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ドラゴンって、やっぱあのドラゴン?

俺は、父上の前で宣言してから、軽く一礼をして、玉座の間を出る。そして、玉座の前の廊下を左へと曲がる。長く広い廊下は、歩くたびにコツコツといった、かかとを鳴らす音が響く。突き当りまで行けば、町を展望できる窓があり、そこにある階段を上る。そうすると、すぐ目の前に、部屋が見える。

そう、これは俺の部屋だ。もともと生きていたころには、家の中に部屋がいくつもあるなんて概念はなかった。それが今では、ベッド、机、その他もろもろがおいてあっても、はるかにスペースが余ってる。

とびらを開けるととすぐにベットに飛び込む。ベットは、俺の体重によって、一気にへこむ。が、すぐに元の形に戻ろうとするから、俺の体は、ポンポンと跳ねる。


気持ちいぃい~~。


なんてやってる場合じゃない。


早く、計画を立てないと。

せっかく手に入れたチャンス。無駄にするわけにはいかない。

この試練を乗り越えなければ、俺の求めるヌルゲーライフはやってこない。


でも、いきなりドラゴンを倒さなければいけなくなるなんて…。


俺は血を見るのが苦手なんだ。前板世界では、魚を調理するときには、もともと捌かれたやつを買ってきて食べてた。(とはいえ、貧乏だから一年に一回とかだけど)

なんならテレビでたまにやってた手術のイメージ映像ってだけでビビッて、自分の血の気が引く、なんてこともあった。


そんな俺が、血を見ないようにしながら、しかも明らかに力が上のドラゴンを倒せばいいんだーー。


ベットにうつぶせになり、頭の上に枕をかぶせるようにのっけて足をバタバタさせる。




あっ。

でも、俺にはサラさんがいるんだ。彼女の剣さばきは素人である僕でも素晴らしいってのがわかるくらいにすごい。なんていうか、剣筋になめらかさがありながらも芯の強さみたいのが感じられる。

俺も教育係として、何回か手合わせしてもらっているけど、一回も勝てたことない。なんなら今後も勝てる気がしない。


もう、これしかないじゃん!!


 俺は急いでサラさんのいる部屋へと向かう。従事たちの部屋は、一階にあるから、行くまでが思いのほか疲れる。


サラさんは、その長い髪をとかしている。風呂上がりだったのだろうか、軽く、髪が湿っているのがわかる。


「サラさん。ドラゴン退治の時って、僕を手伝ってもらうことはできませんか」


「手伝う、ですか?それなら、もともと、私たち従事はメリル様に付き従うことになっておりますが」


 えっ。マジ?だったら、俺そんなに心配しなくていいんじゃね。サラさんがいればドラゴンくらい一発でしょ。

「それを聞いて、安心しました。サラさんがいれば百人力です」


「えっ」

サラさんは、驚いたようなそぶりを見せる。


俺も反射的に

「えっ」

と返してしまう。


「確かに、私どもはメリル様に付き従うことになってます。」

「とはいえ、これは王としての器を図るものですから、手出しはできないのです」

「なので…、見届け人だと思っていただいたほうがよろしいかと」


うわーー。マジか。

俺が一人でやんなければいけないのか。

別に俺が直接やんなくてもいけるんじゃね、なんて思ってたちょっと前の俺をぶん殴りてーー。

でも、次期王としての威厳を見せなければいけないと思いサラさんの肩に右手をポンと置き


「そうだと思っていました、サラさん。僕一人でやりたいので、手出ししないでほしいって言おうとしたところだったんです」

なんて、無駄に見栄を張ってしまった。


「さすがメリル様です。この国も安泰ですわ」

なんてサラさんも言うもんだから、

俺も、うむ。みたいな面をして、サラさんの部屋を出ていく。


やっちまったーー。なんでまた見栄を張るんだ。

いままで、なにかと無駄に見栄を張って苦労してきたじゃないか、と自分に喝を入れる。


言っちまったことは仕方がない。

やれるだけのことをして、試練に臨もう。

と、町の図書館へと向かう。


「おや、おぼっちゃま。また本をお読みになられるのですか」


こう声をかけるのは、図書館の管理をしている、カーフさんだ。

カーフさんは、10年前に夫を亡くしてからずっと図書館の管理人をやっている。

年齢はかなりいってるっぽいが、だれも年齢は知らない。

顔に何本か入ったしわは多く、盆栽の幹のようだ。かといって精気を感じないということはなく、目の奥には何やら鋭いものを感じる。


「ええ、調べたいことがありまして」

と、カーフさんの前にある、入場記録簿なる分厚い本位、今日の日付と名前をさっと書きこむ。


「勉強熱心なことですわねぇ。」

なんてカーフさんは、感心した様子を俺に見せる。


俺は、転生してから、多くの本をこの図書館で読んできた。

というのも、普段は、王族としてのたしなみだ、とか、魔法だ、とか、武器の取り扱いだ、など、王としての教育を、やらされているのだが、かなりの頻度で逃げ出して、ここに隠れる。


っていうのも、サラさんは普段は優しいんだけど、教育のことになると、ほんとに厳しくなる。

このことは、カーフさんも知っているから、笑って僕を受け入れてくれる。

まぁ、サラさんも俺がここにいることはわかっているだろうから、見逃してくれているだけだと思うけど。


さらっと、話したけど、この世界には魔法がある。

とはいっても、みんなが想像するような、炎の柱が経つとか、相手を氷漬けにするとか、そんなたいそうなものじゃない。

例えば、料理をするときに、ガスコンロに火をつけるでしょ。そんな感じ。

だから、攻撃に使うなんてことは…ないはず。


まぁ、それはそれとして、今日は逃げるためじゃなくて、調べるためにここに来たんだ。


もちろん。ドラゴンについて。


ここの図書館で働く人は優秀だから、欲しいものがあればすぐにとりに行ってくれる。

数多くの本があるのに、ほんとに欲しいと思ってるものを持ってくる。


ある時、どうやってるのか、と尋ねたけど、「企業秘密です」なんて笑ってはぐらかされてしまった。いつか、その謎を解いてみたい。


とまぁ、優秀な人のおかげで、目的の本が俺の手元に届く。

誰にも読まれなかったのか、この図書館の本にしては珍しく、ほこりをかぶっている。


ふむふむ、結構昔から、この国では、儀式としてドラゴン退治が行われているらしい。


ドラゴンは、固く、それでいてしなやかなうろこで身を守っています。

しっぽがありますが、薙ぎ払うようにして、敵を襲います。

口からは火を噴きます、かなりの範囲まで火が及ぶので気を付けましょう。


まぁ、俺の想像していたドラゴンそのまんまだな。

んっ?


大きさは、その時によります。

10メートル行くときもあれば、1メートルの時もあります。


いや、振れ幅がすごすぎっ。

個体差がこんなにでることってある?

なんてツッコミを入れる。


倒すときは、うろこの隙間から、刀を入れ、首を落とします。


うわぉ。やっぱりこうなるのか。

想像するだけで血の気がひいてくる。



と、俺はドラゴンに関する情報を、十分に得てから、図書館を後にした。


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