下はそれだけ言うと、うやうやしく頭を下げ、その場を離れた。
「では、方角と角度だけ知らせろ。10分後に焼き払う」
「ここから、でございますか?」
兵士の顔が、驚きと恐怖で満ちる。
「私を誰だと思っている。誤射などせんよ」
男が軽い足取りでテントの幕を捲ると、そこには目を疑うような光景が広がっていた。
なんと、鈍重な人の形を模した物体がそびえ立っていたのである。子供達の怯えた視線の先にあったものは、正にこれであった。
下から見上げたのでは、その全貌をハッキリとは確認できないほど。旧世紀の高層建造物群と見紛うほどのスケールだ。
「出番だ〈火の古神兵〉よ」
男が神と呼ぶ、その巨大な人型に乗り込むと、やがてゆっくりと動き出し、北の方角を向いて動きを止める。そして頭部に備わった、口と思しき器官が開いた。
「よし、焼き払え」
次の瞬間、人型の口元から、凄まじい光を放つ楕円形の高エネルギー弾が放たれた。閃光は大地を這うように、跡形も残さず直進する。一瞬の静寂の後、轟音。着弾地点には、大きな傘状の雲が沸き上がり、少し遅れて微小な衝撃波もやってきた。
「世界の理を覆す力が、今や我が手中に!」
大陸各地で発見された〈古神体〉は、やがて帝国により〈古神兵〉へと軍事転用された。無尽蔵のエネルギーを供給し、人類を飛躍的に発展させた幻想は、今や破壊の体現者へとその姿を変えている。