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テイムに準ずるなにか

ゴーロ山はわが国、フリード王国の北に位置する山で、年中雪が降る。

ゴーロ山のふもとは雪が降っており、観光客が多い。

もちろん観光客が多いってことは安全ということの裏返しではあるがひとたび山の中へ入ると、危険度が増す。

だからゴーロ山の周りは柵で囲まれており、ふつうにしていれば山に迷い込んだりとかはない。


そんな厳しい環境だから、草なんてものはほとんど生えない。

スノーリーフはそんな環境下でも強く生きる草として有名らしい

もちろん、俺は知らなかったけど。


で、スノーリーフは特殊な環境下でしか生育しないらしく、平地でたくさん育てようとしてももちろん難しい。

しかも、保存がきかないらしく、ふつうに流通することもない。

だから俺たちが取りに行くのだが。


もちろん俺たちが町を出てすぐ北行けば雪が降るというわけではない。

だんだんと北へと進んでいくにつれ雲ができ、そしてそれが厚さを増していく。

その厚さに比例するように雪も強くなっていく。


まだ雪が降ってない道中、

「そういえばメリル様は『テイム』ができるとおっしゃいましたが、私にも見せてはもらえないでしょうか」

とニコニコしながらサラさんが珍しく俺に対して要望を言ってくる。


サラさんが俺に何かしろなんていうことは今までなかったのに。

それほど珍しいのか?

もしくは、俺の成長がうれしいのかな…?


でも、すみませんサラさん、

ホントはそんなスキルなんてないんです。

俺はどうしたらいい?

なんて思いながら、ターナーに目配せをしてヘルプを求める。


ターナーはそんな俺の心からの助けを察したのか

サラさんに聞こえないように

「ここでちょっといったん止まろう」

と耳打ちする。


俺はアドバイスに素直に従う。

「サラさんちょっと止まりましょう」


「はい、メリル様」


でどうすればいい?とターナーに目で訴える。

「正直に言っちまえよ。楽だろ」


いやいや、もう俺自尊心のためだけに王国内にスキルあるって嘘の噂流しちゃったし、

後戻りできないんだけど。


「あっ、あそこにスライムがいますわ。もしかしてあのスライムをそのテイムするってことですか」


いや、スライムもこの世界にいるのかよ。

しかもタイミングよく出てきたせいでまたサラさん変に解釈しちゃってるよ。

なんて思っても俺は嘘に嘘を重ねてしまう。

「もちろん、あのスライムをテイムするために止まってもらったんですよ」


ターナーのほうを見ると

はぁ、とため息をついている。

こいつまた嘘重ねたなみたいな感じであきれているのは俺でもわかる。


「サラさんちょっと待っててください。人に見られるとちょっと緊張しちゃって…できないんですよ」


メリル様がそういうのならと、俺たちが見えないように、木の陰に隠れてくれる。

「ターナー、おれはどーすればいいとおもう?」


「スライムっていうのは、無害で、力はそんなないのよ。それでいてビビりだから脅かせば従ってくれるかもしれないぞ」


えぇ、そんなもんなのか?

俺は疑問をもってが、ほかにすべを知らないので

剣を取り出し、サラさんから教わった剣技をスライムの前で披露してみる。

これでどうだ…?


ぷっ。


「えっ、今、ターナー笑った?」


「いや、笑ったのは俺じゃない。こいつだ」

といってスライムのほうを指さす。


えっ、こいつ今笑ったの?俺の剣技を?

そんなひどかった?


と俺は剣すらまともに扱えてないことをスライムに教えられへこむ。


「どーせ、スライムにも笑われる人間ですよ…」

俺はいじけだす。


「しょーがねーな。こうやってやんだよ」

とターナーは、軽く炎を吐き、ぐるるぁと叫び威嚇する。

ビクッというそぶりを見せるスライム

「俺の言うこと聞くよなぁ?」

スライムはターナーのこの言葉を聞いてこくっこくっとうなづくそぶりを見せる。



わぁ、恐怖での支配。

これは…、違う

嘘ついてる俺が悪いんだけど

俺の想像するテイムとは全然違うぞぉぉ。

しかも俺の剣技ってただ吠えるのよりも怖くないのか?


スライムはホントにびくびくし、震えおびえているのが誰でもわかる。

さすがにこのままだとかわいそうだと思って俺はスライムの頭をさすって大丈夫だよ

と言ってあげる。


するとスライムのほうも俺にすり寄ってくる


俺とスライムは心が通じてる。そんな気がした。

「ほら、こうやってやった方が正解だよ」

声を弾ませて俺はターナーに言う。


「いやいや、これはアメとムチでお前さんがアメのほうだったから、相対的にメリルに従っただけだよ…」

と、ターナーはなにかを続けようとしていたけど

「まぁ、結果オーライってことでいいか」

と、釈然としない様子だったけど、納得はしてくれたようだ。


「ついてきてくれる?」

とスライムに言えば、コクコクとうなずいて、俺の方へとぴょんと飛び乗る。


うわぁ。かわえぇ~~。



そして、俺たちを見ないよう隠れてもらっていたサラさんを呼び戻す。

「まぁ、すごい。スライムを仲間にしたなんて。スキルの話は本当だったんですね」

目を輝かせるサラさん。


「僕は嘘なんてつきませんよ」

自信満々に俺は返す。


ターナーはうわっこいつ。また平然と嘘つきやがったみたいな顔しているけど俺は見なかったことにする。


雪が降りだしたから、服装を変える。

俺はもちろん厚手の防寒具を着る。寒がりだというターナーは布でぐるぐる巻きにしてやった。

サラさんは俺よりもはるかに薄そうな服に着替え始める。

聞けば、あまりにも服装が嵩張るとと動きづらいし、私はこんな感じで動くんであったまるんですよと、

やはり、いつものように剣を華麗に振り回す。


「わかりましたから。剣はそんなむやみやたらに振り回さないでくださいよ」

と俺が懇願するように言うとサラさんはしゅんとしながらも俺の言うことを聞いてくれた。


降り始めの頃には手のひらにのってはすぐに消えを繰り返していた雪が、山のふもとまで来ると肩にすぐ積もるようになり、振り払っても積もってしまうからあきらめて積もらせたままにする。

俺たちは、スライムを新たな仲間にし、ゴーロ山へと到達した。


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