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名案かと思いきや無策?

いきなりドラゴン倒せって言われても無理じゃない?


っていうか、俺には転生スキルだとか、チート能力みたいなものはないわけ?

だいたいさぁ、転生したら、簡単に敵倒しちゃいましたとか、死んでも生き返れますよ、みたいのがあるはずじゃん。


今んとこ、俺にはそんな便利なものなーーんにもないよ。

あるのは見栄っ張りな性格だけだよ。


なんて感じで悩んでいる間に一週間がたった。




その間に旅立つ準備とか、装備だとかの準備をしてないから、

ついに父上に呼び出されることになる。


父上にはいつものような明るい感じではなく、なんかこう重苦しい空気が漂う。

「別にわしはいつまでに退治しろとは言っておらんが、できるだけ早めにはやらんといかんぞ」

と、いつも俺に話しかけてくれる父上も今日は厳しそうな顔をして、半分叱るような感じで語りかける。


そんなお叱りを受けた俺はとぼとぼと部屋へと戻る。

廊下には、俺の歩くカツカツといった音だけが響き渡る。

そして部屋の中の机に向かって座り悩む。

この国の特産物である、ただ首ががくがく揺れるってだけの謎の置物――みんなは幸運の置物といってるらしいーーを、指先でちょんちょんといじくりながら考える。

むなしく揺れる、その置物は今の俺を代弁しているのかもしれない

そう、思いながら。



一応、父上の時はどんな感じだったのかって聞いてみたけど。俺にはまねはできなさそうだった。


というのも、何の小細工をすることなく、剣でドラゴンの首を一刀両断したらしい。

今の姿からは想像できないが、周りの人の語り振りやらで、

それが事実というのは間違いなさそうだ。

そのおかげで国の内外問わずに威厳が保てているっぽい。


あーー。

俺も、できればそうなりたいし。そうありたい。

でも俺にはできないし、できそうもない。


このわずらわしさが俺を悩ませる。


そんな素晴らしい父上を超えることができれば、試練をのり超えるだけでなく、

ほかの国や人々に、俺の威厳を示すことができ、争うことなく

俺の目標のヌルゲーライフへと一歩、いや十歩ほど近づけるのに。



っていうか、父上がドラゴンを一刀両断したことを超えることってなんなんだろう?


触れずに倒すとか?

むりむり。なんかスキルがあるわけでもないし、強い魔法があるわけでもない。

却下。


剣で父親より派手に倒すとかは?

もともと無理。血を見たくないないしみたらぶっ倒れちまう。


じゃぁ、倒さなければいいんじゃね?。

いやいや、倒すのが目的でしょ。


あっ、でも、

倒さなくてもいい方法はある。


そう、捕まえればいいんだよ。


俺は名案が思いついたという風に机から飛び上がる。

別に誰でも思いつきそうなものだが、追い詰められてた俺にとってそのような結論は、特別ですばらしい案のように感じられた。


でも、なんか理由付けしたほうが、いい感じになるかも、なんて思いながら父上のところへ向かう。


玉座の間には普段通り、父上と母上、そして母上の陰に隠れて弟のマーズがいる。

いつものように膝をつくポーズをしてから、

スッと立ち

「私、メリルは、覚悟をいたしました」

と大声でいう。


「おおっ。ついに」

心なしか、父上の声が弾んでるような気がする。


「ええ、私は、ドラゴンを倒すことは致しません」


「な、なにを言っておるんじゃ、メリル」

先ほどの喜びから一転、困惑へと変化する。


俺はさっと後ろを向く。この角度だったら、死角になって誰からも見られないことは知っている。

服の裏に忍ばせた目薬を素早く、目へと注ぐ。


そして涙を流している


ふりをする。


「私は無駄な殺生は好みません、なぜ罪もなきドラゴンを殺せましょうか。そんな人間が国王になって国民を守れることができましょうか」

「大切なのは争いではなく、慈悲です。許す心です。父上様」


なんて、くさい演技をする。

おれが見る側だったら、あまりにもくさすぎて笑ってしまう。

それくらい、くさい演技をする。


でも父上は、親バカなところがあるから、一発だろう。

この演技に、父上も負けたのか、つられて涙を流す。


お、いい感じだぞ。割と渾身の演技ができたからな。


「そこまで考えておったのか。行くまでに時間がかかったのは、そういったことを気に病んでだったのか」


おお、勝手に拡大解釈してくれたぞ。

「そうなのです、父上様。どうしたら誰も苦しまずにことを成し遂げられるか考えていたら、時間がかかってしまったのです」

なーーんていってみたりして。


「国王としての心がけ、素晴らしいぞ。国民だけでなくドラゴンのことまで気を使えるとは」

あまりにも感極まって、涙の量が増える。

服の袖で、涙を拭き始める。

水分を含んだ袖は、だんだんと色を変える。



何やら視線を感じる。

ああ、弟か、

弟も俺に似たのか、なんだか、勘が鋭い。

親バカだから、多少がばがばな説明でも騙せたけど、

さすがに弟はなんだか、勘が鋭いところもあるからきついか?


そんな心配をする俺をよそに

「お兄様、頑張ってください。応援してますよ」

と、にっこり笑いかけてくれた。


よっしゃーー。

血を見なくて済みそうだぜーー。

軽く隠れてガッツポーズをする。


その後、父上に礼をしてから自分の部屋へと戻る。

さっきまでの喜びとは別に違う問題が発生する。


(うまく話が進んだけどどうしよう)


そう、別に血を見なくて済んだが、問題の捕獲方法も何も考えてはいなかったのだ。

賢者タイムのような感じで、落ち着きを取り戻した俺は、この無策という状態に、あたふたする。


コンコン。

とびらをたたく音がする。

「メリル様、サラです」


俺はさっと扉を開け、サラさんを招き入れ、余っている椅子に座るように指示をする。


「メリル様、お聞きしましたよ。ついに行くんですね」

サラさんは、何やら興奮気味だ。

「だって、ドラゴンの捕獲は倒すことよりはるかに難しいんですよ」

「この国の歴代の王だって成し遂げられませんでしたもの」


えっ。マジ?

どーーすんの俺?

心の中で焦りが最高潮に達する。


「メリル様は、何やら自信がおありだったようで。何かしらの策はおありなんですよね?」

なんて、サラさんは目を輝かせて聞いてくる。


目を輝かせるもんだから失望させちゃいけないななんて思いながら

「当り前じゃないですか、サラさん。僕が無策でそんな大それたことを言えると思いますか」

なんてまた無駄に虚勢をはる。


「ですよね。そんなこと、何の根拠もなしに言えるなんてことありませんものね」

「聞いて安心しましたわ、やはり、次期王がメリル様なら、この国も安泰ですわ」

と嬉々として語る。


「当り前ですよ。俺にできないことなんてないんですから」

なんて虚勢に虚勢を重ね、元に戻れないところまで来る。




その後サラさんを返し、

部屋に一人になった俺は

例のごとく、布団に飛び込む。


どーして、また、できそうもないことを

いってしまったんだーー。


サラさんにいい所見せようなんて下心出して

カッコつけなければよかった。


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