山本さんの解説
「ってことは」
春原は気が付いたようだ。
「山本さんを送り返した人がいるってことですよね?」
山本はにっこりとして春原に答える。
「そうよ。ただし、寝ている間だったから、だれが返してくれたのかはわからない。しかも、ここは海を越えたよその国、もう一度会えるかどうかもわからない。だいたい、見当はるくけどね。」
「それって、候補が複数いるってことですか?」
「3人、ね。私と一緒に渡ってきた人が二人、それと、うーん、可能性は低いけど、あっちの国の軍人さん、かもしれない。」
「その人たちと連絡を取りたいですね。」
「まあ、難しいわね。で、魔力の説明をしたいんだけど、いいかしら?」
「ぜひ。」
「もちろん。」
「じゃあ、はじめるわね。最初に、できること、できないことの大雑把な説明をします。魔力と言ったらなんでもできるような感じがするけど、そうじゃありません。」
「えーーー?」
頭を抱えてため息をついたのは、もちろん、春原。
「超能力の種類、というか、分類っておわかりかしら?」
「超能力、種類なら、テレポーテーションとか、テレキネシスとかかな?分類となると、なんだろう。」
工藤がメモを取りながら考え込む。
「ESPとかPKとか聞いたこと、ありませんか?」
「エクストラ・パーセプションだっけ?」
「エクストラセンサリー・パーセプション。超感覚とか、超感覚的知覚って訳されています。テレパシー、予知、透視、といった感覚の拡大です。」
「で、PKというのは?」
「PKは、サイコキネシス、日本語で念動力になります。で、私がここで身につけたり、見聞きしたものはすべてPKです。ESPはありません。」
「ちょっと待った。」
渡辺が手をあげた。
「はい。なんでしょう?」
「さっきの精神支配はESPにはいるんじゃないのかな?」
「入りません。催眠術ですね。電気がないのもありますけど、暗めの室内で蝋燭の明かりだけ、そして王と宰相は壇上でフットライト、まあ、それも蝋燭か行灯の光を浴びていた。ゆらゆら揺れる光の中から語られる言葉、もちろん音響効果もあるでしょう。聴衆のこころに響く演説方法を王や宰相が知っていたとしても不思議じゃないでしょう?カリスマ性が彼らのたつきの道なんですから」
「はい。」
春原が手を挙げる。
「たつきの道って?」
「ええと、生きるための手段というか、そうか、たぶん、辞書的には職業とかそういう意味になるのかな?」
「まあ、王様っていうのは人を従わせていくらってことだから、合ってると思いますよ。」
と、山崎がうなずく。
「そういうことでいいかな?」
「はい。だいたいわかりました。」
「で、魔筋肉って話に戻るんだけど。これは、本当の筋肉じゃなくて脳内のどこか。ご飯を食べると筋肉で仕事ができる。これと同じように魔力も使える。で、使うとおなかがすくのも同じ。ということで魔力を使う筋肉があるって想定からできた言葉ね。」
「わからんでもない。」
工藤が右腕に力こぶを作ってみせた。
「さて、ご飯を食べたことでこれから数時間は魔力が出やすくなっているので、練習してみましょうか」
「食休みはいらんのか?」
工藤がおなかをさすって見せる。
「最初は準備運動じゃなく準備魔動、要は精神集中をするのでちょうどこなれますよ。」