もう一人の転生者?
ガサッ。
俺は、落ち葉の山に足を突っ込む。
やっべぇ。
音だしちゃったか?
気づかれてないだろうな
俺はそっと顔を出しドラゴンのほうを確認する。
うっわぁ。こっち見てるよ。
しかも、がっつりこっち見てるよ。
ホントにどうしよう。
俺は見つかってしまった緊張から、呼吸が無駄に上がる。
どうにか抑えようと、小さく深呼吸をして
呼吸を整える。
しょうがない。
せこい手だがあれをやるしかない。
俺はうつぶせになって寝る。
何をしているのかって?
そう、死んだふりだ。
ちょうど、手錠のようなものを持ってるから、
あいつが不用意に近づいてきたところを
これで、捕まえてやろうって作戦だ、
ほら、ドラゴン、こっちにこい。
もうちょっとだ。いいぞ。
ドラゴンは歩みを途中でやめ
ドラゴンの口から煙が上がってくる。
そしてボゥワァと炎を吐き出す。
そして俺に向かって炎を吐きかける。
あっつぅ、あっつい、あちちち。
ドラゴンの炎が死んだふりをする俺のお尻をかするようにしてこちらまで来る。
いてててて。
俺は焼かれたおしりをさする。
おぉぉい、こっちまで来てくれよ。
なんで、そんなところから炎を吐くんだ。
慎重すぎるだろ。
だったら最初から炎を吐いてくれ。
なんてツッコミを心の中でした後
やっべ、どうしよ。
と我に返る。
「ちょっと、ちょっとだけタイム、待ってくれ」
と言葉を理解することなどなさそうなドラゴンに試しに言ってみる。
ドラゴンに通じるのか?
っていうか何してるんだ、俺?
ドラゴンは俺のこの謎の行動にすこし固まる。
そしてその場で胡坐をし、座った。
え、待ってくれるのか?
じゃぁ、それに甘えて策を練らねば。
ない頭をフル回転させる。
糖分が欲しくなってくるけど何の出我慢する。
そうだ、考えてみろ
なんでドラゴンが俺と戦わなければいけないかを
俺がテリトリーに侵入して怒っているんだったら、いまも襲ってくるはず
でもそれをしないってことは…。
何かほかの理由あるはずなんだ。
そして俺の数少ない知恵を絞った答えが出てくる
そうか、あれしかない
だとしたら…。
そう、どこかに“アレ”があるはずだが
俺は、急いで当たりを探し始める
そして例のものを探しあてる
「あった、あった、これしかないだろ」
俺は、卵を手にもち、ドラゴンに見えるよう掲げる。
「俺はお前さんの卵を襲ったりはしない。だから一旦、俺に捕まってくださーい」
そう、大体こういうときって何か守りたいものがあるはず。
そしたら、卵しかなくね
っていうのが俺の結論だ。
座って俺の様子を確認していたドラゴンはスッと立ち、俺のほうを見る。
ほら、やっぱ正解じゃん。
俺は、謎とき勝負に勝ったという風にドヤ顔をドラゴンに送る。
しかしドラゴンは俺に向かって炎を吐く。
手に持った卵だけを上手に炎が包む
ぴよぴよ。
暖められた卵は、生命が誕生する。
卵にはひびが入り、鼓動が手から伝わる。
そして中から可愛い鳥のひなが顔を出す。
まぁ、なんてかわいんでしょ。
なんていってる場合か?
「まだわからんのか」
えっ
どこから声がきこえんの?
「おれだよ」
ドラゴンが自分のほうを指さす。
「えっ、えぇええぇぇ~~。おまえ話せるんかい」
いや、まてよ。
おれにも何かスキルが発動したのかもしれない。
例えば、心を読む者とか、だれとでも話せるとかみたいなスキルが発現した可能性はある。
「あ、あ~~。俺の声が聞こえますか~~?」
しばらく、場がしらける。
俺は恥ずかしくなって顔を赤らめる。
「お前さんあほなこと考えてるだろ」
ドラゴンはツッコミを入れる。
そして
「実は俺、転生者なの」
「はっ?」
「だ・か・ら、おれは転生者なの」
「え、えぇぇ」
「じゃぁ、おれに心を読むスキルとかは…。ないの?」
「は、何を馬鹿なこと言ってるんだ?」
ホントに馬鹿にしたような面で俺を見てくる。
「俺はもともと話せるからそんなスキルはお前さんにはない」
きっぱりと否定してくる。
はぁあ?
俺は膝から崩れる
せっかくスキルが開花したと思ったのに
くそぅ。
俺は地面をたたく。
「まぁ、まぁそんなに気をおとすもんじゃない」
「お前さんにとっていい取引をしようじゃないか」
ショックを受けている俺に向かって転生者と名乗るドラゴンはこう語った。
「ギブアンドテイクだよ。罠とかを見るとお前さんは俺を捕まえたかったんだろ?」
「だから俺は、お前さんに力を貸す。お前さんは、そうだな…、飯をくれ。うん、あの肉がいいな。結構気に入ったんだ」
「えっ、そんなんでいいのか」
「金があったってこんな姿じゃ使えんしな。で、こんなところにずっといると、飯も同じもんばっかりになって飽きちゃってな。これでどうだ」
これは願ってもない提案だ。
おれは国王になる予定だから財力には余裕があるし。
ドラゴンの力を手に入れられるなら…
「よし、お願いします」
俺はドラゴンのほうに手をさしだす。
ドラゴンのほうも俺の意図を組んでくれたのか握手をしてくれる。
「そういえば名前を聞いてなかったな。俺の名前は、もともとタナカって名前だったから、まぁターナーとでも呼んでくれればいいさ」
「俺の名前は、今はメリルって言います。俺も転生者だけど、名前を付けてもらったから、メリルって呼んでください」
ターナーは俺の口から出た転生者って言葉に驚いた様子を見せる。
「お前さんもだったのか」
なんておって、わっはっはと笑う
「同じ境遇の仲間になんて始めてあったもんだから、ちょっと嬉しくてな」
「まぁ、よろしく」
「あの、そのお願いなんですけど、俺の指示に従うふりしてくれませんか」
ちょっと、俺はもじもじしながら言う。
「いいが、なんでだ?」
「俺にテイマーみたいな能力が生まれたようにみせたいだけですよ」
ターナーは、そんなことして意味あんのか、みたいなことを言いたげだけど
「わかったよ。力を貸すって約束だったからな」
と一応了承してくれた。
そして俺たちは山を降りる。
下で待っている俺の部下たちと合流する。
「ご無事で。そのドラゴンが例のドラゴンですか」
「そうです。馬車での移動中に話した罠っていうのはサラさんを脅かすために嘘ついてたんです。ホントは、僕にはテイマーのスキルがあるんですよ」
ちょっと自慢話をするような感じで話す。
「まぁ、ドラゴン使いのメリルとでも呼んでくださいよ」
これを聞いて、ターナーは、何言ってんだこいつはみたいな顔をしたのを俺は見逃さなかったが、気分がいいので見なかったことにした。
「まぁ、すごいですわ、捕まえることに満足しないでドラゴンを手なずけてしまうなんて」
サラさんは感心しているのか少しばかり声が弾んでいるのが俺でもわかる。
「これなら国民も、メリル様の国王就任に納得どころか大喜びしますわ」
そうして俺たちの馬車は帰路についたのだった。